頑張ってるのに成果が上がらない人をどう活かすか。

「本人はすごく頑張っているんです。でも、なかなか成果につながらないんですよね」。先日、とある中小企業の社長と話をしていたときに出てきた言葉です。
その社員は真面目で、頼まれたことはきちんとやる。新しいことにも挑戦しようとする。会社への不満を口にすることもなく、むしろもっと役に立ちたいと思っているように見える。
それなのに、任せた仕事は期待したほどにはうまくいかない。機会を与えて経験も積ませた。それでも決定的な成長が見えない。そんな状況に、社長は頭を抱えていました。
「こういう場合、育て続けるべきなんでしょうか。それとも、もう見切りをつけて、その人に向いている仕事だけをやらせるべきなんでしょうか」
経営者であれば、一度や二度は似たような悩みを抱えたことがあると思います。能力は高いけれど意欲が感じられない人もいれば、意欲は十分にあるのに成果が出ない人もいる。
限られた人数で会社を回している中小企業では、人材の配置や育成は業績に直結します。だからこそ、「意欲と能力のどちらを優先すべきか」という問いが生まれる。
意欲がある人間に機会を与えたいのは当然のこと。でも成果が期待レベルに至らなかったり、いつまでも結果が出なかったりすると、仕事が山積みになるばかり。周囲の不満もたまり、きつい言葉が投げかけられることすらあるでしょう。
ただ考えてみると不思議なことがあります。現場では抜群の成果を出していた人が管理職になった途端に苦労することがあります。逆に、これまで目立たなかった人が後輩指導や顧客対応の場面で急に力を発揮することもあります。
同じ人なのに、置かれた場所が変わるだけで活躍ぶりが180度変わる。こうした光景は決して珍しいものではありません。
もし能力というものが、その人自身に固定的に備わったものであるなら、このようなことは起こらないはず。でも現実には起こる。ということは、能力はその人だけで決まるものではなく、その人が置かれた環境や役割との組み合わせによって発揮されたり、埋もれたりするものだということです。
そう考えてみると、能力が足りないとは、その人が抱える深刻な問題というわけではなく、まだ居場所が見つかっていないだけのことなのかもしれません。
もちろん、努力しなくてよいという話ではありません。学ぶことも必要ですし、経験を積むことも必要です。しかし、それ以上に大切なのは、その人の意欲がどこで成果に変わるのかを見極めることではないかと思います。
私はこれまで多くの中小企業の社員を見てきましたが、本当に貴重なのは能力よりも意欲のほうだと感じています。能力は教育や経験によって高めることができます。でも意欲はそう簡単には生まれません。もっと役に立ちたい、成長したい、会社に貢献したいという気持ちは、本人の内側からしか出てこないものです。そして一度失われた意欲を取り戻すのは簡単ではありません。
適材適所という言葉があります。ある程度、その人の適性を見たら、適した場所に置いてあげるということが、意欲を十分に生かす秘訣なのかもしれません。
キャリア論では、仕事の種類や人の適性をいくつかの軸で分類する考え方があります。人と接することが得意な人もいれば、モノや仕組みと向き合うことが得意な人もいる。決められた手順を着実にこなすことが得意な人もいれば、新しいことを考えることに喜びを感じる人もいます。
中にはどんな環境でも力を発揮できる人もいますが、多くの場合、人には向き不向きがあります。そして、その向き不向きと仕事の内容がうまく重なったとき、人は驚くほどの力を発揮します。
だから経営者の仕事は、人を評価することだけではないのだと思います。
この人は優秀か、そうではないか。この人は使えるか、使えないか。そうやって人を分類することよりも、その人の力が発揮される場所を探し、その環境を整えることのほうが大切なのではないかと。
もちろん、すべての人が思い通りに成長するわけではありません。期待した結果が出ないこともあります。それでも、意欲を持って仕事に向き合おうとする人の可能性を簡単に諦めてしまうのは少しもったいない気がします。
会社は感情と適性を持つ人の集まりです。そして人は、居場所によって大きく変わります。
さて、あなたの会社で「能力が足りない」と言われているその人は、本当に能力が足りないのでしょうか。
それとも、まだその人らしく力を発揮できる場所が見つかっていないだけなのでしょうか。
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