透明資産経営|なぜ、切れた電球ひとつを誰も替えない会社は危ういのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー 廊下の、切れかけた電球の話をさせてください
あなたの会社の、どこかに一つ。切れかけて、チカチカと点滅している電球はないでしょうか。あるいは、少し前から傾いたままの掲示物。とれかけたまま放置されているテープ。給湯室の、いつからか誰も洗っていないマグカップ。想像してみてください。その切れかけた電球の下を、社員たちが毎日、何人も通り過ぎていく光景を。誰もが気づいている。「あ、切れかけてるな」と。けれど、誰も替えない。「自分の仕事ではない」「誰かが替えるだろう」「まあ、点いてはいるし」。そうして、その電球は、今日も点滅を続けている。
一見、どうでもいい話に思えたかもしれません。電球の一つくらい、業績とは何の関係もない、と。──ところが、この連載を続けてきた私は、断言できます。その一つの電球を、誰も替えない会社は、確実に、静かに、危うい方向へ向かっています。電球の話ではないのです。これは、あなたの会社の空気の話なのです。
ー 小さな乱れは、「ここでは手を抜いていい」という無言の教え
なぜ、たかが電球一つに、それほどの意味があるのか。それは、放置された小さな乱れが、社内の全員に向けて、静かな、しかし強力なメッセージを発し続けているからです。「この会社では、気づいても、放っておいていい」「ここまでは、やらなくても許される」──言葉にはされません。けれど、その電球が点滅し続けているという事実そのものが、日々、全員に「手を抜いてよい基準」を教え込んでいるのです。
普通の経営者なら、こう言うでしょう。「そんな細かいことは、後回しでいい。もっと大きな経営課題がある」と。しかし、透明資産の視点は、まったく逆です。空気は、大きな決断ではなく、こうした無数の小さな放置の積み重ねで、形づくられていきます。社員は、社長の立派な訓示よりも、目の前の点滅する電球から、この会社の「本当の基準」を読み取っているのです。
そして、ここが恐ろしいところです。一つの乱れが放置されると、それは、次の乱れを許します。電球が放置されるなら、傾いた掲示物も、そのままでいい。掲示物がそのままなら、少し雑な接客も、許される。お客様への、ほんの少しの手抜きも──。小さな乱れは、決して、そこにとどまりません。「ここまでは許される」という基準を、じわじわと押し下げながら、社内の隅々へと、静かに伝染していくのです。気づいたときには、会社全体の質が、一段、下がっている。その最初のひと押しが、たった一つの、放置された電球なのです。
ー その電球を、社長であるあなたも、通り過ぎていませんか
もう一つ、目を背けたくなる事実をお伝えします。その電球の下を、社員だけでなく、社長であるあなた自身も、毎日通り過ぎているということです。あなたも、気づいているはずです。「あ、切れかけてるな」と。けれど、あなたも替えなかった。「誰かがやるだろう」「今は忙しい」と。──もし、そうだとしたら、社員が電球を替えないのは、当然のことです。社員は、社長の背中を見て、基準を学んでいるのですから。トップが見て見ぬふりをするものを、部下が率先して直すことは、決してありません。
社内に放置された小さな乱れは、実は、社長自身の「まあ、いいか」が、組織全体に映し出された姿なのです。あなたが一つの乱れを見過ごすたびに、その「見過ごし」が、社員全員に許可として伝わっていく。社内の乱れの一つひとつは、社長であるあなたの、日々の小さな妥協の、正直な記録なのです。
ー 今日、社内を一周してみてください
では、経営者は何をすればいいのか。難しい仕組みは、要りません。今日、席を立って、社内を、お客様の目線で、ゆっくり一周してみてください。切れかけた電球、傾いた掲示物、乱れた棚、汚れた場所。──これまで「まあ、いいか」と通り過ぎてきた、小さな乱れが、いくつも目に飛び込んでくるはずです。そして、その一つを、あなた自身の手で、直してみてください。電球を替える。掲示物をまっすぐにする。ほんの数分の、小さな行為です。
けれど、社長が自ら小さな乱れを直すその姿を、社員は必ず見ています。そして、無言のメッセージを受け取ります。「この会社は、小さなことを、おろそかにしない」と。その瞬間から、社内の「当たり前の基準」は、静かに、上へと動き始めます。あなたが直した一つの電球が、放置の連鎖を断ち切り、逆向きの、良い連鎖の起点になるのです。
ー その点滅は、いつから続いていますか
最後に、お伝えしたいことがあります。会社の質は、大きな戦略で決まる前に、放置された小さな乱れを、直すか見過ごすかという、日々の選択の中で、静かに決まっているということです。思い返してみてください。あなたの会社の、あの点滅する電球は、傾いた掲示物は、いつから、そのままになっているでしょうか。そして、その乱れを、これまで何人の社員が、そしてあなた自身が、見て見ぬふりで通り過ぎてきたでしょうか。その積み重ねた日数こそが、あなたの会社の空気が、静かに緩んできた時間の長さなのです。
このコラムを読み終えたあなたは、もう、これまでと同じ目では、社内を歩けなくなっているはずです。次に廊下を歩くとき、あの小さな乱れが、はっきりと目に飛び込んでくる。そして、通り過ぎるのではなく、足を止めて、自らの手で直す自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。放置された小さな乱れを、自らの手で直す。それが、会社の緩みを静かに引き締める、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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