オンライン会議が変える海外ビジネス
「ぜひ御社とパートナーシップを組みたいのです。」オンライン会議による企業マッチングイベントで個別面談に現れた外国企業のCEOは、クライアントの社長に対して正面からしっかりと希望を伝えてきました。わずか15分という制限時間も手伝って、会談は簡潔明瞭に進みます。ビジネスに対するビジョンの交換と、今後はメールやオンライン会議で交渉を進めることを決めると、早速次の会社との面談が待っています。
オンライン会議の普及により、こういった取り組みが以前に比べて格段に催しやすくなっています。ほんの数年前であれば、海外企業との商談を行うためには現地へ出張するか、あるいは相手を日本へ招く必要がありました。航空券や宿泊費だけでなく、日程調整にも多くの時間を要したことを考えると、企業同士が初めて顔を合わせるためのハードルは決して低くありませんでした。
ところが現在では、インターネット環境さえ整えば世界中の企業と短時間で面談できるようになりました。展示会や商談会もオンライン開催が一般的になり、これまで海外市場に関心はあっても最初の一歩を踏み出せなかった中小企業にとっても、海外企業との接点を作る機会は確実に増えています。
実際に私がお手伝いしている案件でも、海外企業との個別面談が次々と設定されるようになりました。以前であれば一年に数社しか出会えなかったような企業とも、短期間のうちに十社を超す企業と意見交換できることがあります。これはオンライン化がもたらした大きな恩恵だと言えるでしょう。
もっとも、このような交渉には一つ注意しなければならない点があります。それは、オンライン会議は距離を縮めることはできても、信頼関係まで自動的に築いてくれるわけではないということです。
海外企業との交渉では、日本企業同士であれば言葉にしなくても伝わるような前提条件が共有されていないことも珍しくありません。品質に対する考え方、納期の感覚、価格交渉の進め方、契約書の位置付けなど、文化や商習慣の違いによって認識にずれが生じることがあります。
日本では「まず信頼関係を築いてから具体的な商談へ」という進め方が好まれることが多い一方で、海外企業は最初から契約条件や役割分担について具体的に議論したいと考える場合があります。日本側が慎重に進めているつもりでも、相手から見ると「意思決定が遅い」と受け止められてしまうこともありますし、逆に相手の率直な表現を「少し強引ではないか」と感じてしまうこともあるでしょう。
また、オンライン会議では相手企業の工場やオフィスの雰囲気、社員の様子など、現地へ足を運べば自然に得られる情報が見えにくくなります。通信環境が良いほど画面越しの印象だけで判断してしまいがちですが、企業としての実力や経営姿勢は、画面だけでは分からない部分も少なくありません。
だからこそ、オンライン会議はあくまでも信頼関係づくりの入口として活用することが重要なのだと思います。何度か面談を重ね、お互いの考え方を確認しながら、必要に応じて現地訪問や工場視察につなげていく。そのように段階を踏んで関係を深めていくことが、結果として長続きするアライアンスにつながるのではないでしょうか。
もっとも、こうした課題があるからといって、オンライン会議の価値が損なわれるわけではありません。むしろ、日本企業の海外進出においてオンライン会議が果たす役割は、今後ますます大きくなっていくものと思われます。
最近ではAIによる自動翻訳やリアルタイム字幕機能も急速に進歩しています。以前であれば通訳を介さなければ難しかった打ち合わせも、簡単な内容であれば直接意見交換できる場面が増えてきました。もちろん重要な契約交渉では専門家の支援が必要ですが、最初の接点づくりという意味では、言語の壁は確実に低くなっています。
中小企業は、大企業ほど海外に営業拠点を持つことが容易ではありません。しかしオンライン会議を活用すれば、世界中の企業と直接つながるチャンスを比較的低いコストで手に入れることができます。技術や製品に独自の強みを持つ企業であれば、その可能性はさらに広がることでしょう。
今後コトバの壁とコミュニケーションの壁が低くなることで、外国企業とのアライアンスは中小企業にとってもぐっと身近なものになってゆくことでしょう。その時に求められるのは、オンラインという新しい手段を使いこなすことだけではありません。その先にいる相手企業と長期的な信頼関係を築き、お互いの強みを活かした価値を創り出そうとする姿勢です。技術や製品だけではなく、そうした姿勢そのものが、これからの国際ビジネスにおける競争力になっていくのではないかと、私は考えています。
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