透明資産経営|なぜ、社長が現場に降りてこない会社は空気が澱むのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー最後に、現場の空気を肌で感じたのは、いつですか
少し、思い出してみてください。あなたが最後に、自社の現場に立って、そこに流れる空気を、肌で感じたのは、いつだったでしょうか。会社が大きくなり、社長の仕事が増えるにつれて、多くの経営者は、現場から少しずつ遠ざかっていきます。社長室にこもり、数字と報告書に向き合う。現場のことは、幹部からの報告で把握する。──それは、社長として当然の姿にも見えます。細かい現場は任せ、自分は大局を見るべきだ、と。
けれど、思い浮かべてみてください。あなたが現場に姿を見せなくなって、どれくらい経つでしょうか。そして、あなたが遠ざかっているあいだ、現場の空気は、どうなっているでしょうか。報告書の数字は、順調かもしれません。しかし、報告書には決して載らないもの──現場に流れる、生の空気だけは、あなたの目の届かないところで、静かに澱み始めているかもしれないのです。
ー空気は「報告」されない。肌で感じるしかないもの
なぜ、社長が現場から遠ざかると、空気が澱むのか。ここに、経営における、決定的な盲点があります。それは、空気というものは、報告できない、ということです。
売上は、数字で報告できます。トラブルも、案件も、進捗も、言葉にして報告できる。だから社長は、報告さえ受けていれば、会社のことは分かっていると思ってしまう。──しかし、現場に流れる空気だけは、どんな報告書にも載りません。社員が、どんな表情で働いているか。お客様を迎える声に、張りがあるか。フロアに、活気があるのか、それとも重い澱みがあるのか。こうした空気は、その場に立って、肌で感じるしか、知る方法がないのです。
普通の経営者なら、「現場は幹部に任せ、社長は数字を見ればいい」と考えるでしょう。しかし、透明資産の視点では、それは、最も大切な経営情報を、自ら手放していることになります。なぜなら、業績という結果が現れる、そのずっと手前で、必ず空気が先に変わるからです。空気が澱み始めても、数字にはまだ表れない。数字が悪化したときには、空気は、とうに深く澱んでいる。現場の空気を肌で感じることは、数字という結果が出る前に、最も早く異変を察知する、社長にしかできない仕事なのです。
そして、社長が現場に降りてこないこと、それ自体もまた、空気を澱ませます。「社長は、現場を見ていない」「自分たちの働きに、関心がない」──その感覚が、社員のあいだに、静かな無力感を広げていくのです。
ー社長の不在が、現場の空気を澱ませる3つの経路
社長が現場から遠ざかると、どのように空気が澱むのか。三つの経路をお伝えします。
1つ目の経路は、「見られていない、という空気」です。社長が現場に来ないと、社員は「自分たちの働きは、見られていない」と感じます。人は、誰にも見られていないと感じるとき、少しずつ、手を抜くようになる。良い仕事をしても、気づかれない。その空気が、現場の張りを、静かに失わせていきます。
2つ目の経路は、「フィルターのかかった情報だけが届く空気」です。社長が現場を見ず、報告だけに頼ると、その報告は、幹部というフィルターを通ったものになります。都合の悪いことは、薄められ、見栄えのいいことだけが上がってくる。社長は、加工された現実を、本物だと思い込む。生の空気から切り離された社長の判断は、少しずつ、現実からずれていきます。
3つ目の経路は、「距離が、心の距離になる空気」です。物理的に姿を見せない社長は、社員にとって、遠い存在になっていきます。顔を合わせなければ、親しみも、信頼も、育ちません。社長と現場のあいだに、目に見えない壁ができ、その壁が、組織の一体感を、静かに損なっていくのです。
ー現場の空気は、社長がそこに立つことで生きる
現場の空気が生き生きするか、澱むかを分けるのは、立派な報告体制ではなく、社長が現場に立ち、その空気を肌で感じ、社員と顔を合わせているかどうかです。社長が、定期的に現場に姿を見せているか。数字の報告だけでなく、生の空気を、自分の目と肌で確かめているか。現場の空気が澱むのは、社長が空気から遠ざかり、報告というフィルター越しにしか会社を見ていないサインです。社長が現場に降り、その場に立つだけで、現場には「見られている」という緊張と、社長への親しみが戻り、澱んだ空気が動き始めます。
ー数字を見る前に、現場に立ってみる
では、経営者は、何を変えればいいのか。難しい仕組みは、要りません。まず、意識して、現場に足を運ぶ時間を、予定に組み込んでください。用事がなくても、ただ現場に立ち、そこに流れる空気を、肌で感じる。社員の表情を見て、声の張りを聞き、フロアの活気を確かめる。次に、現場で社員と、短くてもいい、言葉を交わす。「調子はどう?」の一言でいい。社長がそこにいて、自分を見てくれているという実感を、届ける。そして、報告書の数字と、肌で感じた空気を、突き合わせる。──こうして現場に降り始めたあなたは、数字が悪化する前に異変を察知する、最も鋭いセンサーを、取り戻し始めているのです。
ーあなたの目に映る会社は、本物でしょうか
最後に、お伝えしたいことがあります。社長が見ている会社の姿は、報告書の中の会社であって、現場に本当に流れている空気は、そこに立った人にしか、見えないということです。思い返してみてください。あなたが今、頭に描いている自社の姿は、報告を通して組み立てられたものでしょうか。それとも、現場に立ち、肌で感じた、生の空気に基づくものでしょうか。もし、しばらく現場の空気を感じていないと気づいたなら、あなたの見ている会社と、本当の会社のあいだには、すでに、見えないずれが生じているかもしれません。
このコラムを読み終えたあなたは、次に社長室で報告書を開くその前に、ふと席を立ちたくなるはずです。そして、現場に降り、そこに流れる空気を、久しぶりに肌で感じている自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。報告に頼るのをやめ、自ら現場の空気に立つ。それが、澱み始めた空気にいち早く気づく、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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