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循環の「質」をどう評価するか

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 「西田先生、当社はぜひ資源循環を単なるリサイクル率だけでなく、品質の高度化も数値で表現していきたいと改めて思いました。」ここ数年、循環に関する最新の評価技術についてコンサルティングをお引き受けしている会社の常務さんが深夜のチャットでしみじみと語られたコトバです。

 

 このところ単なる環境対策に止まらず、経済安全保障の観点からも資源効率の抜本的な見直しを希求するような動きが出てきています。その中で言われるようになったのが、「どれだけ循環させているか」に止まらない、品質面も含めた循環の高度化へのニーズです。

 

 たとえば大手製鉄メーカーが脱炭素要請への回答として建設計画を持っている「革新的大型電炉」という技術があります。この技術には、鉄鉱石から高品質な鉄を産み出してきた高炉をある程度代替する働きが求められるのですが、そのためには高品質なスクラップの安定的な供給が必要とされています。にもかかわらず、たとえば自動車の多くがいまだに解体段階で破砕され、せっかく高級鋼で作られている車体の鉄が、少なくない不純物と一緒に鉄筋の原料として一括処理されているという現実があります。

 

 これは決して解体事業者が手を抜いているという話ではありません。現在の自動車リサイクル法は、使用済自動車からエアバッグ類やフロン類、シュレッダーダストといった処理が難しい対象を適正に回収・処理することを主眼として制度設計されており、有用金属を高品質なまま回収することを第一の目的にはしていないからです。

 

 もちろん、エンジンやアルミホイールなど価値の高い部品は取り外され、リユースやリサイクルに回されています。しかし車体そのものについては、解体後に大型シュレッダーで破砕されることが多く、鉄、アルミ、銅などが選別されるとはいえ、鉄についてはさまざまな鋼材が混在した状態になってしまいます。これでは高級鋼として利用できる素材まで品質を落としてしまうことになり、本来持っていた価値を十分に活かしているとは言い難いのです。

 

 言い換えれば、現在のリサイクル制度は「量」の循環には成功していても、「質」の循環までは十分に実現できていないということになります。資源を回していることは間違いありませんが、どのような品質で次の製品へと受け継がれているのかという視点が、これまであまり重視されてこなかったのです。

 

 ところが脱炭素社会では、この「質」が極めて重要になります。高炉に比べてCO₂排出量を大幅に削減できると期待される革新的大型電炉も、高品質な鉄スクラップを安定して確保できなければ、その性能を十分に発揮することはできません。つまり競争力を左右するのは炉そのものの性能だけではなく、その炉へ良質な原料を継続的に供給できるサプライチェーン全体の仕組みなのです。

 

 私は以前から、サーキュラーエコノミーは技術だけで成立するものではなく、価値の循環を支える仕組みづくりが重要だと申し上げてきました。まさに今回の事例はその典型例ではないでしょうか。どれほど優れた製鋼技術が完成したとしても、入口となる資源循環が従来のままであれば、その潜在能力を十分に引き出すことは難しくなります。

 

 では、そのような循環の高度化をどのように評価すれば良いのでしょうか。ここで重要になるのが、「どれだけ回収したか」という量だけでなく、「どれだけ高い品質を維持したまま循環できたか」という質を同時に評価するという考え方です。

 

 現在、多くの循環指標はリサイクル率や回収率など、重量をベースとした評価が中心になっています。もちろん分かりやすく比較もしやすい指標ですが、それだけでは高品質な材料が低品質用途へ回される、いわゆるダウンサイクルと、本来の用途へ近い形で循環するアップサイクルとを十分に区別することができません。

 

 これからの循環経済では、「質×量」という考え方をもっと積極的に取り入れていく必要があるのではないでしょうか。同じ一トンの鉄であっても、高級鋼としてもう一度自動車に使えるのか、それとも鉄筋用にしか利用できないのかでは、資源としての価値も、経済安全保障への貢献度も大きく異なります。その違いを客観的に数値化できれば、企業の投資判断も、政策立案も、これまで以上に合理的なものになるはずです。

 

 残念ながら、そのような評価制度については世界的にもまだ整備が始まったばかりです。リサイクル率を競う時代から、循環の質を競う時代へ移りつつあるにもかかわらず、その価値を共通の物差しで示す仕組みは十分に整っているとは言えません。

 

 しかし裏を返せば、だからこそ新しいビジネスチャンスが存在するとも言えます。循環の質を見える化し、その価値を取引先や金融機関、投資家と共有できる企業は、単なる環境対応企業ではなく、資源安全保障を支える企業として新しい評価を受ける可能性があります。循環経済は、単なる廃棄物処理の延長ではなく、資源そのものの価値を最大化する経済へと変わろうとしているのです。

 

 

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