若手がやる気を失う、その背後にある構造問題

「現場の主任が『今忙しいから』といって若手の異動をいやがるんです。若手はひとつの担当に固定されてしまって、経験がつめない。悪循環が起こっています」
なるほどな、と聞いていました。
経営者から見ると、入社したばかりの頃は目を輝かせていた若手が、しばらくすると口数が減り、頼まれたことだけをするようになる。そこでつい、「最近の若手は、どうしてこんなに早くやる気を失うのだろう」と思いたくなります。
でも、少し違う見方もできそうです。彼らは必ずしも会社を辞めたいわけではありません。できればこの会社で働き続けたい。役に立ちたい。もっと仕事を覚えたい。そう思っている人の意欲だけが、静かに弱っていくことがあります。
やる気を失ったのではなく、やる気の使い道がなくなったのです。
人は、やれることが増えたときに、自分が伸びていると感じます。仕事の前後が見えたときに、自分の役割を理解します。そして、自分の仕事が誰の何に役立っているのかがわかったときに、働く意味を持てます。
ところが、ひとつの担当に長く固定されると、やれることは増えにくい。仕事の全体も見えない。自分のしていることの意味もつかみにくい。毎日きちんと働いているのに、前に進んでいる感じがしないのです。使い道を失ったやる気は、やがて表に出なくなります。
だからといって、若手の異動をいやがる現場の主任が悪いわけではありません。人を異動させれば、その月の仕事は回りにくくなります。新しい人に教える手間もかかります。納期を守り、目の前の仕事を止めないことを求められている主任にとって、人を手元に置くのは自然な判断です。
主任は、間違ったことをしていません。ただ、正しく評価されようとしているだけです。
問題は、若手に経験を積ませないことが現場の得になり、若手が育たないことが会社の損になる構造です。得をする場所と、損を引き受ける場所が分かれている。だから、誰も悪くないのに、同じことが繰り返されます。
若手が育たない会社では、たいてい、育てないことが誰かの得になっています。ここを人柄や指導力だけの問題として扱うと、本当の原因が見えなくなります。
今の忙しさを守るために払っているのは、来年の人手です。今日の仕事を滞りなく終えるために、明日その仕事を担える人が育つ機会を削っている。目の前では得をしていても、時間を先に進めてみると、会社全体では大きな負担を抱えています。
人は、同じ仕事を続けているだけでは育ちません。いくつかの仕事を経験し、違う立場を知り、仕事のつながりを理解する。その積み重ねが、自分はこの会社で伸びているという感覚をつくります。
若手の意欲は、気持ちの話に見えます。でも実際には、経験をどう配るかという仕組みの話です。本人にやる気を求めるだけではなく、やる気の使い道が会社の中に用意されているかを考える。気持ちを大切にするなら、その気持ちが続く形までつくる必要があります。
悪循環という言葉は便利ですが、循環している以上、どこかに最初に手を入れられる場所があるということでもあります。
やる気を本人の問題として見続けますか。それとも、やる気が続く条件を会社の側に置き直しますか。
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