サーキュラーエコノミーが描く新たなビジネスの地平
「西田さん、サーキュラーエコノミーが一体何を意味するのか、それがどうして新しいビジネスにつながるのか、セミナーを聞いてようやく分かってきた気がします。」
これは、先日都内で開催した私のセミナーに参加された経営者の方から、帰り際に直接いただいた言葉です。
この方がおっしゃる通りなのです。実は一口にサーキュラーエコノミーといっても、現時点では人それぞれの理解が大きく異なります。現実には、さまざまな業種・業態の企業が「我が社はサーキュラーエコノミーに取り組んでいます」と掲げているため、一見カンタンそうにも見えるのですが、これから理解を深めようとする方々にとっては、そう見えて実はとても奥が深いテーマなのです。
事実、多くの方が「サーキュラーエコノミーとはリサイクルのことだ」と片付けてしまいがちです。しかし、その理解だけでは新たなビジネスチャンスがどこにあるのかがまるで見えてこないのです。実はリサイクルはサーキュラーエコノミーのほんの一部分に過ぎません。もっと大きな視点として、「環境負荷を抑えながら価値を最大限に活用し、資源効率を高めることで経済の仕組み自体を変革していく取り組み」こそがその本質なのです。
この「資源効率を高める」という考え方こそが、サーキュラーエコノミーが新たなビジネス機会を生むカギになります。どのように価値を最大化できるか、いかにして従来の大量消費型、つまり過大な総コスト型経済モデルから脱却できるか——これらの問いに向き合う中に、新しいビジネスのヒントが隠されているのです。そして、このヒントを現実のものにできた人にこそ、勝利の女神が微笑む構造になっているのです。
すでに実現した具体例を挙げると、修理と同時に機能をアップグレードする取り組みや、ビンテージ品に新たな価値を見出してプレミアム価格を付ける戦略、さらにはスペアパーツの信頼性を極限まで高める開発、化学処理によって廃棄物を原料にCO2を出さない製法を実現する技術、などが挙げられます。これらはいずれも、これまでには存在しなかった視点から生み出された「オンリーワン」の取り組みです。
つまり、サーキュラーエコノミーとは「これまでにないものの見方や考え方」を活かし、「新しいビジネス的要素を織り込み」、「社会全体の資源負荷を低減させつつ」、「提供する価値を最大化しながらしっかり儲ける」取り組みの総称だと言えます。少々複雑に聞こえるかもしれませんが、本質的には「価値の循環をよりスムーズに行うための工夫」にほかなりません。そして、そこには必ず新たにお金を払ってでも価値を得たいと考えるお客様が現れる時代になってきたのです。
このような説明をすると、「それは理想論ではないのか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。確かに、従来のリニアエコノミー(資源を投入→消費→廃棄する一直線の経済構造)では、資源消費を前提にしてきたため、こうした発想はなじみにくかったかもしれません。しかし、社会的な潮流が変わり、CO2削減のニーズが急速に高まる中で、サーキュラーエコノミーの思想が改めて注目され始めているのです。
近年、CO2削減を目指す取り組みと並行して、資源の循環利用が企業価値に直結して評価されるようになりました。単に環境に優しいというだけではなく、資源調達コストの抑制や原材料の安定調達、さらにはCO2削減分を加味した新たな収益モデルの構築など、社会に対する複合的なメリットが生み出されようとしています。
最近では、サーキュラーエコノミーについて前向きに耳を傾けてくださる方が、少しずつですが確実に増えてきました。これは大変嬉しい変化です。CO2削減だけを考えるのではなく、ぜひサーキュラーエコノミーの実践と組み合わせることで、より大きなビジネスチャンスを生み出してほしいと心から願っています。
これからの時代、サーキュラーエコノミーに取り組むことは単なる「環境対応」ではなく、「新しい収益源の発掘」と「持続可能な成長戦略」の柱になります。社会課題の解決に貢献しながら利益を確保するという一見難しそうな挑戦にこそ、未来の市場を切り拓く鍵があるのです。
私は引き続き、このテーマに取り組む多くの企業とともに、新しい価値づくりのお手伝いをしていきたいと考えています。皆さまもぜひ、自社にしかできない「循環型ビジネスモデル」を探し、試してみてはいかがでしょうか。
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