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俯瞰する、を捨てる。

  商品リニューアル 古崎千穂 SPECIAL
古崎千穂 SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング 代表 古崎千穂

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

当コンサルタント開催セミナーがあります。

時代が変わってもなお、経営に関するビジネススクールが活況です。先日お会いしたエクゼクティブも、4月から社会人大学院生として大学に入学、地域ビジネスをテーマにマーケティング等を学ぶ、と話してくださいました。こうした機関では「俯瞰する」ということを様々な角度で体得できるようカリキュラムが構成されているはずです。

「経営者にとって必要な3つの目」という切り口で紹介される有名な言葉があります。3つの目とは「鳥の目」「虫の目」「魚の目」です。経営者として持っている「能力」プラス、マクロとミクロ、そして潮流のトレンドを読む目を持て、ということです。当然、持って然るべき3つの目です。この目を持つことで、自社のビジネスを俯瞰でき成功確率を高めていく、と言われています。

しかし現実の実務において、成功の確率を高めることを準備することと、実際にビジネスを「やる」とでは、大きな違いがあります。俯瞰することは、ビジネスを評論することには極めて有効だと思います。しかし、「俯瞰すること」はビジネスを生み出しません。ビジネスを創造することはありません。創造しない、ということは、儲からない、ということです。学んだことで、できるような気になってしまうからむしろ弊害。3つの目は「駄目」なんじゃないか、とさえ思うのです。

ひとつ事例をあげます。

今、女性の間で支持されているものの一つのキーワードに「インテリアになじむ」という感覚があります。最近の例では、缶入り麦茶です。キリンの「生姜とハーブのぬくもり麦茶 moogy(ムーギー)が注目されていました。柔らかな水彩のイラストを使った春夏秋冬のパッケージデザインが、他の缶入り麦茶やペットボトルのお茶とは圧倒的に異なります。

販売している大手通販サイトのLOHACOでは「moogy(ムーギー)と楽しむ暮らしをシェアしてください」や「春のおでかけのお供に、ちょっとしたギフトに、そのまま置いてインテリアにも…春のmoogyをお楽しみください!」という文言と可愛い写真が紹介されています。

わたくしも実際にムーギーを買ってみました。驚いたのが「行動が変わったこと」です。例えば、多くの人は、容器入りのお茶や水を買った場合、どこに置くでしょうか。わたくしはキッチン周りに無造作に置いたり、戸棚、冷蔵庫に収納していました。

しかし、ムーギーをまず置いたのはリビングのセンターテーブルにさりげなく2本置きました。書斎の本棚にも置きました。さらに、「リラックスしますように」と受験を控えていた子供のデスクにもそっと置きました。・・・そして、学校から帰ってきた子供の「これに何?」とムーギーを不審そうに見つめる子のひと言で我に返りました。

今までは、缶入り、ペットボトル入りの飲料の場合、すぐに飲んでしまうか、倉庫や戸棚に収納していました。無意識に「隠す」自分を再発見しました。一方、ムーギーは「飲む」モノではなくて「飾る」モノ。家のスポットに花を飾るようにムーギーを持って徘徊する自分を発見したのです。

このように、ムーギーは従来の缶入り飲料の市場をリニューアルした一例です。「インテリア麦茶」という新しい市場を創造しています。こうした発想は整理された過去情報、謂わゆる「3つの目」から生まれるものではない。今を生きる「生活者そのものの目」。泥臭いまでの「暮らしの発想」から生まれるものではないでしょうか。マクロとミクロとトレンドを高いところから俯瞰することとは真逆、なのではないか。

泥臭いまでの生活者としての感覚。今を生きる感覚。上からの目線ではない、自分目線こそが要請されています。3つの目を整える時間は無駄なことではありませんが、お客様に買っていただくための商品リニューアルにおいては、商機を逃す「駄目時間」だと考えます。

わたくしたち日本人は律儀に真面目に取り組む実直な資質があります。そういう資質を十分に尊重した上で、あえて「捨てる」姿勢が必要不可欠です。既成の常識を「捨てる」覚悟を持つ、ことです。そういう意味で、商品リニューアル、商品戦略においては、俯瞰することや分析することに重きをおくマーケテイング手法とは異なります。

既成、常識、今までの〇〇・・・、それらを捨てる覚悟。求められているのは、このたったひとつのことです。整えられた美しい世界を俯瞰することはラクです。俯瞰するって、気持ち良いことです。神の視点になれたような気持ちにもなります。

一方、舗装されていない土の上を裸足で生きて考えて行動することはシンドイものです。生活者の視点は、えげつないし、汚いし、身も蓋もなかったりします。けれど、新しい何かに出会い生まれる刹那は、スパイシーで楽しいものです。人真似ではない、誇りも生まれます

上から見て倣う人になるのか、オリジナルを地でゆくのか。どちらを選ぶか。どちらの道を進むのか。商品とは経営者の考え方そのものです。突破してゆきましょう。

 

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【社長直轄】商品リニューアルの着眼点
古崎千穂

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング代表

古崎千穂

執筆者のWebサイトはこちら https://rbnc.jp/

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