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既存商品サービスの脱「高付加価値化」戦略

  商品リニューアル 古崎千穂 SPECIAL
古崎千穂 SPECIAL

商品リニューアルコンサルティング

りぼんコンサルティング 代表 古崎千穂

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。


2016年3月10日に東京商工会議所・中小企業部から発行された「中小企業の経営課題に関するアンケート」というデータがあります。「今後注力していきたい取り組み(複数回答)」という質問に対して、トップの回答が「顧客ニーズに対するきめ細やかな対応」です。ついで多かったのが「既存製品サービスの高付加価値化」。その差はわずか0.1ポイントです。商品サービスリニューアルの観点からこの「高付加価値化」という言葉にいつも違和感を覚えます。

先日、都内のデザイン会社からサービスリニューアルの相談を受けました。

この会社の専門はグラフィックデザインです。チラシやDMなど販売促進の際に使用するツールをメインで手がけていますが、近年は会社案内やブランドブックの制作など「企業ブランディング」関連のツール受注が増えているそう。

商機を感じた社長は、デザインにブランディングとかマーケティングをプラスし、自社サービスを高付加価値化したい。社長曰く「デザインを通してクライアント企業のビジネスをトータルサポート」し「ビジネスパートナーとして末長くお付き合い」云々・・・「売上を作れるデザイン会社」に成長していきたい、と。

手始めに自社サイトをリニューアルしたいとのご相談です。わたくしは社長に、ひとつのお願いをしました。それは「社長ご自身の名刺と会社のマークを他のデザイン会社に発注し作ってもらう」ということです。・・・一瞬、沈黙です。「えーっ!どういうことですか・・・。そんなのイヤですよ。そもそもですね、私は他の人のデザインが気に入らないからこの仕事をはじめ、業を起こしたんですからー」とかなり渋いお顔をされました。

数日して他のデザイン会社が制作した名刺をお持ちになりました。清々しいご様子です。

「コザキ先生、僕ははじめてお客さんの気持ちがわかりました」。そう仰いました。

何でも「いろんな会社のサイトをみたんです。どこも“会社の理念”とか“デザインに対しての想い”がたくさん書いてありました。そして言ってることは皆同じ。ただのデザイン会社じゃない、高付加価値サービスを提供する会社とか、売上支援もできるとか、協力会社がたくさんあるとか・・・。読むだけでうんざりしちゃって」と。

で、実際に発注してみたところ「担当者もウンチクがやたら多くて。もう面倒くさいったらない。確かに成果は大事です。しかし、あくまでツールだから、テスト的に考えているわけじゃない、こっちは。名刺ひとつで商売がうまくいくなんて、今の時代、だれも考えてないし期待していないでしょう」と。

そして「結局いちばんシンプルな会社にしたんです。サイトには直近の事例が見やすく掲載されていて、提供してくれるサービス、価格が簡潔に書かれている会社です。素朴なデザイン会社で、面倒くさくなくて良かったんです」と。

さらに社長の気づきが続きます。「高付加価値サービスなんて、ほんとに欲しいと思ってるのでしょうか、お客さんは。僕はデザイン会社にブランディングもマーケティングも求めない。ただ、頭の中で浮かんだふわぁっとしたイメージを、きちんとカタチにしてくれればいい。“そうそうこれこれ”って言いたいんだ。パッと納品してもらって終わり。ハイ、次って。アフターフォローなんてデザイン会社に求めないと実感したよ」と。

ここまで話してくださって、ハタとご自身に立ち返られました。

商品サービスによって、お客様の心理と行動、アクションの軌跡、購入に至るまでの導線が変わってきます。頭で考えた「高付加価値化」が現場で通用するのかどうかを検証することが必要です。注力したいとおっしゃる「高付加価値化」ですが、その主語は誰でしょうか?

御社の商品サービスを買ってくださるのはお客様です。そのお客様が「いいね!」と共感し、強く激しく「欲しい!」と希求してくれない限り、その商品サービスに「価値」は生まれません。商品サービスの主語はいついかなる時でも「お客様」です

このところ、従来商品が古臭くなった、時代遅れではないか、そんなご不安をお抱えになってのご相談がとても増えています。その「古い新しい」の物差しは、士業先生のひとり言であったり、財務コンサルタントのアドバイスであったり、マーケターの意見であったり、時にパートナーである奥様やその家族の言葉であることがとても多いです。

身近にいる方達の言葉が社長の胸をザワザワとさせます。「人は良いことよりも悪いことを大きく考える傾向、ネガティブバイアスがかかりやすい」というコンサルタントであれば誰もが注意しているいくつかの事を踏まえた言葉であれば問題ないのですが、むしろ感情論や損得勘定からの言葉であったりで、注意が必要です。商品サービスを考えるとき「主語が誰か」という基本軸をしっかりと持つことです。

「高付加価値」という耳障りの良い言葉、ありがたそうな言葉を突き放しましょう。だれにとっての「高付加価値」であるのかを問い直してください。

前出のデザイン会社社長は、自身が顧客になってはじめて「高付加価値」の意味を体感されました。売上が上がるデザイン、ブランド価値が高まるデザイン・・・。デザイン会社はそう言いたがるけれど、お客様は儲かるツールよりも「満足できるツール」を実は求めているのではないか。ご自身の実感を通して検証が始まりました。

商品サービスを手にしたお客様が受け取った時に感じる「気持ち」こそが「価値」となります。赤ちゃんにとっては、だれもがハイブランドだと認めるエルメスのDMよりもアンパンマンのDMの方がずっと「いいね」に決まっています。

古臭いサービス、というけれど「私はそこが好き」というお客様が多く数字として利益が出ているのであれば何の問題もありません。高付加価値化、なんて考える必要さえないのです。お客様の買い物のテンションを高めることが、真の「付加価値」なのです。既存商品サービスを磨き上げること。お客様の「欲しい」に刺さる商品サービスになるように研ぎ澄ましてゆくことです。

 


【社長直轄】商品リニューアルの着眼点
古崎千穂

商品リニューアルコンサルティング

りぼんコンサルティング代表

古崎千穂

執筆者のWebサイトはこちら https://rbnc.jp/

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