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「リニューアルヒット」を生み出す秘訣

  商品リニューアル 古崎千穂 SPECIAL
古崎千穂 SPECIAL

商品リニューアルコンサルティング

りぼんコンサルティング 代表 古崎千穂

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。


その会社に初めて訪問した、ある冬の朝の衝撃を忘れることができません。郊外の小さな駅から車で15分。広い敷地の中に工場と本部があります。本部の一階には、そのメーカーの歴史を展示したショールームがあります。歴代の商品パッケージがたくさん並んでいます。

ショールームの奥に、本部事務所があり、役所のような大きなカウンターがあります。資料など何もない整理整頓された机が配置されています。ゆったりとした環境です。階段を上がると大広間になっています。50人ほどのお客様をもてなせるイベントスペースです。立派な神棚もあります。

広々とした本部事務所にはパートの女性、そして士業で、財務コンサルタントとして雇われた60代の男性と、ふたりだけ。財務コンサルタントは社長がいても顔を上げず、スマートフォンをいじっているばかり。あいさつしても無視。他の役員が連れてきた人です。

電話とファックスは一度も鳴ることがありません。剥がれかけたかつての販促ポスターの、風に揺れる音だけが響いています。室内は自然の光のみ。パートさんは室内であるにも関わらずダウンジャケットを着て仕事です。

パソコンのモニターは昔のテレビのような大きさ。「インターネットを使える人はだれもおらずやり取りは電話とファックスですよ」と社長。かつて社長の奥様が手伝っており、販促のあれこれをやっていたそう。その奥様も数年前に引退。営業マンで若い方が60代後半。こちらも、あいさつをしてもスルー。さて、社長室に案内され、商品戦略に関する打ち合わせが始まります。社長は、扉をバタンと閉めます。そして、いぶし銀のロッカーから、ご自身が開発した主力商品をたくさん机に並べて「これをあなたの力でリニューアルしてほしい・・・」。ただひと言、そうおっしゃいました。

商品が消費者に届くまでには3つの局面があります。3つの局面とは「メーカー・物流・流通」です。従来ビジネスでは、それぞれに専門の企業が役割分担をしてきました。しかしインターネットの出現と急速な進化により、今その壁は壊れつつあります。

メーカーはインターネットを使って自社で販路を作ることができるようになりました。スマートフォンの普及率が70%以上の現況、大半の人が家にいながらインターネットを介して買い物を楽しんでいます。この傾向は今後ますます強まってゆくでしょう。ゆえに、今後はメーカーが直販チャネルを持つことが当たり前になります。流通業者淘汰の今、メーカーにおいては卸売業者に頼らない体制づくりが当たり前の時代になっています。

このように、それぞれの局面において新しい仕組みを後押ししているのが、AIの台頭によるテクノロジーの進化です。人間の欲望、身体機能の拡張したものがテクノロジーである、そう定義したのはカナダの英文学者で文明評論家のマーシャル・マクルーハン(Marshall McLuhan, 1911-1980)です。technology テクノロジーの語源にあたる「テクネ」とは「技巧」を意味し、手技の拡張、というニュアンスがあります。

今日もメディアでは、AI時代になってなくなる仕事、変わる仕事が叫ばれています。インターネットを介したメディア、新聞、雑誌、テレビなどのオールドメディア、業界、評論家、士業の先生、マーケターやコンサルタント、さまざまな方が「これからの業界はこうだ!」と予言しています。不安に感じた方がセミナーに殺到し、情報商材も飛ぶように売れているそうです。

業界の危機、いやもう淘汰のサイクルだ、〇〇業界も〇〇産業ももうダメだ、見込みゼロ・・・とさんざんな言われようです。たしかに、そうかもしれません。大企業でしたら当然そう考えて、新しいテクノロジーを活用した新しい仕組みづくりに着手する必要があります。大企業は、たくさんのパートアルバイト、そして社員の人生を抱えています。大企業は月々の膨大な固定費や販管費をやりくりしていかなければならないのです。

ですから「これからの時代は〇〇である」そんなセリフを言って許されるのは、あらゆる面で力のある大企業。莫大な固定費に見合うだけの大きなマーケットと売上をとっていかなくてはならない大企業の経営陣の方々です。しかし、中小企業の経営者にとっては、皮膚感覚で「ヤバそうな空気感」だな、ということがわかる必要があっても、経済予測に一喜一憂する意味などあるのでしょうか。

冒頭の会社に戻ります。

人がいない、ネットも、新しい販路もない、無い無い尽くしのスタートです。あるのは何とかお客様がついてくださっている「主力商品群」だけ。社長をはじめ社員の思考回路も行動回路もワンパターンに陥っている状況。会社の中に流れる時間は、最盛期のころのまま、止まってしまっている・・・

このような状況を背景に、社長室で商品と対峙した時、わたくしの心はかなり動揺しました。できることなら逃げ帰りたい、、、畏れと恐れで心がガクガクしました。社長は「財務コンサルタントの先生は、経営計画書を数パターン書いただけです。半年以上あそこに居座っていて、一銭も売上をあげていないんです」と。「このままではわが社は・・・、だから奮起したんだ。商品リニューアルをして、命ぜんぶかけて売るんだ、売上をつくる」そうわたくしの前で宣言されました。

命がけでやる、と社長が言っている。このような状況を前に、新しいテクノロジー論をぶったり、アメリカやヨーロッパなどの外来手法や成功例を提示してみたり、過去の取り組みを批判しても、なんの意味があるだろう。そして、この現状を前にして、立ちすくんで泣いても喚いても、一銭の売上もあがりません。今までのやり方は問題だらけで、もう手遅れかもしれない。だけど、社長は命をかけて今からやる、と。まさに崖っぷちか滑落か、、、。

そもそも中小企業の置かれている現況はさまざまであり、大企業のようなシステムがありません。大企業の仕組みがオートマティックなら、中小企業は手動で動いている、動かしてきたのです。時代の潮目が大きく変わる今、だからこそ抽象的なことなどどうでも良い。いかに客を増やすか、いかに売り込んでゆくか、いかに買っていただくか、売上利益を上げるか、という実務に命を燃やしてゆくことがいちばん重要です。いま溢れる情報は「情報」として掴んでおけばよく、売上をつくりながら、次のフェーズにゆくためのシステムリニューアルを繰り返せばよいのではないか。

そう覚悟を決め、プロジェクトが動きだしました。実際、問題が続出。社長の想い入れや「夢」が強いあまり、お客様起点になれないという本質的な課題、、、商品ができあがっても人材不足で営業の仕組みが回せない、、、自社の力でプロモーションができない、、、社内体制の問題で物流にのせることができない等々、次から次へと問題だらけです。しかし、実践して動きだせば「仕組み」通りに成果が出る場面もあります。満足のゆく成果はこれからですが、売上は徐々に上がっています。

時代がどうなろうと、事業経営においてやることはひとつ。シンプルに粛々と、目の前の商品をいまのお客様に合わせてリニューアルし販売する仕組みを作る。既成概念にとらわれずに新しい発想で新しいお客様に買っていただく道をつくる。経営の本質を支えているのは「手塩にかけて商品サービスを作り、販売すること。販売への執念、、、販売に命を燃やすこと、、、。

ネーミング、パッケージ、デザイン等々、知識や机上のきれいなテクニックに走るコンサルティングが多い中、わたくしの商品リニューアルプログラムにおいては「販売力」の仕組み化こそがもっとも重要なポイントだと定義しています。この泥臭い実践を組み直し、実務に落とし込んでゆくお手伝いをしています。ひとつ売上を作った先に新しい未来が必ずある。危機こそ勝機。商品リニューアル戦略の根底に流れる哲学でもあります。

 


【社長直轄】商品リニューアルの着眼点
古崎千穂

商品リニューアルコンサルティング

りぼんコンサルティング代表

古崎千穂

執筆者のWebサイトはこちら https://rbnc.jp/

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