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サーキュラーエコノミーでバリューアップを実現するには

SPECIAL

オルタナティブ経営コンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

資源循環を新しいビジネスとして考える時、最終的な採用判断に最も影響するのは「それをやると儲かるのか?」という点に尽きます。既存のビジネスに勝るとも劣らない収益性をどのように担保できるのか?今日はいくつかの類型を参照しながら、バリューアップのポイントについてご説明します。

その前に、大前提としてサーキュラーエコノミーでは、モノの循環が「閉じたループにできること」即ち、顧客の囲いこみから始まってそのまた顧客、最終ユーザー、そして循環資源の回収までをしっかり自らの手の届くところに置けることが求められます。たとえ現状そうなっていなくても、バリューアップによって囲い込める見込みが立つことが求められます。

一つの類型は、循環資源の品質を上げることです。そうすることで「リサイクル材を使っている」ことに価値を見出す消費財メーカーが買ってくれるようになります。公共財や産業機械などのメーカーでも、たとえば「カーボンフットプリントが低い」など追加的な価値を見出してくれる事例が少しずつですが増えています。まずは品質アップ、が最も有望な考え方です。

今一つの類型は、回収やデリバリーなどを最適のタイミングで実施することです。そうすることで「欲しい時に、欲しいものを、欲しいだけ」提供するバリューが付加されます。このサービスと相性が良いのがIT技術です。農産物向けの資材供給など、センサーと組み合わせて育成のためのベストタイミングで実施することで、生産歩留まりや品質の向上が望めます。

なお、この視点にはちょっとしたバリエーションがあり、廃棄物の場合だと排出者がスペースを欲しがっているという場合があるのですが、だとしたら「(スペースを)欲しい時に欲しいだけ」提供する=廃棄物の回収というサービスも相応のバリューを提供している、ということになるのです。

さらに、もしもこの循環の輪の中で機械設備が使われているとした場合には、その寿命をメンテナンスによって長期化する、あるいは整備のためのダウンタイムを削減するという対応がバリューを増加させることにつながります。

そして、ある程度将来の話になるかもしれませんが、私は循環全体をサービス化することによるサブスクリプション料金の導入がひとつの分水嶺になるのではないかと見ています。そうすることで、設備更新を事業オーナー側の望むとおりのスケジュールで実施できるようになるわけです。よく事例として参照するのですが、たとえばコールセンターで一斉に設備更新される電話機やモニターなどのハードウェアは、それを扱う廃棄物事業者から見れば利幅が大きな取扱品目とは必ずしも言えないものですが、ロットが集まると見え方が変わってきます。

もしも同じことがレンタカービジネスで起きたらどうでしょう?ある日のこと、同種同年齢のクルマが一斉に、しかも計画的にリプレースされる。資源循環の効率性を究極まで高めるためには、循環資源に関わる管理がしっかりできてさえいれば、このようなモデルが最もバリューアップを実現しやすいのです。

そう考えたとき、大きな可能性を持っているのが個別品目のトレーサビリティです。自動車を例に考えると、現在組立工場では部品のひとつひとつに追跡用のID番号が振られ、システム上で製品となるまでフォローできるようになっているのですが、これを製品のライフサイクル全体に渡って運用できないだろうかという視点があります。製造→使用→廃棄・分別と再資源化に至るまで、共通のRFIDで部品をトレースして行くことができれば、再資源化効率の問題も品質向上も、劇的に改善できるようになるはずです。

その先には、サーキュレーション全体を取り込んだビジネスの集約・一元化という絵姿がおぼろげに見えてきます。そこまで行くと、資源循環が社会全体に最適化したベネフィットを提供するモデルへと変質してゆくことになるのですが、果たして21世紀中にそこまでの進歩がありえるか?それはまだ誰にもわからないのです。

最も早く実現できたものに、最も大きなリターンが約束される。今日のサーキュラーエコノミーは、そんな経済原則を追い求める者たちにとっての青い鳥なのかもしれません。

 

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