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現場に考えさせる、決めさせることの難しさ―「今日は俺が判断するよ。」と部下が言えるか?!?―

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地方メディアの高度有効活用コンサルタント

株式会社メディアコネクション

代表取締役 

広告分野における地方メディアの高度有効活用を専門とするコンサルタント。東京在住中のマーケティングビジネス経営の経験と地方企業への経営革新支援ノウハウの融合させた、独自の「儲かるための広告戦略」を開発。自らも成功実践事例として、地方メディアを舞台に展開。

先日、インターネットのビジネス系の記事で面白い内容のものを見つけましたので、私の考えと合わせてご紹介したいと思います。

その記事は

―ドイツ人上司に「目標管理が緩いのでは?」返ってきた意外な答え―

というタイトルで、『ドイツではそんなに働かない』(角川新書)隅田貫氏(メッツラー・アセットマネジメント シニアアドバイザー)著から抜粋したものです。

この記事は、次のような隅田氏の紹介から始まります。 

― 日本より年間労働時間が日本より300時間短く、時間当たり生産性が1.4倍高いドイツ。ドイツ人の日々の働き方は日本人とどう違うのか?(中略)

隅田氏が目の当たりにした、生産性の高いドイツの働き方のリアルとは。―

日本のホワイトカラーの生産性の低さは以前から言われていたことですが、その違いには改めて愕然とします。ドイツ企業メッツラー社のドイツ人上司から、隅田氏はいったいどんなことを学んだのでしょうか。

 

まず記事の冒頭、次のようにドイツの職場と考え方について紹介されています。

 ―当主である11代目のフリードリッヒ・フォン・メッツラー氏に、入社の挨拶をすると、彼は次のように言いました。

「われわれにとって大切なことは、あくまで独立性です。どこからも買収されないし、どこも買収しない。会社が誰のものかという議論は気にしなくてよい。安心して、顧客のために良いと思うことがあれば、すぐに行動してください」―

企業トップが、上記のような内容を最初に伝えるというのは珍しいのではないでしょうか。企業の独立性を強調し、会社の帰属という命題をまず否定するところから始まるというのは、日本企業では考えられないことです。

これに対して隅田氏は次のように応えました。

―「わかりました。さっそく明日から頑張ります」と答えると、当主は少し意外そうな表情で「なぜ、『今日から』と言ってもらえないのでしょうか」と言いました。私は「わかりました。今日から頑張ります」と慌てて言い直しました。

何百年も続く伝統のある銀行であっても、変えることに躊躇しない。もちろん守るべき伝統もあるが、時代に合わせて変えなければいけないものは変える。そういうカルチャーは日本ではなかなかないかもしれないと感じました。―

ここを読んでいて、海外企業が即断即決を重んじていることがよくわかります。

「明日から」でなく「今日から」、「後で」ではなく「今」というスピード感が大事なのです。

しかし「変えることに躊躇しない文化」は、日本の場合、特に銀行のような保守性の強い業界の企業においては、隅田氏の言われるようになかなか難しいのかも知れません。

最近も、私の事務所が組織変更(法人化)するに際して、銀行への提出書類の多さと、「判子」を押し続けなければならない煩わしさに辟易したものです。「自署押印」の文化は、そう簡単にはなくならないだろうな、と思わされました。また、作業的なやりとりの打ち合わせの回数も頻繁でした。同じような作業的打ち合わせの繰り返しに「金融業界は、まだまだ近代化からは程遠いな。」と感じさせられる場面が多々ありました。

こういった点に関する違いについて、隅田氏は、「自分でかなりの部分を決断」というタイトルで、以下のように述べられています。

― 私がメッツラー社から学んだことの一つは、「現場の自由度」の高さです。

日本の会社に勤務していたときは、自分一人の裁量で判断できることにはかなりの制限があり、上司を含め、関係の本部等に“逐次”と言っても過言ではないほど報告・連絡・相談(報連相)を求められました。その結果、結論・判断が示されるまで相当な時間が必要になることも少なくありませんでした。―

さて、ここで述べられているように、日本企業に「現場の自由度」というものがどれくらいあるでしょうか。

中小零細企業から大企業に至るまで、かなり限られているのではないか、と思います。

「報・連・相」については、昔から言われているところですが、これが、そんなに重要なのかは疑問です。少なくとも、隅田氏の見解を読む限りでは、世界のスタンダードではなさそうです。一人一人のビジネスマンに権限を持たせることなく、逐一上司に報告することを義務付ければ、隅田氏の言われるように、結論や判断が下されるまで相当な時間がかかることになります。

「報・連・相」に一定の効果があったとしても、少なくとも現代のビジネスシーンにおいて、このやり方には限界があるのではないでしょうか。日本企業が後生大事に守ってきた手法も切り替える時期にきているのかも知れません。

 

「現場の裁量権」について、その具体的な事例を、隅田氏は次のような出来事を通じて伝えておられます。

―(自分でかなりの部分を決断できる状況に) 最初はプレッシャーも感じましたし、躊躇しました。しかし、徐々に慣れていくと「こんなに仕事をやりやすい環境はないな」と思うようになったのです。

 同僚は上司が不在だったときに、「今日は俺が判断するよ」と言い、実際に顧客から連絡が来たときも、「それはこうしましょう」と話を進めていました。日本だったら、「今日は上司が不在なので、相談をして明日以降にご連絡いたします」と伝えることが多い場面です。―

この「今日は俺が判断するよ。」というのは、日本企業のビジネス文化に慣れ親しんだ人にとってはかなり驚愕のセリフではないでしょうか。

そんなこと考えたこともない、というのが大半の日本のビジネスマンの心境だと思います。

私が関与している地方の中小企業の場合、単に上司というよりオーナー経営者であるトップしか決裁権や裁量権を持たないケースも多く見られます。国全体の経済が上向きの時代は、上記のようなワンマン経営スタイルでもよかったのかも知れませんが、現在のような経済環境においては、次第に頭打ちになってきています。私の見ている限り、日本の中小企業の大きな課題でもあります。

 

現場の同僚が上司不在の際に「今日は俺が判断するよ」と、ものごとをさっさと決めていく、という日本企業では考えられないこの光景とその結果について、隅田氏は次のような感想を持つのです。

―翌日出社した上司は、同僚の進めた案件について報告を受けても、何も言いませんでした。これも日本ではあり得ません。たとえ部下の進め方が正しかったとしても、「何で俺に何の相談もなく話を進めたんだ!」と上司は怒り心頭に発するでしょう。

 それは結局、責任を負うのを避けているのかもしれません。何かトラブルが起きたときに責任を取らされたくないから、自分が関知しないところで行動されたら困ると考えるのでしょう。

 日本では仕事を管理するつもりが、人を必要以上に管理することになっているのかもしれません。―

ここがまさに、日本企業とドイツ企業の違いを如実に語っています。部下が、例え正しい判断をしたとしても怒られる日本企業と、前日に即決でものごとが処理されたことを当たり前として捉えるドイツ企業では、企業全体としてのスピード感にも、やがて大きな差が出てくるのではないか、と考えられます。

私などは、このくだりを読んで「なるほど、そういった企業風土の方が、風通しが良くて働きやすそうだ。」と、何の抵抗もなく受け入れられるのですが、中には「いやいや、上司に相談するのが当たり前だろう!」と、違和感を覚える日本のビジネスマンもいることでしょう。

そうすることで、大きなトラブルに見舞われることもなく、ここまで来たんだ、と。

しかしそういった体質は、隅田氏の言われるように「日本では仕事を管理するつもりが、人を必要以上に管理することになっている。」ということにつながるのではないか、と考えられます。この「必要以上に管理する」ことそのものももちろん問題なのですが、それによって管理される側も、そういった仕事の進め方が当たり前になり、やがて思考停止に陥るといった弊害が、もっと怖いと私は思います。

 

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