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260年続いた経営のコツ

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

260年以上続いた江戸幕府。長期経営の礎を築いた徳川家康公は、幕府の創業者にして松平家中興の祖です。15代まで続く事業承継を成功させたポイントはどこにあったのでしょうか。

 

1.江戸幕府というファミリービジネス

江戸幕府が長く続いた理由として、老中制度、大名の配置、参勤交代、金山・銀山・貨幣の支配、鎖国、身分制度など様々にあげられます。個人的な見解としては、家族の秩序を徹底したことが重要だったと考えます。

武士階級に家父長的な家族制度を確立したことが、徳川宗家を15代続かせるのと同時に、諸大名の統制にも有効でした。諸大名とすれば幕府に後継者を認めてもらう必要があり、幕府が大名の生殺与奪権を握ることになったからです。

そして、最も周到に家族対策をしたのが徳川家でした。御三家、御三卿という後継者をプールしておく仕組みを作り上げていきます。しかも、家康の凄いところは3代将軍まで決めたことです。

二代将軍の秀忠公は3代将軍の家光公でなく、その弟の忠長を後継者にしたいと考えていたが、家康公が長男である家光公を指名したそうです。織田家が3代目争いで家中が乱れたのをみて、対策を講じたともいえます。

いずれにしても、将軍家として長子相続を徹底したため、武士階級の絶対的なルールとして確立します。この制度がすごいところは、明治民法の中にも「家制度」として取り込まれたことです。

戦後に民法が改正されても「家制度」の名残は残り、今なお我々に影響を与えています。

 

2.今の時代

「家制度」の影響が伺えるのが長子、長男を優先することです。しかし、今の時代は「平等が第一」の世界です。一国一城の主であるオーナー社長が「俺の財産はすべて長男に渡す」といっても、他の相続人にひっくり返される可能性があります。

それでも社長の意思表示には意味があるのです。何も決めてないことが、何よりも問題だからです。財産をどう分けるかを家族で話し合うのはお勧めしません。社長が決めておいて、必要があれば修正するというのが筋です。

今も昔も、代替わりの時に起きるのがお家騒動ですが、現代のお家騒動である「遺産分割等にかかる調停・審判件数」も増える一方です。「平等であり、権利だから」という理屈は分かりますが、家業を継ぐことの重みは考慮してほしいものです。

かつての武士が家督を継ぐように、今の後継者は家業を継ぎます。ただし、継ぐ前提条件が違いすぎます。相続税という税金の問題と、遺留分という法律の問題がダブルで関わってきます。

相続税もなく、遺留分という厄介な制度がない先進国もあるなかで、世界でも指折り高い相続税や遺留分という制約を乗りこえるため、国は経営承継円滑化法という制度を整備しました。

 

 

3.ファミリービジネスを継ぐ仕組み

因みに「家制度」を肯定するつもりはなく、統治の仕組みとして江戸時代から昭和まで続き、今なお影響があるという事実です。会社の経営権を考えれば、均等相続より単独相続が好ましいはずです。

この家父長制とか家制度については、故橋本治氏の「父権性の崩壊あるいは指導者はもう来ない」で独自の視点で分析しています。

ファミリービジネスが最強になるのは、ファミリーが力を合わせてビジネスに取り組むときに他なりません。江戸幕府もファミリーがルールによって統制されていたからこそ安定していたのです。

今の時代、「家意識の衰退」とともに「家族を重視」する傾向が強まっています。さらに、離婚や再婚が珍しくない時代ですから、家族のあり方も多様です。創業社長に始まったビジネスも後継者が引き継ぐ頃にはファミリーの関係性が複雑になっています。

だからこそ、ファミリーの関係性をよくするための仕組みを持つ必要があります。それはファミリーの中に信頼関係を築くことなのだと思います。ビジネスは「三方よし」が良いのでしょうが、ファミリーは「三方一両損」の精神が良いのかもしれません。

お家騒動となってお白洲で裁きを受けるのではなく、大御所や御隠居がサラリと家族問題を片付けていくファミリーの関係性が保てるような仕組みづくりを応援していきます。

 

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