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競争力の源泉は見えないところにあるというお話し

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

昨年末に「ものづくり補助金」の「省力化枠」の公募が発表されました。「省力化枠」と名のついた公募は、私の記憶する限り初めてです。激しい人手不足の影響で倒産する会社まで現れている状況で、通常の業務を見直し、省力化のためのオーダーメイドの設備投資に対して補助金を出しましょうという施策。補助額の上限も通常の枠より引き上げられていて、国が「省力化」に力を入れているのがよくわかります。

訪れる会社ごとに「人が足りない」という声が上がります。どこもかしこも人不足で、中小企業が新卒採用など試みようものなら、投資に見合うリターンはほぼなし。経験者採用だって中小企業の求人倍率はいぜん高止まりしています。だからこその「省力化」のための施策。その背景はすごく納得できます。

反面、世の中には「希望退職」というものもまだ残っているようで、日経ビジネスのサイトには、「退職金1億円で希望退職に応じた」という大手企業の50代の社員の話も掲載されて、これにはびっくり。そのお金、どこから出てきているんだろう…と思いを巡らせました。

ともあれ、冒頭の補助金の話しに戻ると、こと中小企業に関して言えば、人が足りない。だから「省人化」ならぬ「省力化」をして、少ない人数でも効率よく付加価値の高い仕事ができる体制を整えていかなければならない。これが、賃金アップの原資をうみ、中小企業が生き残る原動力となるはず、という国の思惑が読み取れます。その通りだと思います。

省力化をするべき第二の理由、というか、もしかしたら、こちらの方が国にとっては優先的な理由かもしれないというのは、「日本の労働生産性が先進諸国と比べると著しく低い」という現実です。

労働生産性本部のサイトを除いてみると「OECD データに基づく 2022 年の日本の時間当たり労働生産性(就業 1 時間当たり付加価値)は、52.3 ドル(5,099 円)で、OECD 加盟 38 カ国中 30 位でした。実質ベースで前年から 0.8%上昇したものの、順位は 1970 年以降で最も低くなっています」という記載があります。

数字を突き付けられると改めてそうなのかと思います。労働生産性は付加価値を労働時間で割ったものなので、これを上げようとしたら、付加価値を上げるか、労働時間を減らすか、その両方をいっぺんにやるかという話しになります。で、「省力化」をしつつ、付加価値額を年率3%以上上げましょうという条件がついた、冒頭の補助金が出てきます。

国の補助金というのは、企業に対して「こっちの方向に向かってください」というメッセージが込められているものです。こっちの方向に向かえば、企業も成長するし、企業が成長すれば税収も増えて、国も潤うという話し。だから、そのメッセージはきちんと受け取っておいたほうが良いと思います。

で、問題は、「そのメッセージをいかにしてうちの会社に具現化していくか」というところに落ちてきます。

付加価値の高い、つまりは利益がとれる商品やサービスを提供しながら、働く人の生産性を上げていく。それはつまりは攻めと守りを同時にやるような話で、結構、エネルギーがいります。しかも一朝一夕にはできない。積み重ねが必要です。

他社の成功事例をマネするだけでは同じ成果は得られません。外側から見ただけではわからない競争力や信用力やマインドセットが絶対にあるからです。

世の中には2種類の競争戦略があると言われます。一つ目は、商品・サービスの競争力で勝ち抜く、いわば外向きの競争戦略、二つ目は、内部プロセスの優秀さで勝ち抜く、いわば内から湧き出る競争力です。そして、外向きの競争力は外からよく見えるために模倣されやすいのに対して、内から湧き出る競争力は、組織内部に組み込まれた仕組みや関係性などから醸し出される競争力であるが故に因果関係がわかりにくく、模倣されにくい。しかも長い時間をかけて培われたものなので、簡単には崩れない。

内から湧き出る競争力の構成要素には、業務プロセスや設備の使い方や顧客の視点の取り込み方などが含まれているのですが、それらを司どるのは、構成メンバーたる社員の感受性とか仕事に対する構えとかいった、これまた目には見えないものです。

だからそこに手を入れていきましょうというのが、今年最初の、そしていつもと変わらない私からの提案です。

ということで、今年も中小企業の事業と人の戦略について、いろいろと書いていこうと思います。また一年、どうぞお付き合いのほどよろしくお願いします。

 

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