社会的インパクトの価値

　現代の企業経営において「企業価値を上げること」、は経営者にとって何よりの責務とされています。具体的には現有の資産価値を保全するか高めたうえで、近未来から先の予想キャッシュフローを成長させる。伝統的な経営学において、財務的にはそうすることで「のみ」企業価値が高まるとされていました。

 

　これに対して最近では、環境や健康、人権などに配慮することも企業価値の一部であるという考え方が普及してきました。すでにCO2排出量については来年度くらいから市場で売り買いできるようになり、悪くても「雑収入」、定款によっては「売上高」として認識される会社も出て来るかもしれません。

 

　健康面の投資についても無形固定資産としての扱いを可能にする議論は起きています。人権についても同様ですが、このあたりは国や文化によって数値化した指標に大きな違いが出る部分でもあるので、比較分析が難しい要素であることもまた事実だと思います。

 

　そのような違いを乗り越えて、経営指標としてこれらの変数を数値化・可視化できるようになるとすると、企業がもたらす社会的インパクトについて、企業価値に対する定量的な貢献度や阻害度を計算できるようになる可能性が見えてきます。

 

　そのような社会的インパクトの価値を企業評価に取り込もうという姿勢は、かつて外部経済効果として公害を垂れ流した企業が多くいた時代には考えられない話かもしれませんが、逆に皆がそうなることで外部経済は内部化され、「あとは野となれ山となれ」という態度は社会から許容されないようになって行くものと考えられます。「社会に対して責任を持つ会社」であることを堂々と社会に発信してゆくために、御社もまた社会的インパクト価値を追求する企業であることを前面に掲げ、新たな価値の提供に取り組んでみては如何でしょうか。