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物語性が生む、営業の力──脱炭素時代の「インパクト・マーケティング」

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 「西田さん、今言われたようにお客さんに伝えるべき『物語性』いうのはホンマ大事やと思いますわ。」

 ある日のコンサルティング中に、クライアントの社長がふと漏らした一言です。関西弁の温かみもあって、その言葉は胸に深く刺さりました。

 当社では、「社会的インパクトを見える化し、それをマーケティングに活かす」という視点から「インパクト・マーケティング」という提案を行っています。環境負荷の低減や資源の有効活用といった企業活動を、単なるコストではなく、社会とつながる価値として再定義し、それをいかに魅力的に伝えるか──そこにこそ「物語性」が重要になるのです。

 たとえば「CO2を削減しています」と言うだけでは、単なる数字の羅列に過ぎません。しかし、「この商品は、製造現場で社員がこんな工夫をした結果、CO2排出をこれだけ減らせました。おかげで地域のスーパーとも協働して…」という話になれば、受け手の印象はまるで違います。その努力の背景にある人の想いや工夫が伝わるとき、データは初めて「営業の武器」として力を持つのです。

 私たちは、こうした背景ストーリーを「物語性」と呼んでいます。社会的インパクトを語るための「共感装置」とも言えるこの考え方は、従来の「環境はコスト」「儲けと矛盾する」といった思い込みを乗り越えるカギとなります。

 かつて、「環境はコストでしかない、以上終わり。」と断じられた時代が確かにありました。脱炭素や循環型社会といった言葉が、まだ絵空事のように思われていた頃の話です。しかし時代は変わり、今や脱炭素は法制度の改正(GX推進法、資源有効利用促進法など)によっても後押しされる、全社会的な要請となりました。

 最近では、お客様のほうから「御社のサービスを使うと、どれくらいCO2を削減できますか?」という問い合わせを受けることも少なくありません。当社がお勧めする答え方では平均的な数値を示すだけでなく、「それは事案によって違いますが、御社のご事情に沿った方法を導入すれば、小さな削減でもその効果を高められるかもしれません」といった対話を重ねることを重視しています。そうしたやり取りを支えるのが、しっかりと準備された「物語性」なのです。

 外注業者から提供されたデータも、それをストーリーに載せて語れなければ、営業上の武器にはなりません。しかし逆に、小さな努力でもストーリーを伴って語れば、相手の心を動かし、強みへと昇華させることができます。

 環境貢献を物語とデータで語る。それは単なるエピソード紹介ではなく、企業の理念や価値観を伝える表現でもあります。「自社は社会的な課題に真剣に取り組んでいる」。そうした姿勢が伝わるとき、お客様の心に「この会社と組みたい」という想いが芽生えるのです。

 この「物語性」を軸にした営業のあり方は、もはや環境ビジネスにとどまりません。全ての業種・業態にとって、社会的インパクトを強みに変えることは不可欠な戦略となりつつあります。SDGsの文脈でも、「誰一人取り残さない」という理念は、企業が届けるべき価値の普遍性を問い直すためのきっかけとなっています。

 数字と物語の融合は、御社の営業力を確実に底上げします。確かに今日すぐに売上に直結する話ではないかもしれません。しかし、中長期的なブランド価値の向上や、信頼の蓄積といった意味では、これほど強力な武器はありません。

 脱炭素社会への移行期である今こそ、「物語性」を営業の現場に活かしてみてはいかがでしょうか。小さな取り組みが、大きな共感へとつながる時代が、すでに始まっているのです。

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