業績が伸びる職場の『呼吸』──一体感・安心感・挑戦心の３要素でつくる透明資産

こにんちは。企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。

透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。

「なぜあの会社は、同じ業界にいても業績が伸び続けるのか？」
「なぜ自社は、人も商品も悪くないのに成長が鈍化しているのか？」

経営者が抱えるこの問いに対する答えは、戦略でも、資金でも、商品力でもありません。多くの場合、違いを生んでいるのは 職場に流れる日常の空気感なのです。たしかに空気は目に見えません。しかし、社員は呼吸をするように空気を吸い込み、その空気に影響されて行動します。会議で発言するか黙るか、新しい挑戦をするか守りに入るか、顧客対応に熱を込めるか無難に終わらせるか──すべては空気に左右されます。

―私はこれを「職場の呼吸」と呼んでいます。

会社に良い呼吸が流れていれば、社員は自然に活力を発揮し、成果が積み上がる。逆に呼吸が乱れていれば、優秀な人材も力を発揮できず、業績は停滞します。では、業績が伸びる職場の呼吸とは何か。それは 一体感・安心感・挑戦心という３つの感情トリガーが噛み合ったときに生まれます。以下、そのメカニズムと実践法を解き明かしていきましょう。

＜１＞　一体感──「自分は仲間だ」と感じる呼吸

まず必要なのは「自分はこの組織の一員だ」と感じられる 一体感 です。一体感のない職場では、社員は自分の成果だけを守ろうとします。「評価されたい」「責任を負いたくない」という自己防衛モードが優先され、協力や連携は生まれません。一方、一体感のある職場では、社員は「自分たち」という言葉で話します。「うちの会社」「うちのチーム」と自然に口にする。その瞬間、個人は組織と結びつき、成果を共有財産として喜べるようになります。実際、米グーグルの社内調査「プロジェクト・アリストテレス」でも、最も成果を出すチームの条件は「心理的安全性」と並んで「チームとしての意味や一体感」でした。一体感を生み出すためには、共通の目的を繰り返し共有することが不可欠です。経営者やリーダーが「なぜこの仕事をするのか」を語り、日々の業務と結びつける。それによって社員の呼吸が合い、自然と協力のリズムが生まれます。

＜2＞　安心感──「ここでは本音を出せる」と思える呼吸

二つ目は、社員が「ここでは安心して本音を言える」と感じられる 安心感です。安心感がない職場では、社員は黙り込みます。会議では反対したら嫌われるかもと思い、新しい提案は飲み込まれる。クレームや失敗も隠され、改善の機会を失います。逆に、安心感がある職場では、社員は積極的に意見を出し合います。「間違っても大丈夫」「挑戦を歓迎してもらえる」という空気が、自由な発想を呼び込みます。脳科学的にも、安心感はオキシトシンの分泌を促し、協力的な行動や信頼関係を強化することが明らかになっています。逆に恐怖や不安の空気はコルチゾールを増やし、社員を防御的にし、挑戦を抑え込んでしまいます。安心感をつくるために経営者ができる最もシンプルな行動は、社員の発言を否定で返さないことです。「それは違う」ではなく「なるほど、そういう考え方もあるね」と受け止める。たったこれだけで会議の空気は変わり、社員の呼吸は深くなります。

＜3＞挑戦心──「やってみよう」と前に出る呼吸

三つ目は、社員が「自分にもできる」「挑戦してみたい」と思える 挑戦心です。挑戦心のない職場は、安全圏に閉じこもります。余計なことはしない方がいいという空気が広がり、業務は停滞。顧客から見ても無難でつまらない会社に映ります。挑戦心のある職場では、社員は「まずやってみよう」と自然に口にします。新しい提案が歓迎され、失敗が責められない空気があるからです。その中から小さな成功が積み重なり、大きな業績につながっていきます。

例えばトヨタの「カイゼン文化」。社員が日常業務の中で小さな改善提案を出し、それが積み上がって世界的競争力を生み出しました。挑戦心を空気として仕込むことが、長期的な業績を押し上げるのです。挑戦心を育むには、挑戦を評価する制度を設計することが効果的です。成果だけでなく「挑戦したか」を評価軸に入れる。そうすることで「挑戦しても報われる」という空気が社内に流れ始めます。

＜4＞　３つの呼吸が組み合わさったときに起きること

ここまで紹介した「一体感」「安心感」「挑戦心」は、それぞれ独立した要素ではなく、相互に作用し合うものです。

・一体感があるから、安心して挑戦できる
・安心感があるから、チームで一体となれる
・挑戦心があるから、一体感が強まり、安心感が深まる

この３つが循環すると、職場の呼吸は一気に整います。社員は呼吸を合わせるように行動し、組織全体が透明資産を蓄積していきます。やがてそれは顧客にも伝わります。「この会社の人たちは気持ちいい」「なんとなく雰囲気がいい」という印象が口コミを生み、紹介やリピートにつながる。数字に表れない空気が、やがて数字に転換されるのです。

＜5＞　経営者に問いたい「いまの呼吸」

経営者の皆さん、自社の呼吸は整っていますか？

・社員は「自分は仲間だ」と思えていますか？
・会議では「本音を言っても大丈夫」という空気がありますか？
・社員は「やってみよう」と前に出ていますか？

もし一つでも欠けているなら、呼吸は浅く乱れている可能性があります。業績の停滞は、戦略や数字以前に、この呼吸の乱れが原因かもしれません。

 

＜まとめ＞──呼吸を整える経営が未来を拓く

経営は戦略と数字のゲームではありません。人の心と行動をどう引き出すかの勝負です。社員は言葉より空気に動かされます。その空気は、経営者自身の態度や日常の習慣から生まれます。業績が伸びる職場の呼吸──それは「一体感」「安心感」「挑戦心」という３つの感情トリガーが響き合うことで生まれる。

経営者の皆さん、ぜひ今日から自社の呼吸を整えてください。
透明資産経営の核心は、呼吸をデザインし、業績に転換することにあるのです。

―勝田耕司