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人材採用の壁を超える、短期と長期の視点

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

「やっぱり採れないですね。採れてもすぐ辞めちゃう。人がいないと仕事が回せないし、外注に頼ると利益が削られる。本当に困りました」。

先日お会いした経営者の方が、ひとしきり愚痴をこぼしていかれました。

確かに、人材採用の難しさは今や全国共通の課題です。有効求人倍率が下がったといっても、業界によっては依然として人手不足が深刻です。せっかく採用できた若手も、数か月で来なくなることは珍しくありません。

これが繰り返されると、「もう採用自体が怖い」と感じてしまう経営者も少なくないでしょう。だからといって外国人採用に踏み切るにも迷いがある。特に社長ひとりで切り盛りしている小さな会社では、判断がなおさら重くのしかかります。

こういう時に考えたい最初の一歩は「応募者の視点に立つ」ことです。採用する側は「来てくれさえすれば」と思いますが、応募者の側は「この会社で働く自分の姿を想像できるか」を見ています。給与や条件も大事ですが、それ以上に「ここなら自分を生かせそうだ」と思えるかどうか。会社説明会や面接の場で「うちはこんな会社です」と一方的に話すよりも、「あなたがここで働くと、こんな未来を描けます」と伝えるほうが響きます。

またせっかく採用しても辞めてしまっては意味がありません。多くの人が会社を去る理由は、必ずしも待遇の不満だけではなく、「ここで自分の未来が描けない」「役に立っていない気がする」という漠然とした不安です。
だからこそ大切なのは、日常の中で「自分は役に立っている」と社員が実感できる環境をつくることです。小さな成功体験を積ませたり、感謝を言葉にして伝えたりすることは、数字以上に大きな効果を持ちます。

採用の問題は、「今すぐ人が欲しい」という短期の課題と、「将来にわたって人が集まる会社になる」という長期の課題の両方を含んでいます。どちらか一方ではなく、両輪で取り組む必要があります。
短期策としては、募集媒体の選び方を見直したり、紹介制度を整えたり、副業人材やシニア人材を柔軟に活用する方法があります。一方で長期策は一朝一夕では成果が出ませんが、会社の魅力を磨き「ここで働きたい」と思ってもらえる土壌づくりが欠かせません。

長期策の核になるのは「会社の未来像」です。大企業のような派手な福利厚生はなくても、「この会社は地域や社会の中でこんな役割を果たそうとしている」「こんな未来を一緒に作ろうとしている」と語れる会社には、人が集まります。特に若手世代は、会社の理念や社会貢献に敏感です。たとえばSDGsや環境への取り組みを自社なりに表現するだけでも、応募者にとっては「未来に投資している会社だ」というメッセージになります。

採用は「会社のブランドづくり」の延長線上にあります。ブランドとは単に商品の価値を示すものではなく、「この会社で働くこと自体に価値がある」と感じてもらえることです。中小企業にとってブランドの核になるのは、社長のビジョンや社員同士の関係性、そして日々の雰囲気です。そこに共感する人は条件だけでは動かず、粘り強く働き続けてくれます。

もし今「採用がうまくいかない」と感じているなら、自社に問いかけてみてください。
「この会社で働くと、どんな未来が見えるだろうか」
「社員は日々、自分が役立っていると実感できているだろうか」
「会社の存在意義を社外に伝えられているだろうか」

採用は単なる人集めではなく、経営の縮図です。短期策と長期策を両輪で回すことができれば、きっと人材採用の壁を乗り越える道は開けます。

採用難の時代だからこそ、工夫の余地も大きい。人が集まる会社は「特別な何か」を持っているのではなく、未来を語り、社員に居場所を与えているだけなのかもしれないのです。


さて、あなたの会社では、どんな未来を描いて見せられるでしょうか。

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