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第58号:頑張って会社を伸ばそうとしているのに、豊かにならない理由

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライ先生、今までこんなに商売が楽しく、楽に感じたことはありません」

製造販売業を営むA社長の言葉です。A社長は続けます。「ずっと販売量を追ってきましたが、そのリスクを指摘してくれる人はいませんでした。」

これは、1人粗利を増やし、その対価として社員年収を上げていった中小企業社長が口を揃えて仰る言葉です。

経営者にとって会社を豊かにすることはロマンです。人生を経営に捧げている社長にとって、それは当然のことです。

しかし、「豊かにする」ためのルートはいくつかあります。そこには大きく「売上を増やす」と「利益を増やす」の2方向があります。前者は覇道経営、後者は王道経営と言われたりします。

また、「売上を増やす」ルートの中にも更に複数のルートがあります。「数を増やす」と「利幅を増やす」です。前者を拡大志向、後者を価値志向と言ったりします。

数を追求して売上を増やす、覇道経営×拡大志向

そして最も多くとられる方向性が「数を増やすことで売上を増やす」。いわば「覇道経営×拡大志向」と言える勇ましい感じです。経営の根源は、社長の願望や欲望だったりしますから、ある意味その方向性が多くなるのも当然と言えば当然です。

どのような方向性であっても、最終的に会社を豊かにしていくことが出来ます。しかし押さえておかなければならないのは、取る方向性によって「豊かになる条件」が異なるということです。

数を増やして売上を増やす―拡大×覇道経営で豊かになるためには、会社を大きくする必要があります。販売量を増やせば仕入・人が増えます。増産のために設備が必要になります。そのためにお金が必要になります。

量を増やすためにはウリモノの対象顧客を膨らませる必要があります。支払い能力や支払い意思の低い顧客も取り込んでいくことになりますから、価格を下げていくことになります。

この延長で儲けを出していくには、会社の規模を大きくすることです。単位当たりの儲けは小さくとも、購入者を増やしていけば、薄い利幅を大量に積み重ねていくことで儲けを生み出せます。

つまり、売上規模を50億、100億、500億、1000億・・・と大きくすることが豊かさに繋がる道になります。逆の見方をすると、ある程度の規模を超えるまでは、資金や人の部分での不足感と付き合う必要があるということです。

それ自体は特に問題ではありません。問題なのは、「会社の方向性と、自分の志が合っているか?」ということです。

実態が「売上拡大×数量追求」という経営をやっているにもかかわらず、「志は中小企業経営」であったらどうなるか?ということです。

売上拡大×数量追求を続ける以上、儲けを生み出す道は規模の拡大です。

しかしそれをどのレベルまでやろうとしているのか?もし前年比〇%、という感覚で同じ方向に売上を伸ばしていっても、根本的な状況はあまり変わりません。中途半端な規模では儲けが残りにくい「方向性」だからです。

 中途半端な規模を目指すのではなく、運転資金や設備資金を規模の経済で上回るまで、投資と人員確保を続け、「販売数量」を確保しなければなりません。

利幅を増やして利益を増やす、価値志向×王道経営

一方で、それとは反対に位置する方向性が「利幅を増やして利益を増やす」です。「価値志向×王道経営」と言うべき方向性です。

利幅を増やして利益を増やすためには、規模の追求はそれほど必要ありません。結果論として規模が大きくなるのは構いませんが、優先順位は「商品・サービス・技術・ヒト・時間単位当たりの儲けの大きさ」の追求です。

単位当たり儲けを増やすには、ウリモノの価値を大きなものにし、価値に見合った価格に転換する必要があります。その価値と価格を理解する、支払い意欲と支払い能力のある人が顧客になりますので、結果論として顧客像が絞られていきます。

顧客には、何度も繰り返し使ってもらい、更なる高付加価値サービスを利用してもらうことが必要です。

単位当たり儲けを増やすためには、投入資源量の増加を、利益上昇角度に対して緩やかな角度に抑える必要があります。また、人・技術・サービス単位当たりの稼ぎ出す儲け幅を増やす必要があります。ヒトの活動を価値創造の一点に集中させ、ムダを排除することです。

この延長で会社を豊かにしていくには、投入資源単位当たりの利幅を最大化していくことが肝です。すなわち、ヒト1人当たり粗利益を1千万、2千万、3千万円・・・と大きくしていくことが要諦になります。

そしてこの方向性は必然的に、規模の面で一定の制限がある、ということになります。逆の見方をすれば、規模に頼らず会社を豊かにしていくことのできる方向性である、ということです。

経営の「方向性」と「志」は一致しているか?

重要なことは、あなたが経営の方向性をどちら側に定めているのか?そして、あなたの志と方向性が一致しているのか?を問うことです。

A社は、「会社を大きくするよりも、自分達らしい、質の高いユニークなウリモノでお客様に喜んでもらいたい」という志にも関わらず、「拡大志向×覇道経営」の方向性で事業を展開していました。いつも社長の問いは「どうしたら沢山売れるか?」だったのです。

ではその"沢山売る"方向性で、どのくらいの「規模」まで事業を拡大させれば、望む豊かさに繋がるのか?-これは、極めてロジカルな「計算」によって求めることができます。そして、その規模まで会社を拡大することが、本当にA社長の望みなのか?・・・

一方で、その反対の「価値志向×王道経営」を目指すにおいて、どのくらいの「利幅」で事業を展開すれば望む豊かさが手に入るのか?-これも「計算」で求めることができます。

「この視点はなかったです。初めて気が付きました。」その2つを見比べたA社長はそう言葉にし、ここで自身の「志」と「目指す方向性」にズレがあったことに気が付きます。

一般的な常識に縛られて、知らず知らずのうちに「目指す方向性」と「志」がズレている・・・これは本当に多くの会社が直面している問題です。

いずれの道を行くかを決めなければなりません。なぜなら、いずれにおいても「突き抜けなければならない」からです。志と方向性が一致していなければ、アクセルとブレーキを同時に踏んでいるような状態であり、振り切ることができません。

そして、志と方向性が一致したのであれば、その方向性で豊かになる基本原則や考え方にしたがって事業を展開しなければなりません。

「拡大志向×覇道経営」なら規模を大きくすることを主眼とし、「価値志向×王道経営」なら1人粗利の最大化を主眼とするのです。

どちらを選ぶかはあなた次第です。しかし、中途半端であれば中途半端な豊かさしか手に入りません。あなたは、どちらの道を本気で志していきますか?

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