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GHG排出量のデータがひらく新しい価値創造の扉

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 「西田さん、企業の間で脱炭素への貢献度を可視化したいというニーズは確実に広がっています。」とあるオンライン会議の中で、参加者から投げかけられた一言です。まだ午後早い時間だったのですが、深まる秋で日が短くなっており、夕方の雰囲気も漂う時間帯のことでした。

 

 この言葉を聞いた瞬間、私は改めて「時代は確実に動いている」と感じました。脱炭素はもはや特定の業界の取り組みではなく、日本全体の産業構造そのものを変える大きなうねりになりつつあります。特にここ数年、その流れは加速度的に進んでいます。

 

 すでにこのコラムでも何度か触れてきたとおり、証券市場からの強い要求により、上場企業の非財務情報開示は新しい段階に入りました。2027年3月期からは、いよいよ気候変動関連の情報(GHG排出量のデータ)開示が義務化されることになり、企業は自らの環境貢献を“説明できる状態”にしておくことが避けて通れない状況になってきています。

 

 当初の対象は株式時価総額3兆円超の会社ですが、翌年には1兆円以上、さらにその翌年には5000億円以上へと範囲が広がり、2030年代にはプライム市場全体が対象になる見通しです。これは単に大手企業の取り組みが厳しくなるという話ではありません。むしろその波は中堅・中小企業、さらにはサプライチェーン全体へと確実に及んでゆきます。

 

 その中でも特に重要性が増しているのがScope3、つまりサプライチェーンから排出されるCO2の可視化です。中でも「カテゴリ1」と呼ばれる外注・調達に伴う排出量は多くの企業にとって最大のブラックボックスになっており、どの企業も「どう把握すればいいのか?」と頭を抱えているのが現状です。

 

 この深刻な課題に対して、当社ではサプライヤーの立場からカテゴリ1排出量を算定し、さらに再生材を提供している企業であれば、その環境貢献度まで同じ基準で測定できる仕組みを整えてきました。対象は主に製造業ですが、リサイクル業をはじめ関連分野にも問題なく対応可能です。現場視察からスタートし、たった3カ月で社内にモニタリングと報告の仕組みを構築できるのも、このサービスの強みだと自負しています。

 

 なぜそこまで短期間で対応できるのか。それは、当社が「サプライヤー視点」を徹底的に重視しているからです。多くの企業が直面している課題は、全てが複雑だからではなく、「自社の状況と開示要件の接続点が分からない」というギャップにあります。ここの橋渡しをすることで、企業は初めて“実務としての脱炭素”を前向きに進めることができるようになります。

 

 来年からは、このサービスをより広く展開することになりました。おそらく当初は月間数社のペースでのスタートになると思いますが、取り組む企業が増えれば増えるほど、サプライチェーン全体で環境負荷が見える化し、削減の取り組みに多くの企業が自信を持って踏み出せるはずです。

 

 さて、脱炭素やサーキュラーエコノミーなどのテーマは、どうしても「環境のために頑張る活動」というイメージで語られがちです。しかし私は、少し違う見方をしています。むしろ脱炭素は、新しい価値をつくり、新しい市場を切り開き、社会にも企業にもメリットをもたらす“成長戦略”そのものであると考えているのです。

 

 たとえばサーキュラーエコノミーの文脈では、これまで価値がないと思われてきた廃棄物や副産物が、技術の力で高い価値を持つ新素材へと生まれ変わり、市場に戻っていきます。これは単に環境配慮という話ではなく、“新しい価値創造の仕組み”が誕生する瞬間です。

 

 そして脱炭素も同じで、CO2を削減するという行為そのものがロス削減や効率化を生み、新しい取引機会をつくり、企業間の信頼性を強化する要素になっていきます。

 

 私はこれまで多くの企業と関わってきましたが、「社会に良いことを実践する企業は、最終的にビジネスでも成功する」という事実を何度も目にしてきました。これは理想論ではなく、すでに市場で起きている現実の姿です。だからこそ、今サプライチェーンの脱炭素に取り組む企業には、これから広がる新しい市場をいち早く見つけ、そこに飛び込むチャンスがあるのです。

 

 今回のサービス展開は、単なる環境データの整理ではありません。むしろ「企業の未来をつくるための基盤づくり」そのものです。環境貢献度を可視化するというニーズが広がる時代の中で、これをいち早く自社の強みに転換していくことこそが、これからの成長に向けた重要な第一歩になると考えています。

 

 深まる秋の夕方の気配とともに投げかけられた言葉。その一言は、脱炭素を巡る企業の姿勢が「義務としての取り組み」から「価値創造のための投資」へと変わってきていることを象徴しているように思えてなりません。

 

 これからも、そうした前向きな挑戦を続ける企業と一緒に、新しい未来をつくっていきたいと思っています。

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