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軽くなった言葉の時代に、経営者が言語化すべきもの

SPECIAL

マインドポジション経営コンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

マインドポジション経営コンサルタント。社員と顧客の心に占める貴社の位置づけ―「マインドポジション」をアップし、業績向上を目指す仕組み構築のスペシャリスト。30年にわたる中小企業のブランディングと組織開発の経験を背景に、マインドポジション経営実践プログラムをオリジナル開発。時代に合わせて組織を刷新したい経営者や、2代目、3代目社長、社員の力を引き出して社内の体制を再構築したい経営者に高く評価されている。新しい切り口に基づく事業の見直しと組織の再開発を通して業績の2ケタ成長を実現するなど、持続可能な企業の成長に向けた力強い支援に定評。株式会社マインドポジション経営研究所代表取締役

数年前から、地元の大学院でマーケティングを教える機会をいただいています。講義は全15回あるのですが、そのうちの1回で「プロモーションの歴史」を扱うことにしています。

特に注目しているのが、コピーつまりプロモーションに使われる文章の変遷。私がコピーライターをしていたころに全盛だった、いわゆる“コピーライティング”と、現在SNSなどにあふれているコピーの何が違うのかという点です。

違いはテクニックではありません。言葉に込められた「意味の深さ」です。

かつてのコピーは、短い言葉のなかに、その背景にある想いや願い、積み重ねてきた時間や文脈を背負っていました。読む人にとって、その言葉がどこから来たのか、なぜ生まれたのかを想像させる余白があったように思います。

一方で、昨今の言葉は、意味を運ぶというよりも、音やリズムを運ぶことに、その機能の中心が移ってしまったように感じます。軽やかで、拡散しやすく、耳には残るけれど、心に沈殿するものは少ない。そんな言葉が増えているように思えます。

無理もありません。インターネット普及前と現在のあいだ、約20年で情報量は6000倍になったとも言われています。一つひとつの言葉の意味を丁寧に味わっていては、とても追いつかない。だから私たちは、深く考える前に次の情報へと目を移していきます。

別に、それ自体が悪いわけではないのでしょう。ただ、消化しないことにどこか強迫観念を覚えるように、次から次へと流していく。その状態が、日常になってしまっているような気もします。

さて、年の初めです。今年1年をどんな年にしようか、きちんと言語化できているでしょうか。考えはしたけれど、もやもやしたままで終わっていないでしょうか。

考えは、言葉に落とし込まれて初めて、世の中に対する影響力を持ちます。環境が比較的安定していた時代には、「以心伝心」で通じることも多かったでしょう。しかし、価値観も働き方も多様化した現代では、言葉にして伝えなければ、伝わらないのが前提です。

ところが、言葉の位置づけが軽くなっている昨今です。年初に誓いを立てたとしても、その言葉の浅さや軽さが気になります。

「今年は成長の年にする」
「変化を恐れず挑戦する」

よく耳にする言葉ですし、間違ってはいません。ただ、それが自分自身の経験や判断基準と結びついていないと、どうしても借り物の言葉になってしまいます。耳触りはいいけれど、行動を縛る力は弱い。忙しくなるほど、簡単に忘れ去られてしまうのです。

言葉が曖昧なまま走り出してしまう会社ほど、途中で迷いが生じやすいように感じます。判断に迷ったとき、「何を大切にする会社なのか」「どこに向かおうとしているのか」が言葉として共有されていないと、その場の空気や声の大きさで決まってしまう。結果として、後から違和感や不満が噴き出します。

一方で、業績が安定し、人が定着している会社ほど、言葉の扱いが丁寧です。派手なスローガンを掲げるのではなく、自分たちの仕事の意味を、何度も確かめるように言葉にする。理念やビジョンは飾るものではなく、日々の判断の拠り所として使われています。

年初に志や方向性を語ることに、気恥ずかしさを覚える人もいるでしょう。忙しいのに、そんなことを考えている余裕はない、と感じる経営者も少なくありません。

でも、本当に忙しいときこそ、立ち返るための言葉が必要なのだと思います。

計画は修正されます。数字も、外部環境によって簡単に変わります。

それでも変えてはいけない軸があるとしたら、「どんな会社でありたいのか」「何のためにこの事業を続けているのか」という、意味の部分です。そこが言葉になっていれば、多少の想定外が起きても、進む方向を見失わずに済みます。

年初は、その言葉をつくり直す絶好のタイミングです。

今年1年、どんな判断を積み重ねていきたいのか。何を守り、何を手放すのか。その基準になる言葉を、あらためて確認してみてはいかがでしょうか。年の初めだからこそ、言葉に向き合う時間を大切にしていただければと思います。

さて、あなたの会社では、今年の方向性はどんな言葉で語られているでしょうか。

 

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