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顧客がまだ言葉にしていないニーズを読む

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 「西田先生、当社では顧客要求に応えることを第一に考えて行きたいと思うのですが、確かにCO2の排出量を報告すると『いいね』と言ってもらえるケースが増えてきています。でも具体的にどんな情報がツボなのか、今一つ明確ではないような気がするのですが・・。」

 現場の会議テーブルで、モニターに資料を投影しながら指導先の責任者が語ってくれた一言です。

 

 顧客要求に対応する、という考え方はもちろん正しいものです。企業活動の基本は顧客価値の創出であり、顧客のニーズに応えることがビジネスの出発点であるという点に異論を挟む人は少ないでしょう。

 

 ところが実務の現場では、もう少し複雑な状況が起きることがあります。それは「顧客自身が、自分は何を求めているのかをはっきり言葉にできていない」というケースです。

 

 こう書くと不思議に聞こえるかもしれませんが、実はそれほど珍しい話ではありません。新しい技術や新しい価値観が社会に広がるとき、人々は必ずしも最初から明確な要求を持っているわけではないからです。

 

 典型的な例としてよく挙げられるのがスマートフォンです。まだスマートフォンが存在しなかった時代、人々は「ポケットの中に高性能なコンピュータを持ち歩きたい」と考えていたわけではありません。ところがアップルがiPhoneを市場に提示したとき、「これ、どう?」という問いかけが世の中の見方を一変させました。結果として、人々の生活スタイルそのものが変わっていったのです。

 

 もちろん、すべてのビジネスがそこまで劇的な変化を起こすわけではありません。しかし、顧客要求というものが必ずしも最初から明確な形で存在しているとは限らない、という点は覚えておいてよいと思います。

 

 特にBtoBの世界では、この構図がさらに複雑になります。というのも、顧客のニーズの震源地が「顧客の顧客」、あるいはそのさらに先にあるケースが少なくないからです。そうなると、具体的な要求として現場に降りてくる頃には、焦点がややぼやけた形になっていることがあります。

 

 たとえば最近の自動車産業を見てみましょう。気候変動への対応として、電動化や省エネ性能の向上が急速に進められています。自動車メーカーはこれに対応するため、さまざまな技術的要求をサプライチェーンに提示します。

 

 しかしその要求が、ティア3レベルの部品メーカーにまで届く頃には、「具体的に何をどうすればよいのか」が分かりにくくなることがあります。材料メーカーや部品メーカーの立場からすると、直接の取引先から明確なニーズが示されない、という状況も決して珍しくありません。

 

 それでも確実に言えることがあります。世の中の方向性そのものは、すでに動き始めているということです。脱炭素や資源循環といったテーマは、政策の面でも市場の面でも着実に存在感を高めています。最終製品のメーカーが対応を進めれば、その影響はサプライチェーン全体に波及していきます。

 

 つまり、顧客がまだ言葉にできていないニーズが、すでに市場のどこかで動き始めている可能性があるということです。現場の担当者にとっては、少しつかみどころのない状況に見えるかもしれません。しかし経営者の視点から見ると、むしろここに大きなヒントが隠れていることもあります。

 

 大切なのは、顧客の言葉だけを手掛かりに判断するのではなく、社会全体の動きを自分の目で見極めることです。政策の方向性、業界の技術トレンド、そして市場がどこへ向かおうとしているのか。こうした情報を総合的に見ていくことで、顧客がまだはっきりと言語化していないニーズが少しずつ見えてきます。

 

 経営者にとっての役割は、まさにそこにあります。顧客から届いた要求をそのまま処理するだけでなく、その背景にある変化を読み取り、少し先の未来を見据えて手を打つことです。

 

 顧客が言葉にする前のニーズをどう感じ取るか。これは決して簡単な作業ではありません。しかし、そこに気づいた企業が次の時代の市場を切り開いていくのもまた事実です。顧客の声を大切にしながら、その背後で動く時代の流れにも目を向ける。これからの経営には、そんな視点がますます重要になっていくのではないでしょうか。

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