透明資産経営|社長がいなくなった瞬間、社内で始まる「力関係の再編」
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する空気感を意図的に設計し、運用する仕組みのことです。透明資産経営が扱うのは、社長がいるときではなく、社長がいないときに露呈する組織の本質です。
社長が出張に出た。長期休暇に入った。あるいは、承継や引退で現場から距離を置いた。その瞬間、会社の空気は驚くほど早く変わります。これは決して珍しい現象ではありません。むしろ、ほとんどの組織で起きています。ただ、多くの社長がそれに気づいていないだけです。
社長がいなくなった直後、会社がすぐに崩れるわけではありません。最初に起きるのは、力関係の微細な再編です。誰が決めるのか。誰の意見が通りやすいのか。誰に確認を取ると安全なのか。これらが、水面下で一斉に探られ始めます。
このとき、役職や肩書きがそのまま力になるとは限りません。実際に強くなるのは、「空気を読める人」「場の流れを止めない人」「社長の意向をそれらしく翻訳できる人」です。彼らは命令しません。ただ、無意識のうちに場の判断基準を握っていきます。
問題は、この再編が誰にも見えない形で進むことです。公式な決定もない。議事録にも残らない。しかし、現場の人間は敏感です。どこまで踏み込んでいいのか。どこから先は危険なのか。その境界線を、空気から学習していきます。
社長が不在でも回る会社と、そうでない会社の差はここで一気に開きます。前者の会社では、社長がいなくても判断基準が変わりません。なぜなら、価値観や優先順位が空気として共有されているからです。一方、後者の会社では、判断基準が人に依存していたため、空気は一気に流動化します。
流動化した空気の中では、人は安全な行動を選びます。強そうな人に従う。波風を立てない意見を言う。責任が曖昧になる選択をする。こうして、組織は静かに「保身モード」に入ります。これは怠慢ではありません。生存戦略です。
この状態が続くと、社内には二重構造が生まれます。表向きは従来通りの組織図があり、裏側では非公式な力関係が動いている。表の決定と裏の実行がズレ始めると、施策は形骸化し、責任の所在も曖昧になります。
社長が戻ってきたとき、多くの場合、異変は感じ取れません。数字も大きくは崩れていない。報告も整っている。しかし、空気はすでに変わっています。以前よりも発言が慎重になり、確認が増え、決断が遅くなっている。この違和感を放置すると、社長がいるときでさえ、組織は自律的に動かなくなります。
透明資産経営の視点では、社長不在時に起きる力関係の再編は、設計されていない空気の必然的な結果です。判断基準が言語化されておらず、行動原則が共有されていない組織では、必ず人が基準になります。そして、人が基準になると、力学が生まれます。
健全な会社では、社長がいなくなると「空気」が代行します。ただし、それは偶然の空気ではありません。意図的につくられた空気です。何を優先するか。何を恐れなくていいか。どこまで挑戦していいか。これらが空気として染み込んでいるため、力関係の再編が起きません。
一方、危うい会社では、社長がいなくなった瞬間に「誰に従うか」が最大の関心事になります。この状態が続くと、組織は必ず政治化します。議論より根回しが増え、正しさより安全が優先されます。これは、業績にとって最もコストの高い状態です。
社長にとって厳しい現実があります。
社長がいないときに会社がどう動くかが、その会社の実力です。
社長がいないと回らない会社は、まだ経営されていません。社長がいなくても回る会社だけが、初めて経営されています。その違いを生むのは、人材でも制度でもなく、空気です。もし今、社長がいないときに現場の判断が遅くなる、責任の所在が曖昧になる、無難な選択が増えると感じるなら、それは危険信号です。力関係が空気を支配し始めています。
社長の仕事は、常に現場にいることではありません。いなくても大丈夫な空気を残すことです。価値観が空気として残っていれば、社長が不在でも、組織は迷いません。社長がいなくなった瞬間に始まる力関係の再編は、避けられない現象ではありません。設計されていない空気が生む、ただの結果です。逆に言えば、空気を設計すれば、この再編は起きません。
社長が去った後に残るもの。
それは、言葉でも制度でもなく、空気です。
この空気感が会社を動かすか、縛るかは、今この瞬間の経営にかかっています。
ー勝田耕司
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