透明資産経営|なぜ「優秀な幹部」ほど、組織を弱くしてしまうのか ――能力の問題ではない。空気を奪う人材の正体

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する空気感を意図的に設計し、運用する仕組みのことです。透明資産経営が本当に難しいのは、「ダメな人」をどうするかではありません。「優秀に見える人」とどう向き合うかにこそ、本質的な難しさがあります。
多くの社長が、一度はこう感じたことがあるはずです。数字も読める。説明も論理的。会議でも的確な発言をする。仕事も速い。外部から見れば、申し分のない幹部。しかし、その人が力を持つようになってから、なぜか組織の動きが鈍くなる。現場が黙り、挑戦が減り、会議は整っているのに、手応えがなくなっていく。
この現象を、能力不足だと捉える社長はほとんどいません。むしろ逆です。「あの人は優秀だから」「ちゃんと考えているから」「現実を見ているから」。そうやって、違和感を打ち消していきます。しかし、問題の正体は能力ではありません。空気です。優秀な幹部が組織を弱くしてしまうとき、必ず起きていることがあります。それは、判断の基準が「正しさ」に寄りすぎることです。彼らは間違えません。失敗しにくい。説明も完璧です。しかし、その正しさが空気を支配し始めると、組織は別のものを失っていきます。
まず消えるのは、未完成な意見です。
仮説段階のアイデア。
直感的な違和感。
うまく説明できない提案。
優秀な幹部は、これらを無意識にふるい落とします。悪気はありません。合理的に判断しているだけです。しかし、現場は敏感です。「この人の前では、完成度の高い話しか通らない」「論理で武装しないと、相手にされない」。そう学習した瞬間、現場は黙り始めます。ここで社内に生まれるのが、「考えてから話す空気」です。一見すると良さそうですが、実は危険です。なぜなら、考え抜かれた意見しか出なくなる組織では、スピードと柔軟性が失われるからです。変化は、考え切れないところからやってきます。だからこそ、未整理な声が重要なのです。優秀な幹部が力を持つ組織では、会議が洗練されます。資料は美しく、ロジックも明快。結論もスマートです。しかし、その裏で、議論は痩せていきます。なぜなら、誰も論破されたくないからです。意見を言うより、黙って従う方が安全だと判断されるようになります。
この状態が続くと、組織は「減点方式」で動き始めます。失敗しないことが評価され、挑戦しないことが安定とされ、波風を立てないことが優秀さと誤解される。するとどうなるか。最も優秀なのは、何もしない人になります。ここが、社長にとって最も見えにくい落とし穴です。なぜなら、短期的には業績が大きく崩れないからです。むしろ、効率は上がる。無駄も減る。数字も整う。しかし、未来に向けた芽は確実に摘み取られています。
透明資産経営の視点で見ると、これは典型的な「空気の偏り」です。能力の高い人が悪いのではありません。その人の価値観や判断基準が、空気として組織全体に広がりすぎているのです。本来、空気は多様であるべきです。一つの正解、一つの基準に支配された空気は、必ず硬直します。さらに厄介なのは、優秀な幹部ほど自覚がないことです。自分は組織のために、合理的に、冷静に判断していると思っています。実際、その通りです。しかし、合理性が高すぎるがゆえに、人の感情や未整理な声を切り捨ててしまう。その結果、組織の感度が落ちていきます。
ここで強調しておきたいのは、これは人格の問題ではない、ということです。優秀な幹部ほど、責任感が強く、会社を思っています。だからこそ、「変な賭け」を嫌います。説明できない判断を避けます。その姿勢が、空気として固定されたとき、組織は守り一色になります。一方で、強い組織には共通点があります。それは、優秀な幹部が空気を独占していないことです。論理の人の横に、直感の人がいる。慎重な人の横に、突っ走る人がいる。それぞれが尊重され、役割として共存している。この状態を意図的につくっている社長だけが、組織を立体的に保てます。
社長がやってしまいがちなのは、優秀な幹部に判断を預けすぎることです。「あの人に任せておけば安心だ」。その安心が、空気を単色にします。任せることと、委ねきることは違います。判断を任せても、空気の設計まで任せてはいけません。優秀な幹部が組織を弱くする最大の理由は、間違えないからです。間違えない人の判断は、過去に最適化されています。しかし、経営が向き合うのは、常に未知の未来です。未知に対しては、間違える可能性を引き受けるしかありません。その余白が、空気として残っているかどうかが、成長を分けます。
もし今、社内でこんな兆しが出ているなら、注意が必要です。
会議が静かすぎる。
異論が出にくい。
現場からの提案が減っている。
優秀な幹部の意見が、いつも「正しい」。
これは、能力が機能しているサインではありません。空気が支配されているサインです。社長に求められるのは、優秀な幹部を疑うことではありません。その幹部の影響力が、空気として広がりすぎていないかを点検することです。論理だけでなく、未完成な声が守られているか。説明できない違和感が、場に残されているか。
優秀な幹部は、組織の武器にも、毒にもなります。分かれ目は一つです。空気を奪っていないかどうか。会社を本当に強くするのは、最も賢い判断ではありません。最も多様な判断が共存できる空気感に他ならないのです。
その空気を設計できるのは、社長だけです。だからこそ、優秀な幹部ほど、社長がつくる空気に覚悟を観るのです。
ー勝田耕司
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