透明資産経営|なぜ、経営者が孤独を感じなくなった会社は危ないのか?

こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する空気感を意図的に設計し、運用する仕組みのことです。透明資産経営が扱うのは、制度や戦略の設計だけではありません。社長の内面と組織の空気が、どのように呼応しているかという、極めて繊細な領域まで踏み込みます。
経営者の孤独は、よく語られるテーマです。最終責任を負う立場ゆえに、誰にも言えない判断を抱え、理解されない葛藤を抱えながら進む。それが経営の宿命だと言われます。しかし、ここで一つ問いを投げたい。もし社長が、以前ほど孤独を感じなくなっていたら、それは本当に健全なのでしょうか。
一見すると、孤独を感じない経営は理想に思えます。幹部が理解してくれる。現場が共感してくれる。反発も少なく、会議も穏やかに進む。社長の方針はスムーズに浸透し、決断にも大きな異論は出ない。この状態は安心感を生みます。しかし、安心と健全は必ずしも一致しません。
ー孤独は、判断の証でもある
経営者が孤独を感じる瞬間は、多くの場合、まだ答えの出ていない選択を引き受けるときです。数字だけでは測れない決断をする。短期的には不利でも、長期を見て方向を変える。誰も完全に賛成していないが、自分はこの道だと決める。こうした局面で、孤独は自然に生まれます。
孤独とは、周囲に理解者がいない状態ではなく、最終判断を自分で背負っている状態を指します。したがって、孤独がまったくないということは、判断の重みがどこかに分散している可能性があります。会議の総意に委ねている。幹部の合意に寄りかかっている。あるいは、波風が立たない選択だけを選んでいる。
そのとき、社長は楽になります。しかし同時に、経営の鋭さは失われます。
ー共感が増えすぎる空気の危うさ
組織の空気が穏やかになり、社長の発言に反発が出なくなると、多くの経営者は「成熟した」と感じます。衝突が減り、合意が早まり、心理的安全性が高まったように見える。しかし、ここには落とし穴があります。
本当に心理的安全性がある組織では、異論が消えません。むしろ増えます。なぜなら、異論を言っても関係が壊れないと分かっているからです。一方、共感が過剰になった組織では、異論が減ります。社長に対して遠慮が働き、空気を乱さないことが優先されます。
この状態が続くと、社長は誤認します。みんな理解してくれている、と。しかし実際には、空気が「同調」を強化しているだけかもしれません。表面的な一致が続くと、社長は孤独を感じなくなります。その代わりに、組織は静かに思考を止め始めます。
ー反対が消えると、未来も消える
強い組織には、必ず健全な摩擦があります。社長の意見に対しても、幹部が本気でぶつかる場面がある。その衝突を経て、意思決定は磨かれます。ところが、孤独を感じなくなった組織では、この摩擦が消えます。
摩擦が消える理由は単純です。反対しても意味がないと学習したか、あるいは反対すること自体が空気に合わなくなったかのどちらかです。どちらにしても、危険信号です。なぜなら、未来をつくる決断は、常に賛否を伴うからです。
全員が納得する選択は、たいてい過去の延長線上にあります。未知の領域へ踏み出す決断には、必ず不安が伴います。孤独を感じなくなった社長は、無意識のうちにこの「不安のある選択」を避けるようになります。その結果、会社は安定しますが、成長は鈍化します。
ー孤独を奪う構造
では、なぜ社長は孤独を感じなくなるのか。背景にはいくつかの構造があります。ひとつは、幹部が「察しすぎる」組織です。社長の意図を先回りし、波風が立たないように調整する。その配慮が積み重なると、社長は異論に触れなくなります。
もうひとつは、社長自身が「好かれる経営」を志向しているケースです。社員との距離を縮め、共感を得たいという思いは自然です。しかし、共感を優先しすぎると、厳しい判断を避けるようになります。すると、孤独は薄れますが、決断の重みも薄れます。
透明資産経営の観点から見ると、孤独が消えた会社では、空気が「波風を立てない方向」に設計されていることが多い。この空気は居心地が良い反面、変革に向きません。
ー孤独を感じ続ける経営
健全な経営とは、孤独をなくすことではなく、孤独を引き受け続けることです。ただし、孤立することとは違います。孤独を感じながらも、対話を重ねる。反対意見を歓迎し、それでも最終判断を背負う。その姿勢が、組織の空気を強くします。
社長が孤独を感じている組織では、幹部もまた自分の責任を引き受けています。意見をぶつけ、議論を交わし、最後は社長の決断を尊重する。この関係性がある限り、空気は健全に循環します。
ー孤独のない安心は、成長を止める
社長が孤独を感じなくなったとき、それは必ずしも成功の証ではありません。むしろ、組織が「無難な一致」に収まっている可能性があります。異論が減り、衝突がなくなり、判断が穏やかになったときこそ、注意が必要です。
経営とは、本質的に孤独な営みです。その孤独を感じなくなるほど快適になった組織は、挑戦の温度を失っているかもしれません。安心感に包まれた空気は、静かに会社の筋力を奪います。
孤独を恐れず、むしろ健全な証として受け止められるかどうか。社長がその姿勢を示せる限り、組織は思考を止めません。孤独を感じなくなったときこそ、空気を点検する。それが、持続的成長を支える透明資産経営の核心です。
ー勝田耕司
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