透明資産経営|なぜ社長の"機嫌"が、その日の会社を決めてしまうのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー社長が不機嫌な日、会社全体が静かに縮こまる
ある会社を訪ねたとき、出社した社員たちが、開口一番こう確認し合う光景を目にしました。「今日の社長、機嫌どう?」。たったこの一言に、その会社の構造が凝縮されています。社員は、その日の仕事の進め方を、業務内容ではなく、社長の機嫌によって決めている。社長が機嫌の良い日は、相談を持ちかけ、提案を出し、伸び伸びと動く。社長が不機嫌な日は、目立たぬように振る舞い、報告を後回しにし、余計なことは言わない。
これは、特殊な会社の話ではありません。程度の差こそあれ、中小企業の多くで、社長の機嫌は、その日の組織の動き方を支配しています。経営者本人が思っている以上に、社長の感情は、会社全体に深く、広く、影響を及ぼしているのです。
多くの経営者は、自分の機嫌を「個人的な気分の問題」だと考えています。しかし、社長の機嫌は、もはや私的なものではありません。それは、組織の空気を日々つくっている、立派な経営要素なのです。
ー社長の感情は、組織を伝わるうちに「増幅」する
なぜ、社長の機嫌がこれほど影響するのか。それは、社長の感情が、組織を伝わる過程で「増幅」されるからです。社長が少しイライラしている。本人にとっては「ちょっと不機嫌」程度の感覚です。しかし、それを受け取った役員や管理職は、社長の何倍も神経質になります。「社長の機嫌が悪い、まずいことが起きているのかもしれない」と。そして、その緊張をまとったまま、彼らは部下に接します。
部下は、上司の緊張を受け取って、さらに身構える。──こうして、社長のわずかな不機嫌は、組織の階層を下るたびに膨らみ、現場に届くころには、重く張り詰めた空気になっています。社長の感情は、社長自身が出した大きさのまま伝わるのではありません。組織という増幅装置を通って、何倍にも拡大して伝わる。だからこそ、社長は「自分の機嫌くらい、たいしたことはない」と考えてはいけないのです。
そして、この増幅された空気は、社内にとどまりません。緊張した社員は、その緊張を顔や声に乗せて、お客様の前に立ちます。お客様は、理由はわからないまま、「なんとなく感じが良くない」と察知する。社長の機嫌は、こうしてお客様にまで届き、巡り巡って業績に跳ね返ってくるのです。
ー不機嫌な社長が、知らないうちに失っているもの
社長の不機嫌は、目に見えないところで、確実に会社の資産を削っています。まず、情報が止まります。社長が不機嫌だと、社員は悪い報告を後回しにします。「今は言わないほうがいい」と判断し、機嫌の良いタイミングを待つ。その間に、対応が遅れ、問題は大きくなります。以前のコラムでお伝えした「悪い情報が届かない」現象の、最も身近な原因が、この社長の機嫌なのです。
次に、挑戦が止まります。不機嫌な空気の中では、社員は新しい提案を出しません。「機嫌が悪いときに余計なことを言って、否定されたくない」。こうして、本来生まれるはずだったアイデアが、社長の表情ひとつで、世に出る前に消えていきます。
そして、社員のエネルギーが奪われます。人は、相手の機嫌をうかがうことに、想像以上のエネルギーを使います。社長の顔色を読み、地雷を避け、機嫌を損ねないよう立ち回る。その労力は、本来、お客様や仕事に向けられるべきものでした。社長の不機嫌は、社員の集中力を、こっそりと吸い上げているのです。
ー「機嫌」は、性格ではなく、経営技術である
ここで、誤解のないようにお伝えします。これは「社長は常に明るく振る舞え」「無理にでも笑顔でいろ」という話ではありません。感情を偽ることを、社員はすぐに見抜きます。作り笑いの下の不機嫌は、かえって気味の悪い空気を生みます。本当に必要なのは、機嫌を「偽る」ことではなく、機嫌を「安定させる」ことです。これは、生まれ持った性格の問題ではなく、後から身につけられる経営技術です。
機嫌が安定している社長とは、感情の浮き沈みが小さく、予測可能な社長のことです。良いことがあっても極端に浮かれず、悪いことがあっても感情を組織にぶつけない。社員から見て「社長は、いつ話しかけても、だいたい同じ」。この「予測可能であること」こそが、社員に安心を与え、組織の空気を安定させます。
社員が最も消耗するのは、社長が不機嫌なことそのものより、「機嫌が読めないこと」です。今日は大丈夫か、地雷はどこか――それを毎朝探ること自体が、組織の疲弊を生む。機嫌が一定であれば、社員はその探索から解放され、エネルギーを仕事に注げるようになります。
ー社長が機嫌を整えることは、空気を整える最短ルート
では、機嫌を安定させるために、何ができるのか。難しい修行は必要ありません。いくつかの心がけで、十分に変わります。まず、自分の機嫌の悪さを自覚すること。不機嫌な日は、重要な判断や、部下への指摘を、意識的に少し後ろにずらす。感情が乗った言葉は、必ず増幅して伝わると知っているからです。
次に、感情と指摘を切り離すこと。問題を指摘するときは、不機嫌をぶつけるのではなく、穏やかな声で、事実と次の一手だけを伝える。これだけで、同じ指摘でも、社員の受け取り方はまったく変わります。
そして、社長自身の心身を整える時間を、経営の一部として確保すること。睡眠、休息、頭を空にする時間。これらは贅沢ではなく、組織の空気を守るための、経営者としての責務です。社長一人が機嫌を整えるだけで、組織全体の空気が変わる。これほど費用がかからず、これほど即効性のある空気の改善策は、他にありません。
社員が今日、出社して最初に確認するのが、あなたの機嫌でないことを願います。社長の感情が安定し、誰もが安心して本音を出せる空気。それは、社長自身の手の中にある、最も身近な経営資源なのです。
ー勝田耕司
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