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リーダーに仁徳が無ければ組織が危うい

SPECIAL

親子経営コンサルタント

ビジネス・イノベーション・サービス株式会社

代表取締役 

オーナー社長と後継者のための、「親子経営」を指導するコンサルタント。みずから100億円企業を築くも、同族企業ならではの難しさや舵取りの大変さで苦しんだ実体験を指導。親から子へ失敗しない経営継承の極意として「親子経営」を伝授する。

リーダーに仁徳が無ければ組織が危うい

拙著『幸せは不幸な出来事を装ってやってくる』(マネジメント社)のなかから経営エッセンスを読み解いてみました。

今日は私の子どもたちにリーダーの話しをしよう。
第2話

【リーダーに仁徳がなければ組織が危い】

君たちはどのようなリーダーなら、ついていけると思うのだろうか。あるいは、どのようなリーダーには決して従いたくないと思うだろうか。例えば会社なら、社長が自分や身内親族社員には甘く、一般社員には厳しくあたる場合はどうだろう。

あるいは、社長が自分や身内親族社員には甘く、かつ、一般社員にも甘い場合はどうだろう。
さらには、社長が自分や身内親族社員に厳しく、一般社員にも厳しい場合はどうだろう。
そして、社長が自分や身内親族社員に厳しく、一般社員には甘い場合はどうだろう。

君たちはどの社長ならついていけると思うだろうか。社長という人の上に立つリーダーならば、まずは自分自身に厳しくあって欲しいと私は思う。そのうえで、社員たちには思いやりを持って丁寧に辛抱強く接して欲しいと思うがいかがなものかな。

私が中国古典、特に四書といわれる『大学』『論語』『孟子』『中庸』を独学で学び始めたのを君たちは知っているだろう。『論語』のなかで、愚かで出来が悪い人のことを「小人」と言っている。

また、逆に自らを律することができ優秀な人物のことを「君子」と呼んでいる。会社という組織で、多くの人の上に立つ人物は「君子」であってもらいたいと思う。間違って「小人」が立つと人々がどれほどの迷惑を被るか容易に想像できるだろう。

会社という組織は、トップ一人の人格や考え方によって大きく変わる。これは私が長年、経営の現場で見てきた紛れもない事実だ。業績が良い会社だからといって、必ずしも良い会社とは限らない。

逆に、規模が小さくても社員たちが生き生きと働き、互いに信頼し合っている会社もある。その違いはどこにあるのか。私は結局のところ、リーダーの「徳」にあると思っている。

『論語』のなかに「徳は孤ならず、必ず隣あり」という言葉がある。徳のある人のまわりには、自然と人が集まってくるという意味だ。反対に、徳のない人のまわりからは、人が静かに去っていく。 

これは会社経営でもまったく同じだ。どれほど立派な経営理念を掲げても、どれほど美しい言葉を並べても、経営者本人に仁徳がなければ社員たちは見抜いてしまう。人は思っている以上に、人を見ているものだ。

口では「社員を大切にする」と言いながら、自分の利益ばかり考えている社長。口では「公平に評価する」と言いながら、身内だけを特別扱いする社長。そういう姿を社員たちは必ず見ている。

最初は黙って従っているように見えるかもしれない。しかし心は離れていく。そして組織というものは、心が離れ始めると本当に脆い。挨拶が小さくなる。会議で発言しなくなる。挑戦しなくなる。余計なことを言わなくなる。

やがて、優秀な人ほど辞めていく。私はこれまで多くの親子経営企業を見てきたが、業績悪化の原因を辿っていくと、数字の問題より前に、人間関係の問題に行き着くことが少なくない。

特に怖いのは、リーダーが「自分だけは正しい」と思い始めることだ。人の上に立つと、人はなかなか本当のことを言わなくなる。社長という立場になればなおさらだ。周囲が気を遣い、耳障りのいいことしか言わなくなる。

『論語』には、「過ちて改めざる、これを過ちという」という言葉がある。失敗すること自体が問題なのではない。間違いを認めず、改めないことが本当の過ちだという意味だ。人間だから失敗はある。

私自身も数えきれないほど失敗してきた。若い頃は、自分の考えを押し通そうとして社員たちの反発を招いたこともある。強く言えば人は動くと思っていた時代もあった。しかし、人は恐怖では長く動かない。

心から納得し、信頼して初めて力を発揮する。それを私は随分あとになってから学んだ。経営とは結局、人間を相手にする仕事なのだ。機械を動かすのではない。心を持った人間たちと共に歩むのが経営だ。

だからこそ、リーダーには仁徳が必要になる。「仁」とは何か。難しく考える必要はない。私は「相手の立場を思いやる心」だと思っている。時には厳しく叱ることも必要だ。間違いを正さなければならない時もある。

しかし、その厳しさの根底に愛情があるかどうかで、相手の受け止め方はまったく違ってくる。自分の感情で怒鳴るのか。相手の成長を願って伝えるのか。そこには大きな違いがある。君たちもこれから先、部下を持つことがあるかもしれない。

あるいは組織を率いる立場になるかもしれない。その時に忘れないで欲しい。人は権力。権威だけではついてこないということを。一時的には従うように見えても、心までは従わない。人が本当に動くのは、「この人のためなら頑張りたい」と思えた時だ。

私はそれがリーダーシップの本質だと思っている。社員たちから恐れられる社長より、信頼される社長であって欲しい。社員たちを支配する社長より、社員たちを守る社長であって欲しい。

中国古典では、君子とは「徳によって人を導く者」とされている。反対に小人は、自分の利益や保身ばかりを考える。私は君たちに、立派な肩書きを持つ人間になって欲しいとは思っていない。大きな会社の社長にならなくてもいい。有名にならなくてもいい。

しかし、もし人の上に立つのであれば、周囲から「あの人なら信頼できる」と言われる人物になって欲しい。それこそが本当の意味でのリーダーだと私は思う。会社は建物ではない。商品でもない。結局は「人」なのだ。

そして、その人をまとめるのがリーダーである以上、リーダーの人格が組織の空気を決める。仁徳のあるリーダーのもとでは、人は安心して働ける。安心があるから挑戦できる。挑戦できるから組織に活気が生まれる。

逆に、仁徳のないリーダーのもとでは、人は保身に走る。顔色ばかり窺うようになる。やがて組織は疲弊していく。だから私は思うのだ。経営とは、単なる利益追求ではない。経営者が人としてどう生きるかを問われる仕事なのだと思う。

 

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