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第68号:ホルムズショックで日本のオーナー経営は二極化する ~消費行動の変化を掴んだ者が次の時代の勝者となる~

SPECIAL

ファミリービジネスコンサルタント

MKUコンサルティング

代表取締役 

グループ経営の最適化により、オーナー経営を永続的なファミリービジネスに変える専門家。
 上場・非上場の企業グループオーナーの側近として、20年以上にわたり、企業グループの設計と経営、事業会社の経営、事業会社の創業、M&A、PMI、事業会社の事業承継、事業会社の撤退を手がけてきた。
 現在は、「オーナー社長のための骨太な事業成長を実現するグループ経営の最適化」についてのコンサルティングを行っている。
1969年生まれ、慶應義塾大学商学部卒。兵庫県立大学院経営研究科卒(MBA)。

第68号:ホルムズショックで日本のオーナー経営は二極化する ~消費行動の変化を掴んだ者が次の時代の勝者となる~

数日前、あるメガバンクのご紹介で、
医療機器のセットアップ工場を経営されているオーナー社長から
ご相談を受けることになりました。


その社長曰く、ホルムズショック以降、
急速に資金繰りが悪化しているとのことでした。


私は相談内容を伺いながら、
価格転嫁が難しい医療業界特有の流通構造のただ中で、
苦慮されている社長の気持ちを思い、胸が痛くなりました。


ホルムズショック後に私の元へ寄せられる相談には、
このように、原材料価格高騰や原材料不足だけではなく、
流通構造の特有問題から、
原材料価格上昇を販売価格へ転嫁できないという相談も多いです。


ご相談頂いたこちらの会社は、
医療機器メーカーから仕事を受けているセットアップ工場です。


人の命に関わる製品特性上、
ホルムズ海峡封鎖後も、原材料を優先的に確保できるような体制は整っておりました。

ところが、こちらのセットアップ工場に仕事を出されている医療機器メーカーが、
販売価格を上げられないことから、
資金繰りが行き詰まってしまったのです。


その結果、お得意先である医療機器メーカーが資金繰りに窮し、
支払いサイトの延長を告げられたというのです。

素材原材料メーカーは次々に値上げをしてきます。

しかし、原材料を加工して製品を製造する医療機器メーカーは、
次の薬価改定まで販売価格を変更できません。

仮に薬価改定があったとしても、薬価は下がる方向にしか動かないでしょう。

その結果、お得意先である医療機器メーカーは、
赤字納品が続いていたのです。

多くの病院は赤字経営です。

診療報酬も薬価も国によって決められているため、
原材料価格が上がったからといって、
患者へ自由に価格転嫁することはできません。


さらに、医療機器や医薬品を病院へ供給する医家向け卸売業も、
低マージンで卸す薄利のビジネスです。


つまり、素材メーカーからは値上げされる。

しかし医療機器メーカーは値上げできない。

卸売業者も値上げできない。

病院も薬価改定まで患者負担を変えられない。

という流通構造になっているのです。


そして、この病院流通特有の構造こそが、
今回ご相談いただいた会社を苦しめている真の原因だったのです。

そのため、このままでは次回の薬価改定まで会社経営を維持できないとして、
メガバンクからご相談を受けることになりました。


では、このように価格転嫁が難しい流通構造に置かれている企業は、
いかにしてホルムズショックの影響をチャンスに変えていけば良いのでしょうか。


今回のコラムでは、このような状況下にある企業が取り組むべき、
構造転換の必要性についてお話を進めて参ります。


ホルムズショックが及ぼす影響について、
多くの経営者は「原材料価格の高騰」と「消費の減退」が起こるものと考えます。

しかし私は、本当に起こることは別にあると思っています。


それは、消費者の判断基準の変化です。

前々回のコラムでは「数字を見る経営」により
前回のコラムでは「供給順位を上げる経営」により
ホルムズショックをチャンスに変えていくプロセスについてお伝えいたしました。

 

そして今回のコラムでは、
「消費者の判断基準の変化」と「消費者が何を優先して買うようになるか」
に適合した事業構造の転換により
ホルムズショックをチャンスに変えていくプロセスについて考えて参ります。


その手がかりを得るために、
まずは直近に起きた二つの事例を見てみましょう。


一つ目は令和の米騒動です。

2025年の米騒動では、
政府が備蓄米30万トンを放出し、
5kgあたり2,000円程度で販売する方針を示しました。


ところが、当初の競争入札分21万トンのうち、
4月末時点で店頭に届いたのは7%に留まったと報じられています。


では、この時、消費者はどのような行動を取ったのでしょうか。

多くの方が、「米があるか」で動いたと思われるかもしれません。

しかし実際には違いました。


消費者は、「自分が買える価格か」「目の前に米はあるか」

で行動したのです。

その結果、流通経路は多様化しました。

高騰した米価格は米離れを促進しました。

そして、流通の多様化と需要変化によって、現在は価格が落ち着きつつあります。


二つ目はコロナ禍のマスク不足です。

2020年、WHO緊急事態宣言の週には、
一週間で年間マスク販売枚数の30%超が動きました。


しかし、その後すぐにマスク不足が発生しました。

この時も消費者はブランドではなく、

「今、手に入るか」を優先しました。


当時のマスク市場は、
ユニ・チャーム、アイリスオーヤマ、興和の上位3社で約90%を占めていました。

しかし上位3社だけでは供給が追いつかなくなりました。


その結果、それまでマスクを製造していなかった企業まで市場参入しました。

つまり市場構造そのものが変わったのです。


ここで重要なことがあります。

米騒動もマスク不足も、価格が高騰したことが問題の本質ではありません。

消費者の判断基準が変わったことが真の問題だったのです。


ホルムズショック後も、米騒動やマスク不足の時と同じことが起こるはずです。


アラスカやアフリカを中心に、原油調達先の多角化が進んでいます。

川崎市ではプラスチック全面再生の取り組みが始まっています。

石灰石由来素材の活用も広がっています。

植物由来ナフサの開発も進んでいます。

つまり供給網そのものが変わり始めているのです。


その結果として起こることは何でしょうか。

消費者は、「今までと同じ消費行動」は取らなくなります。

「入手しやすい商品」

「納得できる商品」

「安定供給される商品」を買うようになるのです。


大事なことなので、もう一度お伝えします。


ショック時に強い企業とは、ブランド力のある企業ではありません。

入手可能性を設計できる企業です。

平時であれば、

①ブランド

②品質

③価格

④利便性

で選ばれます。

しかし危機時には順番が変わります。

①手に入るか

②価格は許容範囲か

③信頼できるか

④ブランドは何か

となるのです。


だから、ホルムズショック後に最も危険なのは、
原油価格上昇ではありません。
オーナー経営者が、消費者の判断基準変化を読み違えることです。


さらに、実質賃金低下も消費行動の変化を加速させます。


2025年5月の実質賃金は前年同月比2.9%減となりました。

物価上昇が賃金上昇を上回れば、消費者は必ず支出順位を組み替えます。


その結果、

①高くても必要なもの

②安ければ代替できるもの

③買わなくても困らないもの

に分類して消費するようになります。


つまり、消費行動は、「安物買い」の時代ではなく

「納得買い」の時代へと変わっていくのです。


値上げの理由が理解できる。

供給が安定している。

代替案も提示されている。

こうした企業の商品は選ばれ続けます。


しかし、ただ値上げする。

納期も分からない。

代替品提案も無い。

こうした企業の商品は、消費者から見た供給順位を下げられてしまうのです。


前回のコラムでは、仕入先との供給順位についてお伝えしました。


今回は、顧客から見た供給順位のお話しです。

オーナー経営は仕入先から選ばれる企業になるだけでは足りません。

顧客から選ばれ続ける企業にならなければならないのです。


顧客から選ばれ続ける企業には三つの共通点があります。

①優先順位を明確にしている

②代替案を提案できる

③顧客損失を最小化できる

ということです。


顧客は単なる買い手ではありません。

ショック時には、自社を選び続ける価値があるかを判断する陪審員なのです。

そして、消費行動変化を事業ミックス転換へ結びつけた企業が
次の時代の勝者になり得るのです。


前々回のコラムでは、
供給網再構築後に利益を生み出す事業ミックスへの転換が必要であるとお伝えしました。

前回のコラムでは、
そのためには供給順位を高める社長直轄の調達チームが必要だとお伝えしました。

そして今回のコラムでは、その先にある消費行動変化への適応をお伝えして参ります。


米騒動では、高級米から備蓄米や低価格米へ消費が移りました。

マスク不足では、有名メーカー品から、入手可能な商品へ消費が移りました。

危機時に消費者の判断基準が変わるということは、再現性のある現象なのです。

だからショック時にオーナー経営が見るべきものは、

「今売れている商品がどうなっていくか」ではありません。


どのような商品へ。

どのような価格帯へ。

どのような顧客層へ。

どのような供給ルートへ。

事業ミックスを変えれば、自社が収益性を向上できるのかです。


供給網再構築と消費行動変化を適合できたオーナー経営こそが、
次の時代の勝者となるのです。

そして、そのために必要なのが、オーナー社長主導の調達チームであり、
その調達チームを機動的に機能させる有力な方法の一つが、
エンジェル税制認定企業に、その調達チームを担わせ、
新たな事業ミックスへの芽を育てることなのです。


ホルムズショックは、多くのオーナー経営にとって厳しい試練になることでしょう。

しかし、それ以上に、ショック時に起こった環境変化を、
自社に適合させることに成功したオーナー経営は、
次代の躍進へ向けた強固な経営基盤を築く絶好の機会を得られるのです。


大事なことなので、もう一度お伝えします。


ホルムズショック後、オーナー経営の成否を決めるのは、
原油価格上昇が引き起こすショックを乗り切れたか否かではありません。


仕入れ先への供給順位と得意先への供給順位を同時に高め、
消費行動の変化を自社の構造変化に適合させ、
新たな事業ミックスへと転換できたオーナー経営こそが、
ホルムズショック後の覇者となりうるのです。


消費者は変わります。
供給網も変わります。
競争環境も変わります。
だからこそ、オーナー経営も変わらなければなりません。


供給順位を高める調達活動によって供給網を守る。
そして、変化した消費行動を捉え、
新たな需要に適合した事業ミックスへと転換する。

この二つを同時に実現できた企業だけが、
ホルムズショック後の業界再編を勝ち抜くことができるのです。


商品は模倣されます。
価格も追随されます。
しかし、環境変化を読み取り、
消費行動の変化に対応した事業ミックスの構築というキラー経営資源だけは、
簡単には模倣できないからです。


そして、こうしたキラー経営資源を磨き上げることで、
永続不滅のファミリービジネス群構築への道が拓かれていくのです。


ホルムズショック後の事業環境変化を成長機会へと転換するためには、
新たな供給網、新たな顧客層、新たな収益源の開拓を
エンジェル税制認定企業に担わせることも、有効な選択肢と成り得るでしょう。


その場合、エンジェル税制認定企業は、オーナー経営成功への礎と成り得るのです。


供給網の再構築。
消費行動変化への対応。
事業ミックス転換。

これらを同時に実現する有力な武器と成り得るのが、
エンジェル税制認定企業を活用した永続不滅のファミリービジネス群構築なのです。


なお、本コラムでお伝えした内容について、
さらに詳しく知りたい方は、
ぜひ下記よりお問い合わせください。

▶︎ MKUコンサルティング

 

一人でも多くのオーナー社長が、
ホルムズショックという危機を礎にして、
供給網再構築と最適な事業ミックスへの転換を実現し、
エンジェル税制認定企業を活かし、新たなキラー経営資源を育みながら、
永続不滅のファミリービジネス群構築を実現されますことを、心より願っております。

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