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選ばれることの意味

SPECIAL

循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

「営業とは売り込むことではない、客先にそれが欲しいと言わせる技術のことだ。」

最近とある営業勉強会の講師が言っていたコトバです。確かに、モノや情報があふれる現代社会において、多くの市場における「売り込み」の成功率は総じて高くはないのだろうと思われます。

 

 ではどうすればお客様は「それが欲しい」と感じてくれるのでしょうか?話を簡単にするため、日々のお買い物に例えてみましょう。

 

 スーパーマーケットの売れ筋商品の一つに「豚バラ肉薄切り」があります。調理しやすい100~400グラムくらいのパックになって、手に取りやすいよう冷蔵ショーケースの中段以下に置かれています。

 

 買い物客の多くが手に取る「豚バラ薄切り」ですが、多くの人が少しの時間、考えてから買い物かごへと入れるようです。この時間、買い物客は何を考えているのでしょうか?

 

 多くの場合は、献立を何にするか、いつ食べるか、他の選択肢との比較も含めて「食事」のことを考えているものと推測できます。中には冷凍庫の「備蓄」用や、自家製味噌漬けなどの「保存」用に肉を買う人もいるかもしれませんが、圧倒的多数が「食事」の材料、つまりソリューションの一要素として豚バラ肉を買っているのです。

 

 つまり、合理的な選択として献立が決まり、献立に必要だからバラ肉を買う、という流れなわけです。買い物客にとって喫緊の課題であったその日の夕食作りについて、豚バラ肉を買うことで対策の準備ができた、とも表現できるでしょう。

 

 そこには献立メニューという、鶏肉でもましてや魚でもない、豚バラ肉でないといけない理由があって、それゆえに豚バラ肉は「選ばれた」ということになります。

 

 ここであなたのビジネスについて考えてみましょうか。お客様にとっての喫緊の課題は何なのか。買い物に例えれば夕食の準備、肉好きな子供たち、財布にやさしい献立。だとしたら「豚バラ肉」は妥当な提案です。鶏肉に比べて時短調理に向いている点も評価される点かもしれません。

 

 そうみると、「選ばれること」の意味がおぼろげに浮かび上がってきます。お客様の課題解決策として、献立メニューまで提案できるかどうか、そしてそれに不可欠な材料として「豚バラ肉」を提供できるかどうかが勝負を分けるポイントになるということですね。

 

 実はここで大切なのは、自社の商品やサービスそのものではなく、「お客様が何を実現したいのかを理解すること」なのです。

 

 経営者の方々とお話をしていると、少なからぬ企業が自社の商品説明には大変熱心である一方、お客様が抱える課題については案外よく理解できていないケースがあったりします。

 

 もちろん、責任ある提供者として自社商品の特徴や優位性を意識することは重要です。しかしながら、お客様が本当に知りたいのは商品そのものの説明ではありません。その商品によって何が解決できるのか、自分たちにどのようなメリットがあるのか、という点なのです。

 

 例えば、工作機械を販売する会社であれば、工作機械そのものを売っているのではありません。生産性向上や人手不足対策、品質の安定化といった課題解決を提供しているのです。

 

 人材サービスであれば、人を紹介することが本質ではありません。採用難への対応であり、組織力強化であり、将来の成長基盤づくりを支援することが本来の価値です。最終的にはビジネスが上手く回りさえすればよいわけですから、AI時代には「人を紹介すること」が「AIを紹介すること」になる可能性だってあるかもしれません。

 

 そう考えると、多くの企業が競争に苦しむ理由も見えてきます。自社の商品を売ろうとしている会社同士が競争すると、どうしても価格や機能の比較になりがちです。しかし、お客様の課題解決を提案する会社になると、競争の土俵そのものが変わります。

 

 豚バラ肉の例で言えば、「100グラム何円か」という勝負だけではなくなります。「今日は生姜焼きにしませんか」「野菜も一緒に炒めれば栄養バランスも良いですよ」と献立そのものを提案できる立場になるからです。

 

 お客様は商品を買いたいのではなく、課題を解決したいのです。これは当たり前のようでいて、実は多くの企業が見落としがちな視点でもあります。なぜなら、自分たちは毎日商品やサービスと向き合っているため、いつの間にか商品中心の発想になってしまうからです。

 

 一方で、お客様は商品そのものにはそれほど関心を持っていません。関心があるのは、その商品がもたらしてくれる結果です。メニューが肚落ちするのであれば、別に鶏肉でも魚でも良いわけです。

 

 だからこそ営業とは、商品説明の技術ではなく、課題発見の技術であると言えるのかもしれません。お客様自身がまだ言葉にできていない課題を見つけ出し、その解決策を示し、その中で自社の商品やサービスが果たす役割を明確にする。その流れができた時、お客様は初めて「それが欲しい」と感じるのではないでしょうか。

 

 冒頭の講師の言葉を借りるならば、売り込むのではなく欲しいと言わせるとは、こういうことなのだろうと思います。

 

 市場環境が厳しくなり、選択肢が増え続ける時代だからこそ、「何を売るか」よりも「どんな課題を解決するか」が問われています。

 

 あなたの会社では、お客様の課題をしっかり把握できていますか?そしてそれに見合った献立や材料をしっかり提供できていますか?

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