企業は生成AIの進化にどう付き合えばよいのか?
生成AIがチャットだけではなく実際の仕事をするようになり、このコラムの読者の多くの方も含めていろいろな仕事を自動化している方も多いと思います。そんな中、米国政府が最新の生成AIモデルを海外に使わせてはならないという輸出管理規定の強化を打ち出し、ただちに日本では使えなくなるなど影響が及んでいます。この最新のモデルについては、私も使い始めていましたが非常に優秀で、誤答も少なく分析させても検討が深いので、今まで以上の使い方ができそうだと思っていました。しかし、それが突然使えなくなる…。これは、企業にとって別なリスクを感じさせます。それは「今まで優秀に動いていたAI社員が、突然使い物にならなくなる・優秀ではなくなってしまう」というものです。優秀な人間社員が突然病気やケガで出社できなくなり、次の出社のメドが立たない、というのと同じような衝撃を受けそうです。
これは今に始まったことではないわけですが、国際政治のAIに対する関与度合はますます高まってくることが予想されることから、今後も発生することはほぼ間違いありません。しかも国産のAIは開発こそ活発であるものの米国・中国との差はなかなか縮まっていないこともあり、私たちは海外のAIを使わざるを得ないわけですので、避けようもないことです。それでは、このリスクをどうやって軽減してゆけば良いのでしょうか?そこには一つの確かな方向性があると私は考えています。それがローカルAIとの併用です。
ローカルAIについては、今までも何回かこのコラムでも解説していますので、その存在についてはご存じの方も多いと思います。簡単に言えば、「パソコン上だけで動作する生成AI」です。今このローカルAIの世界が加速度的にホットになってきています。「AIと言えば、データセンターで高性能なサーバーをたくさん並べて動かすもの」とお考えの方も多いと思いますが、それは報道される情報による誤解です。当然最新のAIモデルを非力なパソコンで動かすことはできませんが、より小規模なものであれば十分動きます。ソフトである生成AIのパソコン用のモデルは数多く無料公開されていますので、再販などの用途につかわず社内ユースであれば無料利用できるモデルもあります。また、ハードウェアですが、(2026年6月現在メモリーの高騰でパソコン自体の値段が上がってしまっていますが)100万円以下で十分購入可能です。決して安価とは言いませんが、それでも人を新たに雇い入れることを考えれば比較的安いと言えます。さらに、生成AIを動作させる性能を持ったパソコンの開発に各社が乗り出していますので、今後価格競争が進み、より入手しやすくなることは間違いありません。むしろ、「パソコン=AIが動作する」ことが当たり前の世界がもうすぐ来ようとしているのではないかとさえ思えます。
このようにハードもソフトも企業が十分手を出せるレベルにあるので、これを業務に使わない手はないわけです。もちろん、WEBで使える最高性能のAIとは比べ物になりませんが、反復作業や定例作業には十分使えるレベルです。ということは、冒頭のリスクを回避するためにどうするか?これはもう自明の理です。
それは、「定型業務や付加価値が低い仕事はローカルAIにやらせる」「高度な分析や検討が必要な仕事だけWEBベースの高性能なAIを使う」という使い分けです。これを早期に実現できれば、突然サービスが停止されるようなAIにノンストップが要求される仕事を任せることはなくなりますし、第一付加価値が低い仕事のためにAIサービスの高い利用料を払い続ける必要もなくなるわけです。
ただし、この状態を実現するためには、当然ハードルがあります。ソフトやハードの環境を整える必要があるのは当然ですが、これはそれなりの技術力を持っている業者に依頼すれば、そんなに難しいことではありません。一番難しいのは、社内のどの業務をローカルにやらせることができるのか?という点に尽きます。これには業務の分析と棚卸(業務プロセス可視化)が重要なファクターとなります。その次にくるハードルが「業務に必要なデータを生成AIに与えるための準備」になります。今まで社員同志があうんの呼吸でやってきた仕事をAIにやらせるので、もはや「あうん」は許されません。厳格なデータが要求されますので、そのデータをどこから入手し、どのように加工してAIに渡せばよいのか?について業務可視化結果をもとに検討し、運用を設計する必要があります。大部分の会社でこのハードルを超えることが一番難しいことになるでしょう。ただ、これらは、今に始まったことではなく、会社の業務をデジタル化するためにはやっておかねばならなかった「宿題」ですので、この機にその宿題を片付けなければならないわけです。
AIの発展は、会社の仕事の中身を変え、社員の仕事や役割を変え、社会そのものが変化してゆくことに他なりません。それを他国の政治判断で私たちが使えなくなり、制限を受けることはなるべくさけなければなりません。ローカルAIはそのための重要な一つのピースであるということを、是非一度お考えいただければと思います。
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