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後継者のために仕組化せよ。再現性のない会社は、引き継ぐことができない

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

不動産業T社は、年商4億(粗利高)、社員数30名の会社です。
そのT社長が事務所に相談に来られました。
「先日、28歳の息子が会社に入りまして。」
 
 私は相槌を打ちました。
「それは、よかったですね。」
 
 しかし、T社長の表情は晴れません。
「そこで気づいたのです。うちには息子に継げるものが何もないことに。」


会社はある。しかし、継げるものがない

T社には、事務所があり、社員もいます。顧客も取引先もいます。
毎年、3億円の売上も上がっており、その地域ではそれなりに名の知れた会社です。
外から見れば、十分に引き継げる会社に見えるはずです。
 
 しかし、T社長にはまったくそうは思えないのです。
大型案件を取ってくることや、難しい商談まとめるのは自分です。社員の「これどうしましょうか」に対し、即答するのも自分です。そして、今も、すべての会議を自分で仕切り、すべてに答えを出しています。
 
 会社の重要な部分のほとんどが、T社長の経験と勘によって支えられ、動いているのです。その実情が、息子が入社し事業承継を意識した瞬間に見えてきたのです。
 
 「私が側にいれば、会社は回ります。しかし、継いだ後に、息子が私と同じようにできるとは思えないのです。」

 

後継者を育てればよい、ではない

後継者問題が話題になると、多くの社長は「誰に継がせるか」を考えます。
息子、社内の幹部、外部から経営者候補を採用する。
 
 そして、後継者が決まると、次は「どう育てるか」を考えます。
営業を経験させる。各部署を回らせる。外部の経営者研修に参加させる。
 
 しかし、その前に確認することがあります。
それは、「引き継ぐもの」があるかどうかです。
それ以上に、それは引き継げる状態になっているのかです。
 
 なぜその事業は勝てているのか。どのような考えで、そのマーケティングを構築しているのか。値決めの方針は。社員とのコミュニケーションの取り方や指示の出し方は。などなど。
 
 これらが社長の頭の中にしか存在しないです。そのため後継者に引き継ぐことができないのです。
 
 後継者と一緒に経営について、話すようにしている。それでは、無理なのです。
社長が30年かけて身につけたものを、数年で、それも会話だけで習得することはできないのです。それ以上に、それでは会社としては成長がないのです。
 
 後継者を育てることを考える前に、引き継げる会社をつくらなければならないのです。

 

仕組みとは、再現性である

そもそも仕組みとは何でしょうか。
マニュアルをつくること。システムを導入すること。会議を定例化すること。
これらはあくまでも仕組みの一部です。しかし、これだけでは、仕組みになりません。
 
 仕組みの本質は、再現性にあります。
誰がやっても、一定の結果が出る。同じ手順で行えば、同じように業務が進む。採用した人を、ある確率で戦力化できる。
ここに再現性を持たせるものが仕組みです。
 
 我々は、再現性があるから、人を雇うことができます。そして、ある一定以上の活躍でその人を戦力化し、活躍してもらうことができます。
そして、その再現性があるから、誰かに引き継ぐことができます。
 
 逆に、再現性がないものは、引き継ぐことができません。
それが息子であろうと、M&A先であろうと、できないのです。
 
 どれほど高い技術であっても、社長にしかできなければ引き継げません。その強い営業力も、社長の人脈で成り立っていれば残せません。その会社の存在が社長個人に依存している限り、その強さは会社の財産ではないのです。

 

再現性があるから、改善できる

当然ですが、再現性があるから改善ができます。
 
 やり方が毎回違えば、結果を比較することができません。やり方が決まっていなければ、そこに改善を積み上げることはできないのです。
 
 ある営業担当者は、訪問して説明する。別の営業担当者は、資料をメールで送る。社長は、相手を見ながらその場で話を変える。
この状態では、何が良かったのかが分かりません。会社としての「営業」が決まっていないのです。その結果、成約した理由も、失注した理由も、曖昧になります。
 
 同じ提案書を使う。同じ流れで説明する。同じ項目を確認する。
ここが決まっていれば、結果を比べることができます。
どの説明で相手の反応が変わったのか。どの段階で失注したのか。どの質問を加えれば成約率が上がるのか。
そこに改善を積み重ねることができます。

 

再現性があるから、教えることができる

そして、仕組みすなわち再現性があるから、教えられることができます。
まず、教えるためには、やることが決まっている必要があります。そして、そのやり方が決まっていることです。
 
 T社では、営業のやり方が人によって違っていました。
ある社員は、T社長から直接教わりました。ある社員は、先輩社員のやり方を真似しました。別の社員は、前職のやり方で営業をしています。
 
 決まっていない会社では、社長の知らない所で、それぞれの業務が独自に進化していきます。結果、社内にいくつもの流派が存在することになります。
 
 社員にせよ、後継者にせよ、「営業を覚えろ」「現場を経験しろ」「経営者として判断しろ」これらでは、何も教えていないのと一緒なのです。教えるものがないから、こうなっているのです。
 
 何を見て判断するのか。どの数字を確認するのか。どの条件なら受注するのか。どの案件なら断るのか。そこまで具体化して初めて、人に教えることができます。
そこが決まっているから、教えることができるのです。そして、教える順番が決まります。合否の基準を決めることができます。
 
 事業承継の準備は、後継者を社長と同じ能力にすることではありません。また、同じ考え方にすることでもありません。社長が長年かけて獲得した判断基準が「会社の判断基準」として使われている状態で渡すのです。

 

後継者に渡すべき三つの仕組み

後継者に渡すべき仕組みは、大きく三つあります。
一つ目は、稼ぐ仕組みです。
 
 誰に、何を、どのように売るのか。なぜ自社が選ばれるのか。どこで利益を出すのか。
これは、事業モデルです。
 
 社長の人脈や営業力を渡すことはできません。しかし、売れる商品、顧客の集め方、提案の流れは、仕組みにできます。
 
 二つ目は、回す仕組みです。
 
 案件をどのように受け、誰に渡し、どのように完了させるのか。品質、納期、原価をどのように管理するのか。問題が起きた時に、誰がどの基準で判断するのか。
 
 この仕組みがなければ、後継者は毎日、社員から判断を求められることになります。それでは、経営をする時間など取れません。
 
 三つ目は、変える機能である組織です。
 
 会社は、今のやり方を守っているだけでは衰退します。
市場も顧客も競合も変わります。その変化に合わせて、事業や仕組みを変え続けなければなりません。それを担う組織です。
 
 目標を決める。計画を立てる。進捗を確認する。問題があれば、仕組みを改善する。
この成長サイクルを、後継者に渡す必要があります。

 

社長が元気なうちに始める

事業承継というと、社長が60代、70代になってから考えるものだと思われています。
それではまったく遅いのです。
 
 冒頭のT社長は、この面談の時、56歳でした。
「私も、あと10年は働けます。」
そう言われました。
 
 私は頷きお答えしました。
「はい、最短でも2年はかかります。今から始めましょう。」
 
 やはり仕組化には時間がかかります。それ以上に組織をつくり、機能させるのには時間がかかります。
 
 また、息子さんに継いだ後も、社長が元気なうちであれば、失敗しても支えることができます。彼が判断を誤っても、修正することができます。
 
 T社長は、息子さんと一緒に仕組みづくりを進めることを決めたのでした。

 

まとめ:会社ではなく、再現性を残せ

後継者問題の本質は、誰に継がせるかではありません。
何を継がせるかです。
 
 会社の権利や財産を継がせるわけではありません。顧客でもなければ、社員でもありません。あくまでも、渡すべきは、仕組みです。
会社を動かす再現性です。
 
 くどいようですが、再現性があるから、改善することも教えることもできるのです。
だから、引き継ぐことができる、と言っているのです。
 
 再現性がないものは、社長とともに消えていきます。
後継者が決まってから、仕組化するのではありません。
 
 後継者に渡せる会社にするために、今から仕組化するのです。後継者を育てる前に、引き継げる会社をつくるのです。
後継者を入れる前のいまのうちに、それを作るのです。
 
 それがあれば、もしもと言う時に売却することもできます。それらが無ければ、売却も出来なくなります。
 
 すぐに取り掛かりましょう。

 

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