経営することは生涯学び続けるということ

今日は私の子どもたちに経営の話しをしておこう。
第1話
【経営するということは生涯学び続けるということ】
会社を設立することは誰だってできる。難しいのは経営をし続けることだ。言い換えれば、経営者には誰だって簡単になれる。難しいのは、経営者として生き続けるということだ。私は一度、会社を潰している。
妻とふたり、上京し、東京の下町で暮らし始めることになった。そのとき私が考えていたことは、いずれまた起業をするが、その前になぜ私が会社を倒産させることになったのか、考えてみたいということだった。
30才で社長となり、22年間、経営者として生きてきたけれど、自分は経営のことを本当はどれだけ理解していたのだろう。今一度改めて経営について学んでおきたい。切実にそう思った。
倒産し半年が過ぎ、法的整理が終わり、そろそろなにか仕事をしなければというときだった。
私がしたことは、仕事を探すことではなく、若い人たちと並んでビジネススクールでMBAの基礎科目を学ぶことだった。本当は最後まで通いたかったのだけれど、学費が高く、基礎科目だけを学んだ。
その半年間は想像以上に面白く楽しいものだった。経営経験がある私にとって、改めて経営学として学ぶことで得ることの多さは、他の若者たちの比ではなかっただろう。
その後、妻とふたりの今の会社を立ちあげることになる。現在、親子経営企業の経営コンサルタントとして顧問先企業と関わっている。顧問先経営者、後継者に日々いろんなアドバイスをさせていただいている。
当然のことながら、私自身も毎日同じように多くのことを学ばせてもらっている。経営をし続けることは、日々学び続けることだと実感している。
経営者になったからといって、経営の勉強が終わるわけではない。むしろ、そこからが本当の勉強の始まりなのだと思う。会社を経営していると、毎日が教科書だ。社員との関係から学ぶ。お客様から学ぶ。取引先から学ぶ。失敗から学ぶ。
時には、うまくいったことからさえ学ばなければならない。なぜうまくいったのかを理解していなければ、同じ成功を再現することができないからだ。私は会社を倒産させたことで、そのことを身をもって学んだ。
倒産は私にとって、とても大きな失敗であり、人生で初めての大きな挫折だった。しかし、今振り返ってみると、その失敗から学んだことは、その後の人生で何度も私を助けてくれた。もし、あの倒産がなかったら、私は経営についてここまで深く考えることはなかったかもしれない。
若い頃の私は、経営者なのだから自分が一番経営のことを分かっていると思っていた。今思えば、なんとも危うく傲慢な考え方だった。
社長という肩書があると、周りの人は簡単には「それは違います」と言ってくれない。すると、いつの間にか自分の考えが正しいと思い込んでしまう。これが経営者の怖いところだ。
だから経営者は、自分より若い人からでも学ばなければならない。自分より経験のない人の話しにも耳を傾けなければならない。知らないことは、「知らない」と言って教えてもらえばいい。年齢を重ねるほど、これが大切になる。
知識が増えるほど、知らないことの多さにも気づくようになるからだ。中国古典の『論語』に、「学びて時に之を習う」という有名な言葉がある。学んだことを繰り返し実践することで、本当の学びになるということだ。
経営もまったく同じだと思う。本を読んだだけでは経営は分からない。セミナーに参加しただけでも分からない。学んだことを実際の経営の場で試してみる。そして失敗する。また考える。やり直す。
その繰り返しの中で、少しずつ自分なりの経営ができるようになる。だから経営には終わりがない。会社を何十年経営したから、もう学ばなくてもいいということではない。むしろ会社が長く続けば続くほど、時代も変わる。
お客様の価値観も変わる。社員の働き方も変わる。競争相手も変わる。昨日まで正しかったことが、今日も正しいとは限らない。その変化についていくためにも、経営者自身が学び続けなければならない。
私は今でも本を読む。中国古典も読む。経営についても学ぶ。そして何より、顧問先の経営者や後継者の話しを聞く。そこには、本には書いていない生きた経営がある。
私がアドバイスをしているつもりで、実は私自身が教えられていることも多い。だから私は、今でも「先生」だとは思っていない。経営を学び続ける一人の人間だと思っている。
君たちも、これから長い経営者人生を歩むことになるかもしれない。その時、決して「自分は経営者だから分かっている」と思わないでほしい。
分からないことがあって当たり前。
失敗して当たり前。
迷って当たり前。
大切なのは、そのたびに学ぶことだ。失敗したら、なぜ失敗したのかを考える。成功したら、なぜ成功したのかを考える。人から叱られたら、その中に何か学ぶことがないかを考える。そして、昨日の自分より今日の自分が少しでも成長していれば、それでいい。
私は一度、会社を潰した。しかし、その経験があったからこそ、学ぶことの大切さを知ることができた。だから今では、あの失敗も私の人生に必要な出来事だったのだと思える。
経営者にとって、会社は生き物だ。そして経営者自身もまた、学び続けなければ成長しない。学ぶことを止めた時、経営者としての成長も止まる。
だから君たちには、会社を経営する限り、いや人生を終えるその日まで、学び続けてほしい。経営するということは、生涯学び続けるということなのだから。
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