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廃棄物の「品質保証」をしてみませんか?

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循環経済ビジネスコンサルタント

合同会社オフィス西田

チーフコンサルタント 

循環経済ビジネスコンサルタント。カーボンニュートラル、SDGs、サステナビリティ、サーキュラーエコノミー、社会的インパクト評価などへの対応を通じた現状打破と成長のための対案の構築と実践(オルタナティブ経営)を指導する。主な実績は、増客、技術開発、人財獲得、海外展開に関する戦略の構築と実現など。

 最近、サーキュラーエコノミーについて企業の方とお話をしていると、「再生材をもっと使いたいのだけれど、なかなか使えないんですよ」という話を耳にすることがあります。環境負荷を減らすという意味では再生材を使ったほうが良い、それは分かっているのだけれど、実際の製品に使うとなると話はそう簡単ではない、というわけです。

 

 そこで理由を尋ねると、「品質が心配だから」という答えが返ってきます。確かに、バージン材と再生材を比べれば、再生材の品質にはばらつきが生じやすく、用途によってはそれが採用を難しくする要因になることがあります。

 

 でも、この問題を少し掘り下げて考えてみると、必ずしも「再生材だから品質が悪い」ということだけが問題なのではないことに気づきます。むしろ企業が困るのは、「次に納入されるものも同じ品質なのか」「必要な量を必要な時期に確保できるのか」「そもそも何を原料にして作られたものなのか」が分からないことだったりするのです。

 

 これは、工業製品を扱う企業の立場になってみれば当たり前の話です。仮にある再生材を使って試作品を作り、十分な性能が出たとしても、半年後に購入した同じ名前の再生材が同じ性能を持っている保証がなければ、安心して量産品には採用できません。

 

 考えてみれば、私たちは普段購入している工業原料について、かなり細かな「約束」を前提として取引しています。寸法、成分、強度、純度、含水率など、原料によって項目は違いますが、一定の仕様が決められ、その範囲に入っていることを前提に価格が付けられ、商取引が成立しているわけです。

 

 ところが廃棄物の世界では、少し事情が違っていました。そもそも廃棄物とは、製品を作ったり使ったりした後に「要らなくなったもの」なので、発生する量も時期も、場合によっては中身さえも、必ずしも再資源化する側の都合に合わせてくれるわけではありません。

 

 だからこそ従来のリサイクルでは、「発生したものをどう処理するか」という発想がどうしても強くなります。廃棄物を集め、選別し、再資源化して、使ってくれるところを探すという流れになるわけですが、これだとどうしても再生材側が市場に合わせるというより、市場の側に再生材へ合わせてもらうような格好になりがちです。この関係を逆転できないでしょうか、というのが今回のお話です。

 

 つまり、「廃棄物からこんなものができました。誰か使ってください」という発想から、「市場が必要としている仕様の原料を、廃棄物から作って供給します」という発想へ変えてみるのです。同じリサイクルのように見えても、この二つはビジネスとしてかなり違うものになります。

 

 後者になると、廃棄物から作られたものは単なる「再生品」ではありません。成分や性能について一定の仕様を持ち、必要量を安定して供給できる、れっきとした工業原料という位置付けになってきます。

 

 私は、ここにこれからの再資源化ビジネスにとって大きなチャンスがあるのではないかと考えています。これまで再生材は、バージン材より安いことに価値を求められる場合が少なくありませんでした。「新品ではないのだから安くて当然」という感覚が、どこかにあったのだろうと思います。

 

 でもサーキュラーエコノミーが本格化すると、この前提そのものが変わる可能性があります。新たな地下資源の採掘をなるべく当てにせず、すでに社会の中に存在している資源を何度も循環させようというのであれば、再生材はバージン材の安価な代用品ではなく、むしろ経済を支える重要な原材料になってゆくからです。

 

 そうなると求められるのは、「再生できました」という事実だけではありません。何から作られ、どのような成分を持ち、どの程度の品質で、どれだけの量を、どのくらい安定して供給できるのかという情報が必要になります。

 

 さらに今後は、そこへ環境価値に関する情報も加わってくると思われます。たとえばバージン材を使用した場合と比較してCO2排出量をどの程度削減できたのか、新たな天然資源の使用をどれだけ回避できたのか、といった情報です。ここまで揃えば、再生材の見え方はだいぶ変わってくるのではないでしょうか。

 

 今仮に、二つの再生材があるとしましょう。一方は「廃プラスチックを再生したペレットです」という説明だけで売られており、もう一方は樹脂の種類、物性、異物混入の管理値、原料の由来、年間供給可能量、さらにはバージン材との比較によるCO2排出量の情報まで示されているとします。

 

 価格が同程度であれば、工業製品の原料としてどちらを採用しやすいかは、あまり説明する必要もないと思います。多少価格が高かったとしても、品質管理や調達リスクまで含めて考えれば、後者を選択する企業が出てきても不思議ではありません。

 

 つまり、ここで売っているのは単なる「再生材」ではないのです。品質についての安心、安定供給についての安心、そして環境価値を説明できるという安心まで含めた、一つの原材料商品を売っていると考えることができます。そう考えると、再資源化事業者の仕事も少し違って見えてきます。

 

 これまでは、廃棄物をできるだけ効率よく集め、処理し、再資源化する技術が競争力の中心だったと思います。もちろんこれからもその重要性は変わりませんが、それに加えて「再生したものの品質をどう揃えるか」「その品質をどう証明するか」「必要量をどう安定供給するか」という能力が競争力になってくるのではないでしょうか。

 

 そのためには、入口である廃棄物の段階から管理方法を変える必要があるかもしれません。異なる由来のものを何でも一緒に集めてしまえば、後工程で品質を揃えることは難しくなるので、発生元での分別や、回収段階での選別が今まで以上に重要になるでしょう。

 

 さらに、分析技術や選別技術にも投資が必要になると思います。何がどのくらい含まれているのかを測り、一定の品質になるように原料を調整し、出来上がった再生材について品質データを蓄積する仕組みが求められるからです。

 

 え?そんなことをしたらコストが上がって、再生材がますます高くなるじゃないか、と思われる経営者もいらっしゃるかもしれません。確かに、単に処理コストだけを比較すればそうなる可能性は十分にあります。

 

 でもここで大切なのは、安い再生材を作ろうとしているのではなく、『高くても買ってもらえる再生材を作ろうとしている』ということです。この違いは、再資源化ビジネスを考えるうえでかなり重要なのではないかと思います。

 

 たとえば品質保証によって用途が広がり、これまで使えなかった製品にも採用されるようになれば、市場そのものが大きくなります。さらに環境価値を数値で示すことができれば、取引先にとっても自社製品の環境性能を説明するための材料になります。

 

 ここには、サプライチェーン全体で価値を共有できる可能性があります。再資源化事業者にとっては再生材を高付加価値化できる。材料メーカーにとっては新しい原料調達先を確保できる。そして製品メーカーにとっては、資源循環やCO2削減への取り組みを顧客へ説明できるようになります。

 

 そうであれば、追加的に発生する選別や分析、品質管理のコストについても、再資源化事業者だけが負担しなければならないという話ではなくなるかもしれません。サプライチェーンに参加する企業が、それによって得られる価値に応じて負担する仕組みを考える余地が出てくるからです。

 

 私は、このあたりが「リサイクル」と「サーキュラーエコノミー」の違いを考える一つのポイントではないかと思っています。

 

 リサイクルという言葉からは、どうしても「捨てるはずだったものをもう一度使う」という発想が先に立ちます。それに対してサーキュラーエコノミーでは、すでに社会の中に存在する資源をどうすれば高い価値のまま循環させ続けることができるのか、というところから仕組みを考えます。

 

 そうだとすると、廃棄物を再生できたところで仕事が終わるのではありません。再生されたものが市場でどのような価値を持ち、どのような仕様であれば顧客が安心して買えるのかというところまで考えて、初めて一つの循環が完成することになります。

 

 これは製造業の経営者にとっても、決して他人事ではないと思います。御社の工場から出ている廃棄物について、今は処理業者へ費用を払って引き取ってもらっているだけだとしても、その中身をもう一度見直してみると、一定の品質を持った原材料として市場に戻せるものがあるかもしれません。特に製造工程から一定の条件で継続的に発生する端材や副産物などは、由来が明確で品質も比較的管理しやすいという点で、単なる「ゴミ」とはだいぶ性格が違います。

 

 そして一定の品質、一定の供給量、由来に関する情報、さらには環境価値まで揃えることができれば、それまで処理費を払っていたものに値段が付く可能性も出てきます。廃棄物処理費を数%削減するという話ではなく、これまでコストセンターだった場所から新しい売上が生まれるかもしれないという話なのです。

 

 廃棄物に品質保証を付ける、というと少し妙な表現に聞こえるかもしれません。でも、廃棄物から再生された瞬間に「商品」になるのであれば、商品として必要な仕様や品質保証を持たせることは、考えてみればごく自然なことです。

 

 これから再生材の市場が本格的に拡大するとき、勝負を分けるのは「再生できる会社」と「再生できない会社」の違いだけではなくなると思います。**再生したものを、仕様のある工業原料として市場へ送り出せる会社と、そこまでできない会社との差**が、次第に大きくなってゆくのではないでしょうか。

 

 廃棄物処理から再生材製造へ、そして再生材製造から品質保証された工業原料の供給へ。そんなふうに事業の定義を少しずつ変えてみると、今まで「処理しなければならないもの」にしか見えなかった廃棄物の向こう側に、思いがけず大きな市場が見えてくるのではないかと、私はそんなふうに考えているのですが。

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