透明資産経営|なぜ、社員が定時で帰るのを、社長は喜べないのか?
こんにちは!企業の空気をおカネに変える専門家、透明資産コンサルタントの勝田耕司です。
透明資産とは、業績に影響する「空気感」を意図的に設計し運用する仕組みのこと。透明資産を取り入れた透明資産経営は、お客様との絆が深まり、従業同士の信頼関係が築きあげられ、商品・サービスの独自性が強化されます。そして、持続的成長につながる経営の仕組です。
ー定時に、社員が一斉に帰っていく。その光景を、どう感じますか
思い浮かべてみてください。終業のチャイムが鳴った、その瞬間の、あなたの会社の光景を。時計が定時を指すと同時に、社員たちが、さっと席を立つ。パソコンを閉じ、荷物をまとめ、足早に帰っていく。まるで、その瞬間を、待ち構えていたかのように。──オフィスは、あっという間に、静まり返る。さて、この光景を見て、あなたの胸には、どんな気持ちが湧くでしょうか。「働き方改革の時代だ、良いことだ」と、頭では思う。けれど、心のどこかで、かすかな引っかかりを、覚えないでしょうか。「もう少し、仕事に気持ちがあってもいいのに」「まるで、逃げるように帰っていく」と。──その、うまく言葉にできない引っかかりは、大切なサインです。定時退社そのものが、悪いのではありません。問題は、社員が「どんな空気をまとって」帰っていくか、なのです。そして、その空気の中に、あなたの会社の、隠れた真実が表れているのです。
ー同じ「定時退社」でも、正反対の空気がある
なぜ、社員が定時で帰る光景に、社長は、素直に喜べないことがあるのか。ここに、この連載だからこそお伝えしたい、見極めのポイントがあります。同じ「定時退社」という光景の裏には、正反対の、二つの空気がありうる、ということです。一つは、充実感の中で帰る空気です。今日も、いい仕事ができた。やりきった。だから、気持ちよく、家族のもとへ帰る。──この社員は、仕事に満たされていて、その満足を胸に、退社していきます。もう一つは、逃避の空気です。この場所に、一秒でも長くいたくない。仕事にも、会社にも、何の愛着もない。だから、定時になった瞬間、解放されるように、逃げ帰る。──この社員は、仕事を「早く終わらせたい苦役」として、こなしているだけです。
この二つは、「定時に帰る」という行動は、まったく同じです。けれど、その社員がまとっている空気は、正反対。前者の会社は、健全そのものです。しかし、後者の会社では、社員の心が、すでに仕事から離れかけている。普通の経営者なら、「定時に帰るかどうか」という、行動だけを見ます。しかし、透明資産の視点では、行動そのものではなく、その行動をまとう空気を見ます。社員が、どんな表情で、どんな足取りで、どんな空気を放って帰っていくか。そこに、その社員が、仕事に心を通わせているのか、それとも、心を閉ざして時間を売っているだけなのかが、正直に表れる。あなたが感じた、あのかすかな引っかかりは、社員が放つ「逃避の空気」を、無意識に、感じ取っていたのかもしれないのです。
ー「逃げるように帰る」空気に潜む、3つの兆候
社員が、逃避の空気をまとって帰るとき、その裏には、何が潜んでいるのか。三つの兆候をお伝えします。
1つ目の兆候は、「仕事に、意味を感じられていない」ことです。自分の仕事が、誰の役に立っているのか、実感できない。ただ、言われたことを、こなすだけ。意味を見いだせない仕事は、一刻も早く終わらせたい苦役になる。だから、定時と同時に、逃げ出したくなるのです。
2つ目の兆候は、「職場に、居心地の良さがない」ことです。人間関係がぎすぎすしている。社長や上司の顔色をうかがう空気が、重い。この場所にいること自体が、ストレスになっている。だから、一秒でも早く、この空気から、抜け出したくなる。逃げ帰る足取りは、職場の空気の重さの、裏返しなのです。
3つ目の兆候は、「頑張っても、報われない」ことです。少し残って良い仕事をしても、認められない。むしろ、要領よく定時で帰る人と、同じ扱い。それなら、頑張るだけ損だ、と。報われない空気が、社員から、もう一歩踏み込もうという気持ちを、奪っていくのです。
ー社員の帰り際の空気は、日々の空気の集大成
社員が、充実感の中で帰るか、逃げるように帰るかを分けるのは、労働時間の長さではなく、その社員が日々、どんな空気の中で働いているか、その集大成です。社員が、仕事に意味を感じられる空気があるか。職場に、居心地の良さがあるか。頑張りが、きちんと報われる空気があるか。逃げるように帰る空気は、日々の仕事の中で、意味も、居心地も、報われる実感も、失われているサインです。日々の空気を、充実したものに整えてはじめて、社員は、逃げるのではなく、満たされて、帰っていくようになります。
ー「早く帰らせる」より、「満たして帰す」を考える
では、経営者は、何を変えればいいのか。単に労働時間を管理することではありません。社員が、満たされて帰れる空気を、つくることです。まず、社員の仕事が、誰の役に立っているのかを、伝える。「あなたの仕事が、お客様に喜ばれている」と、意味を届ける。次に、職場の空気そのものを、居心地の良いものに整える。顔色をうかがう重さを取り除き、安心して働ける空気をつくる。そして、良い仕事を、時間の長短ではなく、その中身で、きちんと認める。──こうして日々の空気を整え始めたあなたは、社員が「逃げ帰る」会社を、「満たされて帰る」会社へと、静かに変え始めているのです。
ーあなたの社員は、満たされて帰っていますか、逃げて帰っていますか
最後に、お伝えしたいことがあります。社員が定時で帰ること自体には、良いも悪いもなく、本当に大切なのは、その社員が、どんな空気をまとって、帰っていくかだということです。明日、終業の時間に、社員が帰っていく姿を、少しだけ、注意して見てみてください。その表情は、満ち足りているでしょうか。それとも、解放されたように、逃げ出しているでしょうか。足取りは、軽やかでしょうか。それとも、この場所から早く抜け出したい、という空気を、放っていないでしょうか。もし、後者を感じたなら、それは、あなたが日々の空気を、見つめ直すべき合図です。
このコラムを読み終えたあなたは、次に社員が帰っていく光景を、これまでとは違う目で、見つめるはずです。行動ではなく、その空気を。そして、社員が満たされて帰れるよう、日々の空気を整えにいく自分の姿が、もう浮かんでいるのではないでしょうか。早く帰らせるのではなく、満たして帰す。それが、社員の心が仕事から離れていくのを防ぐ、最も確実で、最も静かな一手なのです。
ー勝田耕司
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