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ヒットの法則

  商品リニューアル 古崎千穂 SPECIAL
古崎千穂 SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング 代表 古崎千穂

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

夏から秋へ、今まさにリニューアルのシーズンです。例えば芸能の世界では、平成を牽引してきたアーティストの引退があったり、視聴率を稼ぎ出した人気テレビドラマの最終回を迎えています。

今季のテレビドラマで話題になっている朝のNHK連続テレビ小説「半分、青い。」という作品があります。1990年代に大ヒットしたテレビドラマ「ロングバケーション」をはじめ、ラブストーリーの神様という異名をもつ脚本家・北川悦吏子さんが渾身で手がけています。今週土曜日で最終回となります。このドラマは、個人的な好き嫌いは別にして、結果的には高視聴率となりました。ざっくり言えば、日本全国のお茶の間でよく観られた(受け入れられた)作品だった、ということになります。

ヒットメーカー・北川悦吏子さんが書いた「半分、青い。」はオリジナルの物語でありフィクションです。ゼロから造形した登場人物たちの人生が描かれています。この作品についてのインタビューで北川氏は、例えば「このシーンで、いちばん強烈な、心に残る、刺さる言葉を選ぶこと」をいつも考えていると語っています。また「半分、青い。」というタイトルを思いついた時、直感的に「これは、いける!」。そう心が踊ったと言っています。この「いける」というのは、これでドラマが書ける、という意味と、「あたる」「ヒットする」、つまり「売れる」というヒットメーカー独特の感覚だと想像できます。

さらに、ヒロインの相手役をつとめる俳優は、デビューしたばかりの頃「自分の感情、喜怒哀楽でしか演技できなかった」。しかし、経験を積んだ今「脚本を読んだ時に、登場人物の気持ちを“こんな風に表現したらきっと観ている人に伝わるんだろうな”ということをいつも考えている」と話していました。作り手と演じ手が、心ひとつに「観ている人にどうしたら伝えることができるか、伝わるか」をいちばんに考えて作った作品だ、ということを語っています。ヒットするべくしてヒットしたのです。

わたくし自身も90年代のはじめ脚本家を目指し、ある時期に熱中してドラマツルギーを独学していました。そんな時に出会ったある著名脚本家の放った一言が忘れられません。それは「いいか、脚本はプロットだとかコンストラクションだとかよく言うよな。しかし、どれも違う。ドラマライターの仕事は、お客さんが次に観たい“絵”を描くことに尽きる。書くのは、お客が次に観たい絵、これだよ」という言葉です。

テレビドラマが「受け入れられる」ということは「受け入れた顧客心理」がある、ということです。「惹かれる」や「魅力がある」、「好まれる」または「嫌われない」要素があるのです。ふだん何気なく観ているテレビドラマの世界ですが、伝統芸能として考えれば、形を変えて生き残ってきた歴史があります。時代を超えて、人の心を動かしつづけることができたゆえに、生き残ってきたのです。

枝葉をきりおとしざっくりと表現すれば、ドラマの原型は「Boy meets Girl」です。男の子と女の子が出会う物語、です。ギリシャ悲劇、シェークスピアの時代から、その原点は変わっていません。舞台となる天・地・人(5W1H)をリニューアルし続けて、今の時代に現存してきたのです。

リニューアルによるヒットメーキング、という視点で考えれば、ドラマの世界も、商品サービスを提供し続けるビジネスの世界も同じ土俵です。翻って、自社においてはいかがでしょうか。「生活者はドラマの何に、どこの部分に惹かれているのだろうか」という視点で俯瞰できているでしょうか? 今、この時代にこの時、支持され、熱狂されているヒト、モノ、コトに対して、その秘密は何か?、魅力は何なのか? 、そんな風に、研究できる仕組みがありますでしょうか?大げさなことではなく、普段からそういう話が当たり前のようにできる「現場」であるか、ということです。

そもそもの自社商品サービスに対して、

  • 個人的「好き嫌い」や「興味・関心」を含めて、自分事として夢中になったり熱中したりし「なぜ、たくさんの人が心動かされているのか」「なぜ、たくさんの人が集まっているのか」と点検する仕組みになっているか
  • 雑談や発言が生まれる、ユニークでリラックスしている雰囲気か。チームに気持ちの余裕が生まれる、余白ができる「仕組み」になっているか
  • 「これは“売れる(ヒットする)”匂いがするね!」といった言葉が、自然にあふれ出す現場になっているか。その場に社長はじめ、関わっている幹部やスタッフの笑顔があるかどうか。
  • アクションに落とし込み「売る」仕組みになっているか

 

外部から連れてきたコンサルティングファームや広告代理店、制作会社ではなくて、御社のプロジェクトチームそのものが、上記のような状態であるかどうか。こうした力こそがヒットを生み出す「秘宝」です。あっさりとその秘宝を手渡してしまってはいけません。

コンサルティングの現場では、日々さまざまな問題が生じ方向を決めてゆくことが求められます。先日は介護サービスを提供する会社から相談を受けました。現状では大きく分けると、介護サービスには公的介護保険サービスと、それではカバーできない自費でのサービスがあります。相談とは、公的介護保険サービスを受けているお客様からのクレームについてでした。

入社5年目のスタッフが介護保険サービスを受けているご本人に「自費サービス」についてご案内したところ、お客様が激怒された、ということです。

スタッフの話では「その方と、その方のご家族が喜んでくれると思ってのアドバイスだった」と言います。一方、サービスの受け手は「ありがたいけれど、実はサービスが終わったら、サッと帰ってほしい。入れ替わり立ち替わりヘルパーが出入りしていて、気が休まることがない。これ以上の人の出入りは精神的苦痛だ」とおっしゃったのです。家に家族以外の他人が入り始めて半年という慣れない環境下の出来事です。

どのような商品サービスでも「お客様が求めていること」「満足してもらえること」を発見することは非常にむずかしいです。理由は、わたくしたちはひとり一人がまったく異なる人間であるからです。人のあり方や心理は、己の想像力を超えています。だからこそ、チーム一丸となり情報を共有したり、現場でのひとり一人のイレギュラーな顧客心理を研究することが求められています。

今後テクノロジーが進化すれば、顧客情報の集積、解析、そして「パターン化」や「フレーム化」が簡素化されてゆきます。ビジネスの時短にもつながります。そして、その先にある顧客の「ほんとうの願い」「願望」を編集していく力が要請されます。その時に力を発揮できる会社となるのか、テクノロジーに淘汰されてしまう企業になるのか。これから社長がどういうアクションをとっていくかにかかっています。

ヒットとはカァーっと飛ばして終わるものではありません。むしろ、連綿と続く「編みもの」です。ひとつの考え方を通貫させ、さまざまな糸を組み合わせて編んでゆくイメージです。手で編む時期も、オートメーションで編む時期も、手で結ぼれを直し調えてゆく時もあるでしょう。変わらないのは、時代時代のお客様の願望、希求を形にしてゆくことです。

そして「見たことのない世界。だけど、とっても欲しかった望んでいた世界」を提示して人の心を動かすことです。果たして商品サービスを通して、深い部分で本質的に豊かになってもらうことです。ヒットは、商品サービスをしっかりと編み上げてゆく「仕組み」から生まれます。ヒットとは「編むもの」です。商品リニューアルを繰り返しながら、編み上げる世界で未来を豊かにしてゆくことこそ、わたくしたち企業の存在意義であり使命なのです。

 

【社長直轄】商品リニューアルの着眼点
古崎千穂

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング代表

古崎千穂

執筆者のWebサイトはこちら https://rbnc.jp/

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