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事業ステージを上げる“商品トリオ”のつくり方

  商品リニューアル 古崎千穂 SPECIAL
古崎千穂 SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング 代表 古崎千穂

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

東日本大震災から8年となりました。手をあわせると同時に、今尚お辛い思いをされている方々が少しでも心が安らぎますようお祈り申し上げます。そして、いつもお時間をつくって当コラムをお読みくださってありがとうございます。いのちある限り、商品リニューアルコンサルティングを通してお役に立てるよう精進してまいります。あらためて襟を正しております。さて、先日関東地方では「春一番」が吹きました。春とはいえども寒暖の差が激しく朝夕はまだまだ冷んやりとしています。

この時期、小さな子を持つ母親であれば「子供のはおりもの」を一枚カバンに入れていますし、シニアの方であればスカーフをプラスしているでしょう。男性の方では薄手のジャケットを奥様が用意されているかもしれません。春といえども、街なかでは「寒い」とか「汗ばむ」とか、気温に関する会話が絶えません。面白いもので、春夏秋冬かならず人は「暑い」「寒い」と話題にあがって、気温に対して非常にセンシティブになります。

「衣食住」という言葉があります。わたくしがこの言葉と出会ったのは、中学1年生の家庭科の授業です。衣と食と住という三つの単語を組み合わせシンプルさ、しかしフワッと世界が広がってゆくようで衝撃を覚えました。1980年代で、当時はSONYのウォークマンが大ブーム。コンパクトディスク黎明期です。広告業界でいえば「おいしい生活」で百貨店が文化を牽引していました。市場はまだ発展途上、明るい空気感に満ちていて「衣食住」は平均的。どこの家庭もまだまだ消費への夢、意欲、希望があふれていました。

真逆なのが今の日本です。すばらしい商品、品揃え、マーケット超成熟の時代。生活者の周辺には「モノ」や「情報」はいっぱいで溢れています。しかし買い手となる人間は減っていて供給過多。生活者は衣食住にそこそこ満足はし、買い物に疲れ気味です。生活者の価値観は「多様性」から進化し、さらなる枝葉を広げ「多岐」に渡っています。つまり、面から点へとシフトチェンジし、価値観の枝葉を広げています。今一度「衣食住」という言葉の定義をリニューアルする節目なのです。

衣食住からライフエンタの時代へ

そもそも「衣食住」とは何でしょうか。デジタル大辞泉によれば「1. 衣服と食物と住居。生活をしていく基礎。2.暮らしを立てていくこと。暮らし向き。生計」。デジタル大辞林 第3版は「着ることと食べることと住むこと。衣服と食物と住居。生活の基本的な要件」と書いてあります。一歩踏み込んで商品リニューアルの視点で考えてみる時、この「順番」に注目します。なぜ「衣食住」なのか。「住衣食」でも「食住衣」でもなく、必ず「衣」が先なのはなぜか。

その根っこは、冒頭でもお伝えしているように、季節変化に対するわたくしたちのセンシティブな言動にあらわれています。かつてわたくしが病院で産んだ赤子も、先ずは産湯につけていただき、手早くふかふかのタオルにくるんでもらいました。体温を維持し、授乳はその後です。生命維持に先ず必要不可欠なのが「衣」なのです。体感温度=生命存続のセンサーなのです。A・マズローの欲求五段階説を持ち出さずとも、衣食住のステップが、わたくしたちにとっての根源的な欲求、必需の順番であることがわかります。

8年前の地震の時、わたくしは東京にいてクライアント企業と打ち合わせをしていました。揺れが大きくおさまらなかったので避難することになりました。先ず手にしたのは「コート」です。次に「水」とか「お菓子」といったことに意識がゆきました。瞬時「衣食住」という言葉を皮膚感覚で理解した体験でした。8年経ち、いくつもの自然災害を乗り越えながら、比較的穏やかな時間が続いている今、この順番はどうでしょうか。買い手の気分はどうでしょうか。

 

 

わたくしは可能な限り、生活者のお宅にうかがって「冷蔵庫」を定点チェックさせていただいてます。この商品は高校生がいるご家庭の冷蔵庫で発見しました。この商品は新商品として売り出されている「ミートローフ」です。ミートローフとはひき肉の塊を蒸したり焼いたり燻製にした料理でヨーロッパの伝統料理です。写真の商品はコマーシャル等でおなじみの人気ソーセージ「シャウエッセン」の商品リニューアルです。ソーセージの「お肉」は変えずに、形状を変えて「ミートローフ」という新ジャンルで作り直しています。

これを冷蔵庫に2袋ストックしていた知人の話では「スーパー(オオゼキ)のチラシで見つけて買ってみた」とのことです。「こういうのなかったよね。おもしろいなぁー、と思って」と。塊のミートローフをスライスして食べるのではなく、ダイス状にカットしてチャーハンに使ってみたい、と話してくれました。

さらに「なぜこれを買ったの?」と踏み込んでヒアリングすると「・・・アイデアです。味はだいたい想像がつくのですが、アイデアがあっておもしろいから買いました」と。そして「でもこういう商品は一度開封すると保存しにくいから、使い勝手が悪かったらリピートしないかもしれない」とも。改善の余地あり、むしろ伸び代のある商品リニューアルです。

衣も食も住も満たされている今、たくさんの新商品が出ては消えています。特にスーパーマーケットやコンビニエンスストアで展開している消費財の場合は熾烈です。前出のソーセージというジャンル一つとっても棚を占めるブランドはほぼ飽和状態です。このミートローフたちの気持ちに立てば、いわば「ソーセージに飽きたソーセージたち」なのです。ある意味、自虐的商品リニューアルです。しかしこうした自虐さえもまた個性となって際立ち、生活者は「おもしろい。アイデアがあるね」と胸がときめくのです。市場が飽和している時代には、生活の三大要素から進化して、「衣食住」と「エンターテイメント」が重なっているのです。

「衣と食と住」が生活に必要な3大要素ではなく、「衣と食と住」=「エンターテイメント」そのものになる時代です。商品サービスには、楽しみや喜び、おもしろさに共感してもらえること。生活者の喜怒哀楽を呼び覚ますことが求められています。ゆえに、ライフとエンターテイメントが求められている時代を弊社では“ライフエンタ”の時代とネーミングしております。

ライフエンタ時代の商品構成の考え方はまちがいなく「三色団子」です。「何のための会社なのか。何のための商品サービスなのか」という企業理念、コンセプトを一本通貫させ、まず「定番商品」、そして「新商品」、さらに既存の「リニューアル商品」という商品トリオを意図して仕組んでゆくことです。「意図して」がポイントです

わたくしどもの商品リニューアル式「商品トリオ戦略」では、リニューアル商品こそが「伸びしろ」的存在となります。事業における「余裕・余白」であり、生活者視点でみればリニューアル商品こそエンターテイメントであり「お楽しみ」的価値となります。これらを意図して構築し、自社独自の売上拡大構造をつくってゆくことです。まずはテストマーケティングをし、りぼん式「商品トリオ」を構造的に組んで、新しい時代の「衣食住」をつくってゆくことが、戦わずして勝つ戦略のひとつとなります。

 

【社長直轄】商品リニューアルの着眼点
古崎千穂

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング代表

古崎千穂

執筆者のWebサイトはこちら https://rbnc.jp/

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