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既存商品をヒットさせる新しい世界観のつくり方

  商品リニューアル 古崎千穂 SPECIAL
古崎千穂 SPECIAL

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング 代表 古崎千穂

商品リニューアルに特化した専門コンサルタント。「商品リニューアルこそ、中小企業にとって真の経営戦略である」という信念のもと、商品の「蘇らせ」「再活性化」「新展開」…など、事業戦略にまで高める独自の手法に、多くの経営者から注目を集める第一人者。常にマーケティング目線によって描きだされるリニューアル戦略は、ユニークかつ唯一無二の価値を提供することで定評。1969 年生まれ、日本大学芸術学部文芸学科卒。

「コザキさんの話を聴いてから、他社商品を色々研究してみましたが、最近のヒット商品の多くが商品リニューアルだということがわかりました」というのは、先日お会いした社長の言葉です。わたくしどものセミナー受講後、「新商品の見方」が変わったということで、自社サービスのリニューアル後のイメージを具体化できたというご報告をいただきました。

前職の洋菓子メーカーではシーズンごとに新商品の入れ替え、リニューアル商品の入れ替えがあり、その間にひな祭りやホワイトデー、イースターなどの催事商品のニューリリースを仕組んでゆきます。したがって、通年の商品アイテムの入れ替えは目まぐるしく、入れ替えの7割ほどが商品リニューアルとなっていました。大手企業においては当たり前のように既存商品を「リニューアル」して連続性を持って収益をあげてゆく仕組み、好循環があります。メーカーの製造視点で考えれば、一度設備投資して作った生産ラインを寝かせないで稼働し続けてゆくことが事業における生命線。既存ラインを活かす商品リニューアルは自然であり、理にかなった戦略です。

一般的な常識では、商品開発イコール「新商品によるテコ入れ」です。イケイケだった成長時代、確かにこの考え方は「正解」です。売れなくなってしまった既存商品、誰もがその「価値」を感じなくなった過去のヒット商品を「やめる」。やめて「新商品をつくる」。かつては、この「捨てる」か「戦うか」の選択肢で勝ち抜いてきた時代がありました。二者択一の選択は非常に効率的で、急成長する時代のスピード感です。今現在でも、こうした二者択一のシナリオが存在しています。その背景には「人口減によるマーケット縮小」「世界経済の不安定化」「頻発する天災」など、根底には毎日刻々と伝わってくるニュースが、潜在意識の中にある「不安」や「恐怖」を刺激しています。

しかし、生活者が満ち足りていてお腹がいっぱいの時代、新商品の投入はあっという間に飽きられてゆきます。その繰り返し?というシナリオでは限られた経営資源はあっという間に尽きてゆきます。選択肢の作り方、前提が大きく変わってきたのです。

これからの時代は、わたくしたちの「智慧」や「工夫」という真価を発揮して、進化させてゆく時代です。ゆえに、むしろわたくしどもの商品リニューアルは、そうした視野の狭さ、視点の低い状態からまず脱出することから始まります。社内の誰もが感じなくなってしまった「価値」、例えば「その企業らしさ」とか「魅力」といった「いいとこ探し」です。不安や恐怖ではなく、リラックスした雰囲気の中で「捨てる」でも「新しくつくる」でもない、別次元の「第三の道」をつくるのが商品リニューアルです。

前職である銀座コージーコーナーでは、この2月22日に「ジャンボシュークリーム」をリニューアルしました。商品が誕生して35周年ということで、味わいを二種類にし、パッケージをリニューアル。具体的には、ホイップクリームとカスタードクリームの組み合わせの「ツイン」の味わいが加わって、パッケージは今季のトレンドであるカラフルなカラーを使ってオシャレにしました。非常に基本的な商品リニューアルです。ツインの味わいなら、既にどこの洋菓子メーカーでもリリースしている範囲のものです。パッケージデザインの変更も想定内。「銀座コージーコーナーといえばジャンボシュークリーム」という安定的なブランド力のある商品だからこそできる基本的なリニューアルです。生活者はサプライズを望んでるわけではなくむしろ逆で「いつものお気に入りのジャンシュー(ジャンボシューの愛称)」である安心感が非常に大事なのです。そして「いつものジャンシューがオシャレになったね!」とリピーター層の気持ちが少しアップする楽しいリニューアルが「最適解」なのです。

このように、全国数百店舗以上の直販の販売網を持った企業で、大きくマスを取り込んでゆかなければならない王道の商品リニューアルもあれば、徹底して顧客の顔を絞り込んだ商品リニューアルもあります。むしろ超成熟時代における「商品リニューアル」はだれもが考えつくような常識的な「正解」では、満足してはもらえない、と考えるべきではないでしょうか。この辺りは企業の立ち位置によってさまざまです。が、最近の商品リニューアルの傾向としては、王道のリニューアルに手馴れていた大手企業こそが戦略を改めはじめています。顧客を絞り込み、さらに顧客の「欲求」や「要求」を細分化し、リアルな生活者の暮らしに入り込んで調査し具体化していく。マイクロターゲット向けの商品リニューアルを実施する傾向が強くなっていて、仕組みを転換し始めています。

「商品リニューアル」の目的を具体化する

中小企業においては、まずは王道の商品リニューアルの手法を身につけ収益上昇をスパイラル化していく素地づくりが求められています。わたくどもの「商品リニューアル」とは売れなくなってしまった既存商品の価値を外部視点から俯瞰することでもう一度再発見し、新しい価値と掛け合わせていきます。買い手の立場で考えれば「新商品」であろうが「リニューアル」であろうが「目新しい」状態であれば「新商品」だと考えますし、「リニューアル」と訴求すれば「どこが変わったの?」「何が変わったの?」という視点で商品サービスをチェックします。どちらの定義も曖昧です。わたくしたち生活者の購買行動はロジックで動いているわけではないのです。商品リニューアルの使命は「新しい世界観」を提示することです。生活者=最終消費者が何をもって「新しい世界」とするのか。「新しい」とは何か。そうした定義をしっかりと作り手側が考えてゆく姿勢が求められています。

上の写真は「クナイプ」という入浴剤です。実際に知人からいただいたものです。クナイプシリーズは通常、箱入りのものから個包装のバラ売りまで通年のレギュラー商品があります。主にドラックストアで販売されています。ここ数年、入学・卒業などの春シーズンになると既存商品をリニューアルした季節商品をリリースしています。中身はレギュラー商品の入浴剤で、パッケージが変わります。可愛いクマのパッケージでホワイトスペースがあります(ピンクのパッケージの下部)。これはメッセージを書き込むための余白です。つまり、日常品としても可愛いのですが、さらに手書きメッセージを入れて贈ることができる「プチギフト」にリニューアルしています。もちろんPOPもコンセプトに合わせて「ギフトにどうぞ」といった訴求コピーが書かれています。税込で200円ほどの商品です。受験生を持つママたち、卒園・卒業シーズンのママ友パーティでのお土産、出張などのビジネスシーンでのプチギフトにもぴったりです。

クナイプの商品リニューアルの魅力は「新しい世界観」をわたくしたちに提供している点です。「入浴剤」という商品の価値は何でしょうか。教科書的な価値は「温浴効果による健康維持」です。では「健康」とは何でしょうか? 本当の健康とは「心のリラックス」があってこそなのではないか。クナイプの使命は「身体を温める」だけでなく「心も温めること」。こうして考えた時に、まずは情緒性を高めるために可愛いパッケージにすること。そして人と人とをつないで幸福感を高めるツールになることとし、「メッセージを添えて贈る」ことができる工夫をプラスしました。「身体を温める」という元来もっている既存の価値に「心までも温める」という新しい価値を掛け合わせた結果、「心を温める」を贈ってコミュニーションを楽しもう、深めよう。そんな新しい世界観を提示しています。経営資源が限られたわたくしたち中小企業にとって、商品リニューアルとは経営戦略そのものです。諦めていた商品の「価値」にアイデアと工夫を掛け合わせていくことで、生まれ変わりキラリとした存在感を復活させることができます。恐怖や不安を基盤にした二者択一の「解」ではなく「第三の道」です。

わたくしどもが提供する商品リニューアルとは「不安・恐怖・緊張」といったネガティブ感情とは対極の、リラックスしたオープンな雰囲気の中で醸成され構築される包括的戦略です。非常にクリエイティブでユニークです。「この商品はどうにもならない」と既存商品を捨て去るご決断をする前に、または売上が下がってゆく状況を先送りしないためにも、先ずは経営者ご自身がマーケットに対する「見方」をリニューアルすることがポイントです。さまざまな制約、常識、既成概念から離れ、新しい「眼」を再設定する感覚をつかんでください。

 

【社長直轄】商品リニューアルの着眼点
古崎千穂

商品リニューアルコンサルタント

りぼんコンサルティング代表

古崎千穂

執筆者のWebサイトはこちら https://rbnc.jp/

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