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できる経営者は現場で何を見ているのか

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

「この本、いつも持ち歩いています。これを読んでからまたやる気が出てきて毎日現場を歩くようになりました」―― 新しくご支援することになったクライアント先の会長が、拙著「利益3倍化を実現する「儲かる特別ビジネス」のやり方」をカバンから取り出しながらこう言われました。

非常にありがたいことに相当読み込んでいただいたようで、本にはメモ書きされた付箋が何十枚も貼ってあり、中も書き込みだらけで、いい感じでボロボロになっていました(笑)。

その会長はもうとっくに引退されていてもおかしくないご年齢であり、最近はご家庭の事情もあって夕方までには帰宅されていたらしいのですが、拙著をお読みいただきウズウズして「やれることから実行に移そう!」と動き出されたとのこと。

拙著の内容が実際の行動につながったと聞き、ホテルにこもって一冊書き上げた甲斐があったととても嬉しくなりましたが、なによりさすが叩き上げの経営者だと感じたことは、その会長が久しぶりに現場を歩いてみると、いままで気づかなかった重要な事業の問題点がいくつも見えてきたということでした。

「できる経営者ほど現場を重視する」ということはよく言われていることですが、大事なことは現場に出ること自体にあるのではなく、現場で何を見るかということです。

これは結論から言いますと、少々変な言い方にはなりますが、普通の経営者は「見えているもの」を見るのに対し、できる経営者ほど「見えないもの」を見る、という違いがあります。

「見えないものを見る」ってエスパーか!と思われるかもしれませんが、そういうことではありません。別の表現で言えば、できる経営者ほど「見えているものをそのまま信じない」ということです。

「見えているものを見る」というのは、まともな経営者ならだれでもやっています。例えば、工場の現場を見て非効率なやり方や不具合などに気づいたら、それを修正すべく責任者に指示を出す、といったことです。これはこれで必要なことであり、悪いことではありません。

しかし、できる経営者は目の前に見えていることの「その奥」を見に行きます。たとえば、モノの置き方が前より乱れているとしたら、それを片付けるように指示を出すのではなく、「なぜ乱れだしたのか?」とその変化の根本原因をさぐる思考に入るということです。

なぜ片付けができないのか。なぜ不良が増えているのか。なぜ残業が増えているのか。社員の表情がどことなく硬く見えるのはなぜか…。

これは名医の思考パターンと似ています。藪医者は出ている症状を抑えにかかるのに対して、名医はその根本的な原因を探ろうとするという違いです。

また、「見えないものをみる」というのは話を聞くときも同じことで、できる経営者は社員の意見を聞いたりするときに、単に彼らの言うことに耳を傾けるのではなく、「彼らの言っていないこと」にフォーカスします。つまり「聞こえないことを聞く」という聞き方です。

たとえば営業マンたちに顧客の評判について聞いたとしましょう。その時に彼らからいい報告ばかりが出てきたとしたら、洞察力のある経営者であれば「なぜ彼らから悪い報告が出てこないのだろう」と考え、さらにつっこんだ質問をしていきます。

あるいはある社員が会社を辞めたいといってきたら、その理由の説明を聞くだけでなく、彼の説明に「出てきていないこと」は何かと探っていきます。こういった場合に限らず、人は思っていることをすべて正直に話すわけではありません。あるいは正直に話していたとしても、自分が思っていることに本人がすべて気づいているとも限らないわけです。ですから、彼らが心の奥に何を持っているかを見る聞き方が求められます。

これまた変な表現にはなりますが、いうなれば「見ているようで見ていない。聞いているようで聞いていない」、そして「見ていないようで見ている。聞いていないようで聞いている」という見方、聞き方をする、ということです。

この時、見たり聞いたりすべきなのは彼らが発する言葉だけではありません。彼らの表情やしぐさ、そして声のトーンや調子なども重要な情報となります。言葉ではごまかせてもそういった様々な情報から、「彼らが言っていないこと」や「彼らも気づいていないこと」を探りにいくのです。

冒頭の会長も、現場で見たある事象から類推して現状を深掘りしていったところ、現場社員のコスト意識が著しく下がっていることと、それが引き起っている根本原因に気づかれ、いま手を打っていかれているとのことでした。

また時を同じくして、同社の社長も社員から上がってくる自社商品の評価に疑問に感じ、競合商品をよく知るユーザーに自らヒアリングをかけたところ、自社商品が様々な点で負けている事実を確認できたとのことでした。

このように、結果を出す経営者は、「一を聞いて(その裏にある)十を知る」ということを実践しています。そしてこれは、実際に現場に出て自分の目や耳で情報に触れなければ難しいことです。優秀な刑事が真相解明のために何度も現場を訪れるように、ブレークスルーのヒントがさまざまなところに転がっているはずです。

昨今はコロナウィルスの影響や働き方改革の流れもあり、テレワークの導入も進み、人が対面で直接会わないコミュニケーションの形もすすんでいます。

もちろん、この流れを否定するものではありませんし、ある意味大きなチャンスでもあると思っています。いままで遠くてあまり訪問できなかった顧客とのコミュニケーションを増やせたり、フルタイムで働けない人材を活用する手立てもできてきます。当社でも個別相談会やセミナーをオンラインで実施できるよう準備を進めているところです。

しかし、です。遠隔なコミュニケーションがとりやすいこれからの時代こそ、実際にこの目で見て聞くという行動の大切さを今一度再認識すべきときです。直接人とあってはじめて拾える情報というものがあります。見えないものを感じ取る能力が人にはあるのです。

目の前に見えている現象の、その奥にある大切なものに目を向けていきましょう。

 

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