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自社の営業マンが「顧客に入り込んではいけない」理由とは

SPECIAL

キラーサービス(特別対応の標準化)コンサルタント

株式会社キラーサービス研究所

代表取締役 

経営革新コンサルタント。イレギュラー対応を標準化することで、ライバル不在で儲かる、「特別ビジネス」をつくりあげる専門家。倒産状態に陥った企業の経営再建から、成長企業の新規事業立ち上げまで、様々なステージにある数多くの企業を支援。イレギュラー対応を仕組みで廻して独自の市場をつくりだす画期的手法に、多くの経営者から絶大な評価を集める注目のコンサルタント。

「うちの営業の連中はとにかく忙しそうなんですけど、肝心の売上が伸び悩んでいまして…」── 先日、個別相談にお越しになったF社長からのご相談です。

自社の営業マンは顧客からとても頼りにされ、しっかりと顧客に入り込んでいる様子なのだが、肝心のクロージングが弱いのか、売上金額としては横ばいが続いており、新規獲得も進んでいないとのこと。

「それは営業の問題ではない可能性大ですね」とお答えすると、「え? 営業の問題じゃなかったらなんなんですか…?」とF社長は続きを待たれました。


 

「顧客に入り込んでいる」── 社長はこの言葉に気をつける必要があります。実際は「入り込んでいる」のではなく、「入ってこられている」というケースが非常に多いからです。

「入ってこられている」というのは、本当は自社の営業マンは顧客のためにそこまでする必要がないのに、タダでいいように使われている、という意味です。つまり仕事の範囲の線引きを超えられてしまっているのです。

顧客に対するサービスには線引きが必要です。これは店舗経営をしていたらわかりやすいでしょう。あなたが経営する店舗の店員が、顧客からちょっと相談があると言われて外出したり、配達や出前はやっていないのに頼まれたからといって配達に出たりしたら、これはもうおかしなことになってしまいます。

しかしながら、これが外勤の営業マンとなったとたんに、その線引きがあいまいになります。そして、「顧客のために力になりたい」と思っている真面目な営業マンほど顧客に振り回されることになります。

経営者がこの現象を「受注が取れれば問題ない」と考えてしまうのは非常に危険です。というのも、営業マンが「顧客に入り込んで」受注を取るというのは大きな弊害がある場合が多いからです。

まずひとつに、「再現性がない」という問題があります。顧客の要望をあれやこれやと聞いて受注を取るというのは、器用な人間にはできるかもしれませんが、全員が全員できることではありません。

そうなると、当然ながら売れる人間と売れない人間が出てしまいます。しかも、売れる人間にとっても、それが他の顧客にも通用するかというと非常に怪しいものとなり、結果的に「忙しいけど受注につながらない」ということが常態化します。

いろんなことをやって顧客に尽くした「ご褒美」で受注にこぎつけているため、そこに「刺さるストーリー」がありません。顧客の心を動かすストーリーがないため、それを複数の営業マンやマーケティングのコピーなどに応用できないのです。

この「セールスストーリーの欠如」という現象は営業マン、あるいは営業部の問題ではありません。セールスストーリーを作り込むという企業姿勢の欠如、つまり経営の問題です。

これもよくある現象ですが、どんなストーリーで見込み客に刺さるかということを突き詰めずに商品を開発するケースが多々あります。これは「いいものをつくれば売れる」という幻想からきているものですが、どんなにモノが良くても売れるストーリーがないものをつくってしまうと後々後悔することになります。

そうではなく、商品やサービスを開発する段階で経営戦略としてしっかりセールスストーリーをもっておけば、営業やマーケティングは非常にシンプルになります。顧客に尽くしたあげくのご褒美としての受注ではなく、本当にそれが欲しいというお客様が集まることになります。この状態をつくらなければ、事業が成長軌道に乗ることはありません。

また、営業が「顧客に入り込んで」いろいろとお世話をすることの別の弊害としては、「本来売り物となりうるノウハウが駄々モレする」という可能性があります。

これは営業マンに限らず、顧客に接するすべての社員やスタッフに共通することですが、自社が持つノウハウを体系化し、かつそれをどのような形態で顧客に提供するかが決まっていないために、個々の社員から顧客に対してノウハウがどんどん流出するのです。

「それは顧客の役に立つのだからいいじゃないか…」と思われるかもしれませんが、自社のノウハウを誰にどのような形態で提供するかを会社側が管理していないとすれば、ある顧客にはそれが提供され、別の顧客にはそのノウハウの存在すら認知されないといった、非常にムラがありもったいない現象が起きてしまうことになります

また、本来はそういった自社のノウハウを標準化して体系化(パッケージ化)することで、有償で提供する、あるいは無償で提供して別の有料商品サービスの販売につなげる、ということが十分可能なところを、個々の社員の判断でバラバラに流出させることになるのです。これでは社員は単なる「お世話役」であり、ビジネスをしているとは到底言えない状態となります。

社員が個々の判断で「顧客に入り込もう」「顧客の役に立とう」とすればするほど動きがバラバラになり、体系化されたビジネスとは程遠くなります。

一方で、どのようなストーリーで営業やマーケティングを仕掛けるか、また無形のノウハウはどのような形で顧客に届けるか、それがあらかじめ経営側でしっかり取り決めていれば、それを欲しいと思う見込み客にしっかり届けることができ、かつ自社のビジネスの最大化にもつながります。

顧客のために動くことは当たり前です。それを個々の社員がバラバラにやっていては、いつまでたっても「その人」のできる範囲でしか顧客貢献できません。本当に顧客の役に立ちたければ、「事業としての強み」をデザインする必要があります。

御社は場当たり的に顧客にサービスを提供していませんか? そのサービスを必要としている見込み客のために、その体系化と見える化はできていますか?

 

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