引き際の美学と器の使い方 | 日本コンサルティング推進機構

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引き際の美学と器の使い方

SPECIAL

マインドシェアNo.1ブランドコンサルタント

株式会社アトリオン

代表取締役 

国連が提唱する「持続可能な開発目標」SDGsのフレームワークを活用し、顧客にも社員からも永く愛される「マインドシェアNo.1ブランド」確立のための社内体制を構築する。会社の哲学、商品・サービスの優位性を明確にし、社員の意欲を引き出して、顧客のファン化を後押しするスペシャリスト。顧客と社員の双方の満足を循環させるES-CSチェーンを土台に、競合との圧倒的な差別化をはかり、会社のステージを上げたい企業から絶大な支持を集めている。

幼なじみの経営者から連絡があり、事業を譲ることにした、と。ご両親が始めたファミリービジネスを継承し、社長になって二十年近く。自分の子供も良い会社に就職し、事業を引き継ぐ気持ちもないとのことで、第三者承継を希望した。仲介する機関にお願いしたところ、いくつもの候補者が手を挙げてくれて、そのなかから選ぶことができたというお話しでした。

会って、コロナ禍の影響なのかと尋ねたら、そうではなく、以前から考えてきたこと、と笑って言います。ネガティブな感情は全くうかがえず、むしろ重荷をおろしてすっきりしたという表情。こちらもちょっとほっとして、幼なじみの潔い性格を思い出しました。

国や金融機関の後押しもあって、子供や親族に承継者がいないという会社に対して、第三者承継を薦める施策が展開されています。これから創業しようという個人が承継を希望する場合もあるし、既にある事業所や会社がM&Aというかたちで承継する場合もあります。 

いずれもまったくゼロから事業をスタートするより、資産や顧客があるだけスムーズ。ただし、譲る側の経営がある程度よい状態でないと、欲しいという人も会社も出てきません。

これは子供や従業員に承継させる場合も同じでしょう。中古品を買う時に、どんな状態か何度も確認するのと同じで、事業を承継するときも経営状況が良くないと、いくらファミリービジネスでも「継いで苦労するのはイヤ」と思うのは人情です。

さて、今回、幼なじみと会って驚いたのは、「自分は何らかのかたちで会社に関与するけれど、経営には直接関わらない。承継者が若いので、彼らのやりたいようにやってもらったほうがいい」と言った言葉です。

これからのことは若い世代に託そうという気持ち。その潔さに感銘を受けつつも、複雑な気持ちも沸いてきました。

日本の中小企業経営者のピーク年齢は66歳で、年々高齢化が進んでいます。ファミリービジネスの場合、娘や息子が後継者として家に入っていても、「承継の話しはタブー」とか「その話をすると、お父さんの機嫌が悪くなる」といった具合に、どうにも話題にしにくい状況になっています。そして大切な問題が先送りされる。 

高齢の親や祖父母が亡くなって、のこされた家財の片付けが頭痛の種、という話もよく聞くようになりました。片づけられるときに片づけておかないと、あとに残された人が、とんでもない苦労をします。

片づけができないのは、ただ単に無精ということもありますが、もう一つ、今の自分から離れるのが怖いというのもあるのでしょう。自分が培ってきたものが流れてなくなってしまうような居心地の悪さです。

では、その居心地の悪さを手放すと何が起こるか。

会社の社員や後継者はもっと自由に動き始めるかもしれません。そして新しい発想で、経営者のビジョンを実現してくれるかもしれません。すべて不確実で、起こるかもしれないし、起こらないかもしれない。良くなるかもしれないし、もっと悪い状態になるかもしれない。だから決断できない。

よく人の「器」という言い方をします。「器」はイレモノです。そして、その器が大きいほど、たくさんの人がそこに入って、自由に動ける。同時に「器」には外部との境界線があって、内部はある一定の法則に沿って動いています。

手放してはいけないのは、天や良心に照らして正しいビジョンでしょう。そしてそのビジョンに則って器を運用し、その中で人に自由に動いてもらう。人が成熟していなければ、従うべきルールを明文化し、成熟してくればルールの改変も委ねてみる。

それは何も引き際だから考えるべきことではなく、常に考えなければいけないことでしょう。

幼なじみとの短い会話と、素晴らしい経営者に出会った過去の記憶から、そんなイメージにたどり着きました。

みなさんはいかがでしょうか。

現実のその先にある未来を見越して、今から準備を始めているでしょうか。

 

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