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管理人さんと、悲喜こもごも(その3)

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

管理人さんと、悲喜こもごも(その2)からつづく。

 

その後いろいろありましたが、築30年以上の物件2軒でマンションリノベーションが完成、やっとお披露目ができる段階になりました。

工期が延び延びになってしまい、棟内の皆さんには散々迷惑をかけてしまいました。手がけた2部屋共に買取物件で引き渡し期限はありませんでしたので、まずはお詫びとお礼をお伝えする機会も兼ねて「棟内限定の事前見学会」を行うことにしました。2棟の管理人さんおふたりにはさらにそれに先立って「管理人さん限定内覧会」をしました。たまに現場を覗きにきてくださっていたおふたりでしたので、とても喜んで下さいました。現場の部屋の前の掃除はこまめにしてもらっていましたし、完成間近になると廊下側の窓に管理人さんの影が見え隠れすることが頻繁になってきていました。さぞかし中も気になっておられたのだと思います。

 

理事長考(人格者から輪番制へ)

 

2軒目のマンションでは大規模修繕にかかわる問題がくすぶっており、我々のような業者に厳しくあたられる住民の方もおられました。そんな中、理事長さんには色々とお気遣いいただきました。棟内の住民の方向けの「棟内限定の事前見学会」の際にも「特定の業者の営業行為に許可を出すな」と言った声もあったようです。開催して変なことになり炎上してもいけないと思い、理事長に開催の是非を相談しました。

理事長は「ご覧になられたい方も多くいらっしゃるので開催してください。反対している人もいることは聞いていますので、あなたがたに矛先が向かないように掲示するご案内に私が一筆書き添えますから」と言われました。その後、案内を作って一筆書いていただいてから掲示板に貼り出しました。

 

↑理事長に一筆書き添えていただいた「棟内限定の事前見学会」の案内

 

最初は正直言って、お施主様意外の大勢の人たちにひとつひとつお伺いを立てて進めるのは「胃がいたい」と思っていました。しかし、こうして理解者がひとりずつ増えていくのは嬉しいもので、何とも救われる思いでした。現場の職人さんも最初は「周りに気を遣いながらの工事は、新築現場より気疲れするー」と言われたりしていましたが、ホールに貼り出した理事長直筆入りの「事前見学会」案内の張り紙を見られてだいぶ緊張が解けたようでした。

「事前見学会」は理事長のお気遣いのおかげで大盛況でした。
リノベーション済みの見学会場の部屋では、たくさんの方にゆっくりくつろいでいただきました。三々五々お友達を誘ってきて出たり入ったりされ、さながら「棟内サロン」のような雰囲気になりました。

こうした、マンション管理組合の理事長というポジションは「人格者」の長期政権から「輪番制」の短期持ち回りへ変貌しているようです。世帯数の多いマンモス管理組合もあり、常にマンションの数だけ理事長さんがいらっしゃる訳ですから当然の流れかもしれません。

コンシェルジュ型の管理人さん

 

その後リノベーションをご依頼いただいたお客様のマンションは、比較的築年数が浅い物件でした。

全国区のデベロッパーが手がけたラグジュアリーな設計で、管理人さんのカウンターも高級ホテルのようなデザインでした。いわゆるコンシェルジュ型という形態で、宅配受け取りやクリーニング受付など生活上の付加サービスも提供する形態です。そういうこともあって管理人さんは男性1名・女性2名が交代制で勤務して長時間で切れ目のないサービスを提供する体制でした。

いつものような「管理室」と書いた小さな引き違い窓などはなく、かっこいいオープンカウンターになっています。その代わり、ロッカー室を兼ねた控室が見えにくい場所のドアの向こうにありました。「管理室」にはこれまでもしょっちゅうお邪魔して管理人さんと缶コーヒーで休憩したりして、すっかり馴染みになっていました。管理室はだいたい狭い場所ですが、中に入って座ってしまうと意外と居心地がいい落ち着く広さだったりするのです。また、管理人さんが一日の多くの時間を過ごす場所なので、孫の写真が飾ってあったりして人となりが見えてきたりして面白かったのです。

始めてのコンシェルジュ型でしたので、どんな感じなのか女性の管理人さんに聞いてみました。

 

吉岡「ずっとこのオープンなカウンターにいらっしゃると落ちつかなくないですか?」

管理人さん(女性) 「そうなんです。だから掃除に廻ったり、そっちの部屋(控室)でお茶のんだりはしてますよ」

吉岡「やっぱりそうですか。別にずっとここにいなくてもいいんですね?」

管理人さん(女性) 「そうなんですけど、あまり空けていると文句を言われる方もいらっしゃるので、加減が難しいです」

吉岡 「あー。そうなんですね」

 

なるほど、ホテルのフロントの人と違って掃除をはじめ、出入り業者の対応、管理会社とのやりとりなど何役もこなさないといけませんから。住民の中には「コンシェルジュ付き」というふれこみで購入されているので、ホテルのフロントのように常駐イメージで捉えている方もいらっしゃるようです。

↑ホテルのようなコンシェルジュ型カウンター

 

男性の管理人さんは無口で気難しい感じの方のようでした。 そういえば、以前このマンションに見学会のチラシをポスティングしようとしたときに、防犯カメラで見ていてすぐさま飛び出してこられ、叱られた方でした。

 

吉岡 「すみません。その節は、ポスティングで」

管理人さん(男性) 「ああ。住民の方からゴミ捨てが大変だからチラシを入れさせるなと言われてまして」

吉岡「そうなんですか。でも、居住者全員という事でもないんじゃないんですか?」

管理人さん(男性) 「まあそうですけど、いちおうチラシはお断りということになっています」

 

確かに、立地のいいマンションには「お部屋を売却の際は」という仲介業者や宅配ピザなどの、おびただしい量のチラシが毎日のように入ります。毎日帰宅時にカバンやレジ袋に加えて大量のチラシを持ってエレベーターに乗って、自分の階まで上がっていって玄関の鍵を開けて・・・イヤになるのもわかります。現場にしばらく通っていると、この男性の管理人さんとはカウンターではなく、外で出会うことが多いように感じました。だいぶ時間が経って仲良くなってから、この方にも同じようにコンシェルジュカウンターの居心地について尋ねてみました。そうすると、

 

管理人さん(男性) 「あそこにいるとクレーム受付が多いんですよ。男は僕だけで勤務時間が長いのでだいたい僕が座ってる時に来るんですわ。あまりあそこには居たくないです」

吉岡「そうですか。そういうお役目になってらっしゃるのですね。それは大変ですね」

 

↑管理人さんといつも出会うスポットは何故か決まっていたりするのです

 

このマンションでは、これまで経験した物件とは違って管理組合や理事長さんの影は薄く管理会社が取り仕切っているようでした。工事予定の案内などの掲示は美観を損ねるということで厳禁、個別に全戸ポスティングするようにという指示でした。(見学会のポスティングはあんなにダメって言ってたのに!)完成近くなって、これまでの物件と同様に見込みのお客様に向けた「完成見学会」や棟内の方向けの「お披露目会」について男性の管理人さんに相談したところ、このようなお話を聞いたのです。

 

管理人さん(男性) 「棟内に不特定多数は出入りするイベントは控えて欲しいとの事です。棟内のお披露目に関してもできれば行わないで欲しいです」

吉岡「え。もちろんお施主様からは了承いただいています。それは理事会の意向ですか?」

管理人さん(男性)「いえ。管理会社からです」

吉岡 「そうですか。でも、そのあたりは理事会(管理組合)でのご判断になるのではありませんか?」

管理人さん(男性) 「ええ。まあ」「これまでもお部屋売却の際のオープンハウスのみ例外的にやってもらっています。でも玄関ホールなどでの看板設置はなしという条件です」

 

「えらくやりにくいマンションやな」と思いましたが、何となくおかしい。こちらのマンションの理事長さんは完全に『持ち回り型』の方でしたが、コンタクトを取ってみました。 そうすると理事長さんは「お披露目会やってください。見に行きます!来週理事会があるので確認しておきますので」とのことで、どうも管理人さんとはトーンが違っています。

結局、理事会にはかってもらって「完成見学会」も「お披露目会」も開催OKになりました。(ただし、敷地内の案内の掲示や看板設置はやはり不可でした) 今ひとつ引っかかるので、後にもう一度女性の管理人さんにどうして管理会社が見学会をさせないようにしているのか聞いてみました。

 

管理人さん(女性)「あー。あのね。ここの管理会社は大手さんだから管理物件からのリフォーム受注のノルマがあるらしいのね。私たちは関係ないんですけど、男性はあるみたい」「男の人は大変だよねー」

そうして雑談から新事実が判明しました。

 

なるほど。そりゃ、嫌がるわけです。まだ、築浅の高級物件に別の業者が入ってきて、こともあろうに全部ぶっ壊してフルリノベーション工事をやった上にお披露目をするなんて。管理会社の担当者としては、願わくばやめてほしい話です。男性の管理人さんは言えなかったのですね。

管理人さんも本当、立場いろいろです。

 

マンションの中の小宇宙(階層とヒエラルキー)

 

複数のマンションでリノベーションの工事を進めながら気づいたことが他にもありました。 マンション物件にはそれぞれ固有の築年数やグレード感みたいなものがありますが、同じ建物の中でも何階の部屋なのか?によっての住民の違いのようなものが確かにあるのです。

一般的にある程度の高層の建物になりますと、1フロア当たりの部屋数が3段階くらいになっている事が多いです。例えば、2〜5階は2LDK中心で8戸、6〜11階は3LDK中心で6戸、12〜13階は4LDK4戸のような構成です。

2LDK層には女性おひとりさま、3LDK層には子供のいる家庭、大きな部屋の多い最上層には意外と週末住宅としていて、普段別の場所で生活しているような方が多かったりします。投資運用も兼ねて、迷わず好立地の最上階をパッと買う人たちです。

そうだとすると何が起こるのかと言いますと、同じ物件の中に全く違った生活感や事情の世帯が層を成して暮らすようにになるということです。そういった感性の違った人のコミュニティで同じ玄関・エレベーターを利用して日常の生活をするので、価値観の違いによるトラブルなどが管理人さんに持ち込まれがちな環境になりやすいのです。

工事の際にご挨拶にまわっていても、同じ階の両隣の人のことを「全く知らない」と言われる方も珍しくはありませんでしたから、男性の管理人さんからお話を聞いても容易に想像がつきました。また、「そもそもご近所との付き合いなどが煩わしく、そういうのをしたくないからマンションに住んでる」と言われる方もいらっしゃいました。

十数階、数十戸の物件でも複雑なのですから、大都市圏の巨大タワーマンションなどはさぞかし大変な面はあるのだろうと推察されます。

 

↑三色に色分けされた外壁を持つマンション

 

戸建ての仕事ばかりやっている工務店にとっては、勝手の違う特殊な環境と言えるマンション物件。戸建感覚をそのまま持ち込むとすぐさまクレームになることもありますが、それぞれの環境を理解して接することで開ける道もあります。

 

社長の会社では、マンションリノベーション物件の完成見学会開催されたことありますか?少なからず迷惑をかけてしまう、周りの人たちを味方につける戦略をお持ちでしょうか?

 

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