ビジョンの確かさを他人に映して考えてみる
先日、百戦錬磨の女性経営者とセミナーに登壇する機会がありました。「女性起業家」として全国的にも有名な方々。そこにある共通点を発見しました。それは自分のゴールを見据えているということ。当たり前と言えば当たり前ですが、ゴールありきで事業を行っていて、だからこそ、その構想に多少の時期尚早感を指摘されても、揺るがず進んでいることでした。
経営者が描くゴールあるいはビジョンがユニークであればあるほど、そこに至るまでの道筋は常人には想像しがたいものです。でも、経営者自身には道筋が見えている。だからこそ、前を見て進んでいけるし、「見えていない人」に道筋を説明する労を惜しまない。その達成に他の人の協力が必要であれば、なおさらです。
さて、このセミナーでご一緒したのは、いずれも一定の成功を収めた皆様で、その成功あればこそのオーラと自信が垣間見られます。他方、そのオーラや自信が威圧的でないという点も、成功要因の一つと感じました。
ダイバーシティの時代なので、あまり「女性経営者」と区分して扱いたくはないのですが、でも敢えて女性経営者ならではの特徴的な共通点があったことが記憶に残りました。
それは、ビジネスの起点が、自分のニーズや誰かの困りごとだったということです。つまりビジネスで儲けようというよりも先に、自分を楽しませたり、誰か困っている人を助けたりという気持ちが先立っていたということです。
その実現の手段としてビジネスを選んだのは、必要な人を巻き込み、事業自体を継続させるためにビジネスが最も優れた手段だったということ。たぶんボランティアや慈善事業という道もあったと思われます。お金をもらうよりも、もらわないでやるほうが、よほど楽だし、自分も傷つかないのです。
私は彼女たちの話を引き出す役割で場を共有していたわけですが、コンサルティングビジネスを営む経営者の一人として、深く共感する部分がありました。そして、私自身のゴールは何かを再度自問する機会ともなりました。
コンサルティングビジネスは何かを販売するわけでもなく、カフェのように居場所を提供するものでもない。多少、カウンセラー的な癒しの機能はあるけれど、それは本質ではなく、本質は何かといえば、クライアントの会社のなかにビジネスを進めていくうえで必要な仕組みとマインドセットを構築すること。それは、コンサルタントに頼らずともできることもありますが、頼ったほうが時間の節約になる。特に、環境の変化が激しい時代に、最短距離をとることでコトを有利に運べる可能性は高まります。
私は前職で企業広報やブランディングを支援する仕事をしていましたが、これも同じ種類の仕事でした。すなわち企業内でやろうと思えばなにかはできる。でもプロに任せれば、時間を節約しながら、自分たちでやるよりも高いレベルに到達しやすい。
かたちにならないものは販売しにくいのですが、この4月に持続可能なブランドをテーマに本を出版させていただいたところ、共感の声が耳に届くようになってきました。
私の持論は「ブランドは人を通して伝わる」です。どんなに立派なブランド戦略を立てても、それを担う人がブランドの理念と矛盾する行動をとっていたら、ブランドの一貫性は崩れます。ところが、中小企業の場合は、人材面より先に、ビジネスモデルが優れていなければそもそもの経営が成立しません。人か事業か。この優先順位をほぼ同列に引き上げることができれば、会社のなかに持続可能な軸が生まれるはずです。
…という風に、セミナーでご一緒した3名の女性経営者のビジョンやゴールを何度も反芻しながら、自分の中にある想いを再度整理した、というわけです。
まさに他人は自分の鏡です。特に同じ社会的な位置づけにある人との対話は、意義深い内省を促します。
ぜひ皆さんも、自分の姿を鏡に映すように、他の経営者と対話をしてみてください。そして、自分のビジネスの原点にある想いやゴールを確認してみることをお薦めします。夏休みの宿題に、ぜひどうぞ。
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