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造成地あるある(その5)三角形の土地3題

SPECIAL

住宅・工務店コンサルタント

株式会社 家づくりの玉手箱

代表取締役 

住宅・工務店コンサルタント 。規格住宅を高付加価値化させ、選ばれる工務店となる独自の展開手法「シンボルハウス戦略」を指導する第一人者。
営業マンとして自分が欲しいと思わない住まいをお客様にお勧めする仕事に疑問を持ち、ある工務店でどうしても家を建てたくて転職、鹿児島へ 。15年間で173棟の住まいづくりをすまい手目線で担当。そこから編み出された、選ばれる工務店となる具体戦略を、悩める中小住宅会社ごとに実務指導中。

造成地あるある(その4)希望の広さに分筆2題 からつづく

 

お客様の「土地みたて」を手伝っていると、造成地なのに変な形の土地があるのに気づきました。出来てしまった「できちゃった区画」といったものではないかと思います。そういう土地は、その団地の販売坪単価よりかなり安めに設定され、建築条件などもその区画だけついていない事が多くありました。

いっぽう、開発前の土地取得費や造成費などの実際の「原価」は決して安くはなく、擁壁工事などはむしろ団地内でいちばん金額が上がっていたりします。分譲地開発ではトータルで利益が上がればいいので、個別の区画の利益率には相当ばらつきがあってもノープロブレムなのです。いち早く「完売」することが重要なのです。

以上のように「できちゃった区画」は新規分譲地の「お買い得商品」なのですが、往々にして売れ残ります。なぜかというと、住宅の規格プランが入らないからです。通常の発想では、家のプラン以前に自動車の駐車スペースが成り立たないケースもあったりしますので、住宅会社は敬遠することが多い訳です。

今回は「できちゃった区画」の中でも極めて「難所」である反面「お買い得感」のあった「三角の土地」のケースを3題紹介します。

 

 

 

①三角定規のような造成地にて

 

初めてこの土地を見た時は目を疑いました。

三角定規の細いほうのような鋭角の角を持つ土地でした。しかも、長い2辺は垂直擁壁が施工されており、造成原価的にもえらくかかっているのに販売価格は安いのでした。鹿児島のシンケンは「変形地でもいい家を設計する」と評判でしたので、不動産屋さんが「できちゃった区画」をピンポイントで勧めてくるようになっていました。まさに「変形地」が「変形地」を呼ぶという状態になっていたのです。

 

↑問題の三角の土地(これから測量作業を始めるところですね)

 

↑鋭角の先っちょは船の先端のようになっています

 

↑さながら映画「タイタニック」のようです(前に進んでいきそうです)

 

↑1段下がった隣地も分譲地(すぐにでも家が建ちそうです)

 

新しく造成された分譲地を選ぶ際に、難しいのは隣地の建物の影響が読みにくいケースです。土地が平坦で広めであったり、建蔽率・容積率などに余裕がある場合などは設計の選択肢が多く、これから建つ住宅の規模や位置の予想が難しくなります。

そういった場合、着工前に建ち上がってもらうと迷わず窓の位置や大きさを確定することができます。この三角定規みたいな土地では、現地測量してプランニング中に相次いで隣接地の建物が着工しました。1段下がっているとはいえ、ちょうど2階部分の窓が計画建物と同じような高さに見えてきそうです。

隣接地の基礎工事から建て方に至る工程では、現場に通って建物の配置と窓の位置を確認しました。おかげで、提案しているプランの窓やバルコニーの位置関係が妥当かどうか、確信を持って工事を進めることができました。

 

↑そうこうしているうちに隣(1段下)の土地で基礎工事が始まりました

 

↑隣の家の窓確認のため何回か現場をパトロールしました

 

 

②2面道路の三角形造成地にて

 

次に紹介するのは「とんがり帽子」のような二等辺三角形の土地です。こちらは鋭角の角は尖っておらす丸くしてありました。長い辺の両方が道路に接していて、先端の丸い部分も高低差なく道路に接している土地です。

長い辺の片方は南側、もう片方は北側でしたが、南側には道路を隔てて宅地より低く傾斜していく山林が広がっています。これなら建物が視野に入ってくることはなさそうです。また、北側は道路を隔てて見知ブロックで1段上がった宅地が並んでいています。こちらも1階レベルでは隣家の気配をほとんど感じることのない関係性でした。

以上のようにとても条件のいい土地だと思うのですが、極めて不人気でした。近所の家の気配が少ない場所でしたが、いかんせん一般的な四角い建物を配置するのには狭いのでした。小さくても広々した家の提案を得意としていましたので、さほど狭いとは思わなかったのですが。一般的には「狭いのに両側が道路で落ち着かない」という評価だったそうです。人の「感じ方」は様々です。この土地で進めることになった際、分譲会社の責任者の方からは大変喜ばれました。

 

↑南側は開発エリア外の山林で、斜面上に下がっていっています

 

↑北側は道路を隔てて1段上がって宅地が並んでいます

 

↑先っちょから見たところ(広角レンズなので遠いところほど実際より幅が細く写っています)

 

↑南北どちらの道路からも出入りしやすい駐車スペース

 

何度か現場に下見に行きましたが、この土地の駐車スペースには毎度同じ四輪駆動車が止まっていました。おそらく近くの現場の大工さんのだと思います。私と同じく、この場所が気に入られたのでしょう。空き地ばかりで路上駐車はどこでも止め放題なのに、何故かいつもココでした(笑)

このような、高低差がなく前後どちらからでも出入りできる駐車スペースは、極端にいうと車の長ささえあれば成立します。出たり入ったりする際の切り返しスペースも、後ろのハッチドアの開け閉めに必要なスペースもいらないからです。

唯一の隣接地は、どうなっているでしょう。駐車スペースが「とんがり帽子」の土地に寄せて計画されています。縦列駐車で2台分確保するように想定して宅地を仕上げてありました。ということは、必然的に建物同士は一定の距離を置くことになりますので好都合です。

 

↑間口は狭いのですが、擁壁に沿って2台縦列で駐車スペースを取る想定になっています

 

分譲地では、造成計画段階で各宅地の駐車スペースを想定して区画の設計をしています。「機能性」や「居心地」という視点では、想定された駐車位置が必ずしも的を得ていない場合もありますが、大抵は造成計画通りの駐車位置に沿って住宅のプランは進められます。設計者とはいえ「ひとは出来るだけ脳の負荷をかけたくない」のだそうです。

 

 

③【番外編】究極の三角地にて

 

最後の三角地は「究極」ともいえる物件でした。

古くからの既存宅地で造成地ではないのですが、交通の利便はとてもいいのに坪単価はすごく安くなっていました。ネットでも、数多くの仲介業者のサイトに登場していて、この界隈で土地探し中の方なら知らない人はいないぐらい安くて有名な土地でした。

こちらのお施主様であるMさんとは「おとり広告ですかね?」とか「事故物件でしょうか?」などと、互いに最初は半信半疑でしたが「ダメ元」ということで色々調べてみることにしたのでした。

役所や法務局はもちろん、現場にも足を運んで近所の方々にも入念に「聞き込み」もしましたが「おとり広告」でも「事故物件」でもありませんでした。変形地の上に道路が狭く、普通車サイズでもアクセスする度に「恐怖」を感じるほどでした。

さらに、隣家は密集していて距離も近く、初見では「絶望的」に見える土地でした。土地も道路も、ただでさえ狭いのに敷地内に電柱まで立っています。どうやらこの電柱はどう考えても移動先がなさそうです。

ここまで密集していて、道路も狭ければ対策としての選択肢は明快になります。条件が固まっているから、それに対し取り得る選択肢に迷いはなくなる訳です。土地の形や狭さなどは、プランでなんとか克服できそうでしたが、最大の問題は材料搬入や工事車両のアクセス問題でした。

「聞き込み」で、ご近所の方々とはすっかり顔見知りになりました。ご年配の方が多いもののとてもよいコミュニティであることが分かりました。「ここに建てるご家族には子供さんもいらっしゃるの?このあたりは高齢化してきて寂しいから、ぜひ来て欲しいわー」と、もう建てる前提になっていてウェルカムな雰囲気でした。

土地契約前に現場での施工計画を練ってもらいました。ご近所の方々のお力添えもいただきました。そうして何とか必要なスペースをお借りして、工事を進めることが可能になりました。そう簡単には売れそうではない土地でしたから、いろいろと段取りに時間をかけることができたのは幸いでした。

 

↑この土地にアクセスする最も幅の広いルート(普通車はミラーをたたんでギリギリです)

 

↑第1関門通過後も狭小箇所の連続です(通常この時点であきらめます)

 

↑向かって右手の道路は自動車通行不可です(路地と言って差し支えないと思います)

 

↑向かって右手の道路からの振り返り(ここから見ても三角です)

 

↑向かって左手の道路からの振り返り(住宅が近距離で密集しているのがよくわかります)

 

三角形の土地は極端な例としても会社では「つくるのは一時」「住むのは一生」という精神で「土地のみたて」には大変な労力と経費をかけてきました。しかし「難所」をものにして想像以上の「居心地」を獲得した「お施主様」が、黙っているはずがありません。

その「購入劇」は「伝説」となり、知人にも地域でも語り継がれていきます。「その家」を訪れた「訪問者」も、黙ってはいないでしょう。そうして「指名」していただけるお客様が増えていくことによって、努力は報われていくのです。その時は、想像するよりも早く訪れます。

多くの「実践」から養われる「実力」が、なによりも「資産」となっていきます。「土地みたて」ができる「地力」とも言うべきものです。

 

 

社長の会社では今の時代の現場で、次の時代の人づくりをされていますか?お客様からいただく「機会」を「面倒」だと考えたりしていないでしょうか?

 

 

造成地あるある(その6)既存の木を活かす土地5題 につづく

 

 

 

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