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経営者に必要な三位一体の計画

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「それは税金対策になるの?」と質問されたのは、先日、都内で開催したセミナーです。確かに、こちらの世界では当たり前のことが、目線を変えると全く違って見えているのが分かりました。
 
 
1.税金対策から生まれた知恵
 
中世のイギリスには王様が(今もいますが)がいて、貴族や騎士と主従関係を結んでいました。王様は貴族や騎士を保護する代わりに、兵役や年貢を納めるというバーター契約です。
 
イギリスの王様が十字軍の一員として出征することになり、臣下の騎士も兵役を求められます。騎士はまだ若く、配偶者はいるものの、息子はいません。遠征先で死亡すると、自分の領地を取り上げられてしまいます。
 
そこで騎士は一計を案じます。教会の司祭に自分(騎士)が出征している間、領地の所有者の名義を司祭にしてほしいと頼みます。司祭も教義のために出征する騎士のもとめに応じないわけにはいきません。
 
騎士は十字軍の一員として戦地に赴きますが、遭えなく戦死してしまいます。しかし、司祭の名義になっている領地を国王に取り上げられることはなく、司祭は領地から得られる収入を騎士の配偶者に贈り続けます。そして、騎士の配偶者が亡くなると、その領地は騎士との約束に従って、教会に寄付されることになりました。
 
騎士は後継者がいない場合、領地が没収されるという税金(みたいなもの)を避けるために、領地の所有者の名義を司祭にかえていました。このような土地の活用法が信託の原形といわれています。
 
もちろん、騎士が生きて帰ってきたら、土地の所有権を騎士の名義にもどします。しかし、その後も息子が生まれないと領地を没収されてしまうので、気が抜けません。封建制度の負担(税金)をかわすために、信託の原形は生まれたのですね。


 
 
2.日本でも戦争と関係がある?
 
日本の信託の歴史はイギリスと戦争が関係します。時代は日露戦争(1904~1905年)までさかのぼります。日本は帝政ロシアの南下政策に対応すべく、ロシアとの戦争準備にはいりました。
 
戦争をするには最新式の軍備が必要ですので、国も財源が必要です。明治政府の税収には限界があるため、外国から資本(お金)を調達することになります。当時は日英同盟を結んでおりましたので、イギリスのバックアップがありました。
 
日本は金融の中心であるロンドンとニューヨークで外債を発行して戦争資金を調達します。借りたお金は返すための財源として、導入されたのが、消費税(石油と織物に課税)や相続税(1905年)だったのでした。
 
なんと相続税は、「坂の上の雲」を目指していく途中で必要に迫られてできたものなのです。世界最強の陸軍国といわれるロシアを追い詰めて日本は勝利しますが、賠償金はなく台所事情は苦しいままです。
 
そして、この日露戦争の終盤にぽつんと導入されたのが「担保付社債信託法(1905年)」です。やっと信託の名前が出てきました。戦後復興の資金需要に対応するために、外国からの資本を調達することが目的です。
 
その後、第一次世界大戦(1914年)が始まり、日本は戦争成金をはじめ、好景気に沸き立ちます。お金集めやお金儲けの手段として、「信託」の名をつけた会社が乱立しました。中には詐欺まがいの会社まで現れたようです。
 
そこで制定されたのが「旧信託法(1921年)」と「旧信託業法(1922年)」です。今でも会社名に信託をいれるためには、金融庁に了解をもらわないといけません。
 
ちなみに、「鬼滅の刃」の設定は、1912年(大正元年)の年末から始まっているようですね。
 
 
3.日本の信託はこれから
 
今はロシアとウクライナが戦争をしていますが、120年前はわが国がロシアと戦争をしていたのですね。今年、新日英同盟が結ばれた、との新聞報道もありました。
 
日本における信託の活用は、基本的に税金対策にはなりません。一部の例外はありますが、税制的には中立です。税金対策のためだけに信託を活用するというのは、本筋を離れています。
 
2008年に新しい信託法になり、随分と使いやすくなりました。信託の取り扱い件数は飛躍的に伸びていますが、オーナー経営者の皆様の信託活用はこれからという状況ではないかと感じています。
 
同族会社の承継で、業歴が長くなればなるほど、ファミリーガバナンスが必要になります。理由は、経営に関与しないファミリーが増えるからです。核家族化がすすみ、伝統的な行事が減少するなか、ファミリーのあり方も変わっています。
 
同族会社の株式が分散していくとなると、親族とはいっても会社経営に関与しないとなれば、放っておくことはお勧めできません。色々な対応策が考えられますが、ファミリーガバナンスの視点で注目を集めている仕組みの一つは信託です。
 
信託という柔軟性のある仕組みが、ファミリーの結束を促し、会社経営に前向きのエネルギーを産みます。ファミリー、ビジネス、オーナーが三位一体となって歩んでいく要の道具として信託の活用を検討してみてはいかがでしょうか。
 
信託は税金対策から生まれたといえますが、今では、税金対策以上に重要な役割を担っています。税金だけにとらわれた対応策に捕らわれていませんか?

 

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