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プライベートバンクの経営と資産防衛

SPECIAL

「信託」活用コンサルタント

株式会社日本トラストコンサルティング

代表取締役 

オーナー社長を対象に、「信託」を活用した事業承継や財産保全、さまざまな金融的打ち手を指南する専門家。経営的な意向と社長個人の意向をくみ取り、信託ならではの手法を駆使して安心と安全の体制をさずけてくれる…と定評。

「予想どおりの展開でしたね」と旧知の銀行員との会話です。昨年からクレディ・スイスの経営状況は話題になっていましたが、UBSに救済されるとの報道がありました。
 
 
1.経営スタイル
 
スイスの伝統的な営業スタイル(顧客と向き合い、大きなリスクを取らずに、慎重に経営)から離れて、米国流の経営手法(株主のために、リスクを取って、収益を追求)に偏ったことを問題視する論調が多いようです。
 
この問題を考えていて、「資本主義 対 資本主義(アルベール、竹内書店新社)」という本を思い出しました。同書では資本主義を次の2つに分類します。
 
①ネオアメリカ(アングロサクソン)型資本主義:英国・アメリカなど
②ライン・アルペン型資本主義:ドイツ・スイス・日本など
 
「ネオアメリカ型資本主義」の特徴は、短期的利益の追求と個人としての成功です。これに対して、「ライン・アルペン型資本主義」の特徴は、長期的利益の考慮と集団としての成功です。日本は「ライン・アルペン型」に分類されます。
 
米国流の経営=ネオアメリカ型資本主義を導入していたプライベートバンクがUBSとクレディ・スイスでした。2008年のリーマンショックの際に、UBSの経営が揺らいだため、富裕層向けの資産管理業務に回帰していました。
 
リーマンショックを機にリスクを取った資産運用をやめたUBSが生き残り、リスクを取り続けたクレディ・スイスが吸収される結果となりました。「利益を生むことと価値を生むことは違う」という新聞記事のコメントが印象的です。
 
今回クレディ・スイスがUBSに吸収されことで、風土に根差した経営に回帰します。日本でも、平成のバブル崩壊以降は、米国流の経営手法が持ち込まれ、その取捨選択に時間を費やした時間ともいえます。


 
 
2.信託からファミリーオフィスへ
 
UBSは、Union Bank of Switzerland (スイスユニオン銀行)に由来する金融グループであり、スイス最大の銀行機関および世界最大のプライベートバンクです。富裕層向けの資産運用業務に定評があります。
 
「プライベートバンキング」の替わりに「ウエルスマネジメント」と言葉が使われることもあります。この「ウエルスマネジメント」の源流の一つが、英国の騎士が十字軍として遠征するときに使った信託(当時は「ユース」)です。
 
富裕層の資産管理の方法としては、弁護士などが信託(トラスト)を活用することが中心でした。近年では、富裕層の増加や管理財産や運用方法の多様化しているため、ファミリーオフィスが用いられます。
 
世界初のファミリーオフィスは米国のロックフェラー家が設立したものとされます。ロックフェラー家の顧問弁護士であるJ.E.ヒューズ氏の著作は邦訳されています。著書のなかでは信託の運営についてかなりのページを割いています。
 
ファミリーオフィスは会社の形態を取ることもあれば、人の集団であることもあります。日本では様々な法律の規制により会社(法人)として、金融、投資、法務、税務などをワンストップで提供するのは難しいようです。
 
我が国では、まだまだ信託という仕組みも普及しているとは言えません。金融機関や専門家の提供するプライベートバンキング業務や事業承継コンサルティングなどのサービスは各社各様です。
 
スイスのプライベートバンクのような仕組みが難しいとすれば、自分専用の仕組みをつくるしかありません。その時の選択肢の一つが、ファミリービジネス・コンサルティングだと考えています。
 
 
3.資産防衛対策としての美術品
 
UBSが発行する「グローバル・ファミリー・オフィスレポート」に富裕層の資産運用先が記載されています。株、不動産、ヘッジファンドなどが中心ですが、金・貴金属と美術品・アンティークにそれぞれ約3%を投資しています。
 
スイスのプライベートバンクは自ら美術品を収集するだけでなく、美術品美術品展示会の開催やメインスポンサーを務めるなど、アート市場への取り組みを強化しています。スイスという国が美術取引をやり易くするインフラを整備している点も見逃せないところです。
 
日本の中小企業オーナーでもアート志向のある人は趣味と実益を兼ねて美術品への投資を始めています。先日お会いした鞄製造会社のオーナーも節税と資産保全という実益を兼ねて美術品への投資を始めていました。
 
誰にでも勧められるものではありませんが、オーナー経営者がアート関係に関心を持つことは良いことだと考えます。節税、資産保全という観点だけでなく、ファミリービジネス全体に対して良い影響を与える場合があるからです。
 
本日の結論は、オーナー社長にはスイスのプライベートバンクの担当者のような、長期的な信頼関係を大切にするアドバイザーやコンサルタントが必要ではないか、ということです。顧問税理士やメインバンク、社内の番頭さんなど、担い手は色々と考えられます。
 
金融、会計など数字の世界はAIやITに任せるとしても、法務や税務の世界は人との対話が欠かせません。人は理屈でなく、感情の生き物だからです。とりあえず金と感情を預けておけるアドバイザーがいると落ち着くことが出来ます。
 
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