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その事業は成長市場にあるのか、成熟市場にあるのか。それにより打つ手は変わる

SPECIAL

年商10億事業構築コンサルタント

株式会社ワイズサービス・コンサルティング

代表取締役 

指導暦18年、これまでに200社以上の実務コンサルティング実績を持つ経営コンサルタント。「10億円事業構築」に強みを持ち、直近5年では、導入後数年で年商数億が10億越えをした企業は20社以上と驚くべき成果を出している。

セミナー会場の下のレストランでS氏との面談です。
 
 事前のメールのやり取りで状況は聞いていました。
S社は、父の創業したシステム開発業会社であり、業績はかなり厳しい状況とのことでした。また、コンサルティング費用の分割での支払いの相談もありました。
 
 S社にはあまり時間がないこと、そして、まだ実権のないS氏にはこれ以上の出費はさせられないと思い、セミナー終了後の面談を提案しました。
 
 向かいに座ったS氏は、口を開きます。
「先生がお話されたダメな会社の条件、すべてがうちに当てはまります。」
 
 そして、目線を下に落とし言いました。
「やるべきことは解りました。しかし、うちには父がいます。父を説得するには、どうすればいいのでしょうか。」


自社の事業が、今どちらにあるのかの認識を持つ必要があります。
「成長市場」か「成熟市場」か。
 
 成長市場とは、その名の通り、成長している市場を指します。
世の中やその業界にいる人達は、そのサービスの存在に気づき始めています。
そのメリットが大きいということで、ユーザーは増えています。
 
 その拡大する市場では、まだ勝者は決まっていません。
その市場で一番になるために、各企業がスピードでの展開に取り組んでいます。
そこでは提供する者よりも望む者が多いために、その差はあるものの全者が伸びることができます。
 
 この成長市場も、いつしか成熟市場に移行します。
そのサービスを多くの法人(人)が所有した状態になります。また、そこには多くのプレーヤー(提供する者)がいます。
当然そこでは、壮絶な客の奪い合いが起こるのです。新たなマーケティング手法、ディスカウント、品ぞろえ、ある分野への特化など、各者は、他者に勝つために特色を出し始めます。
 
 自社の今のビジネスは、どちらにあるのかを考える必要があります。
成長市場か成熟市場か、それにより事業の伸ばし方は全く違うものになります。
 
 それぞれの市場における、事業を伸ばす視点は以下になります。
成長市場:スピード持って展開する、他者よりも早く顧客にアプローチし市場シェアを取る。
成熟市場:特色を持つ。他者と比べられて勝つこと、他者から顧客を奪うこと。
このどちらかになります。


S氏と面談したこの時には、S社のシステム開発事業は、完全なる成熟市場にありました。
 
 システム開発という概念(サービス)が出て、すでに数十年が経っています。
当初は、自社で自前のシステムを持てる会社は、大手に限られていました。そして、そのシステムの開発を請け負うことができるのも大手でした。
 
 それが、IT関連(パソコン、ネット、サーバーなど)の技術革新により、システムの所有もシステムの開発も、中小企業に裾野が広がったのです。
市場が爆発的に拡がりました。そして、その技術の普及が価格を大きく下げることになり、その市場拡大を更に加速させました。
 
 その拡大する市場の中で、多くの企業が生まれました。そして、多くの会社が大きくなっていきました。
 
 そして、ある時、その市場にいるプレーヤー達(提供者)は変化に気づくことになります。
「顧客の欲求が厳しくなってきた」、「競合に負けることが多くなった」、「強い値引き要請がある」そうです、この分野は「成長市場」が終焉し、「成熟市場」に移ったのです。
激しい生存競争の時代が始まったのです。
 
 S氏の父が今の会社を興したのは、システム開発市場が爆発的に拡大する時期です。
勤め人時代に関係のあった大手企業1社から継続的に仕事がもらえていました。その単価も十分なものでした。
それに合わせ、社員を増やしてきました。最も社員数が多かった時には、30名ほどいました。
 
 それが、徐々に様子が変わってきたのです。その大手企業は他社からも提案を受けるようになりました。コンペ方式も増え、値段も厳しくなっていました。
年々状況は悪くなります。
 
 その会社に、息子であるS氏は後継者として入りました。
そして、財務状況を知って愕然とすることになります。
会社には殆どお金が残ってなかったのです。父が取っている役員報酬も僅かなものです。
それでも毎月の収支はマイナスです。
そして何よりもまずいのが、各案件でしっかり利益が出せていないのです。この粗利率では、販管費を賄うことはできません。
 
 S氏は、父であるS社長に詰め寄りました。
しかし、返ってきたのは次の言葉でした。
「解っている、大丈夫だ、良い仕事をしていれば必ずお客様は解ってくれる。」
 
 S氏からは、その言葉を繰り返すS社長が「昔の成功体験が忘れられない」ように映ります。
 
 高齢でありながらS社長は、自身も案件を持ち毎日遅くまで仕事をしています。
そこにS氏も加わることになりました。それでも状況はよくなりません。
 
 S氏は社長にリストラ(人員整理)を提案しました。一人当たりの生産性は低く、明らかに働いていない社員が数名いたのです。
すると、「社員の雇用を守るのが経営者の役目だ。一人も切らない。」との答えでした。
 
 何度か話しをするものの、受け入れられることはありません。
それどころか避けられるようにまでなっていきました。
 
 その間も時間は経ちます。状況は益々悪くなっていきます。
 
 そんな時にS氏は、矢田の本を手に取りました。
コンサルティング費用を払える状況ではありません。また、その意思決定権を自分が持ち合わせていないことも解っています。
それでも、居ても立ってもいられませんでした。ホームページを探し、お問い合わせフォームにその思いの丈を打ち込みます。
「自社はやばい状況にあります。しかし、どうすれば良いのか解りません。」
 
 その続きが、冒頭のシーンにあります。
セミナー会場である国際フォーラムの地下にあるレストランで面談を行いました。
 
 あれから5年が経ちました。
S氏は、その後新規事業開発に取り掛かりました。
システム開発業は完全に成熟市場であることが十分解っていました。また、自社には何の特色もありません。得意な分野はあるものの、それはその大手1社だけに通用するものです。そのメインの取引先である大手1社のその事業(部門)自体が大きく縮小しているのです。
 
 また、矢田の指摘する通り「相手合わせのビジネス」の問題点を十分理解していました。
相手の要望を聞いて、それに提案企画し開発する。すべてが一品ものです。
これでは、「その業務を一部の社員(社長・優秀な社員)しかできない」という状況が生まれるのは目に見えています。いや、それがいまの状況の根本原因なのです。
 
 S氏は、言いました。
「数十年前のシステム開発の市場が成長している時でも、このような職人型のビジネスは続けてはいけなかったのです。どこかで事業モデルの変革が必要だったのです。」
 
 その後、S氏は多忙を極める中でも、新規事業開発を進めました。
S氏自身も、既存事業であるシステム開発に入らざるを得ない状況が続きます。それでも時間を作り、商品開発、そして、テストマーケティングを進めていきます。その状況をS社長は黙認してくれました。
 
 その甲斐あって、ついにそれが出来上がったのです。新規事業開発に2年がかかりました。
そのサービス(商品)は、完全な『成長市場』にあります。
その狙う業界では、まだ多くの会社が導入をしていません。そして、そのニーズは強いものがあります。
そして、実際に売れていきます。初年度には4件の受注ができました。
 
 そして、2年目は、倍の8件です。
そして、3年目20件になっていました。
 
 私は、S社長に会うたびにお願いをしました。
「頑張ってください。急いでください。」
暗に「遅い、遅すぎる」ということを伝えます。成長市場において、この件数の伸びではダメなのです。
 
 それは、S氏も解っていました。
しかし、システム開発の案件も依然あります。それをこなせなければ、会社を維持することが出来ないのです。また日々の資金繰りの苦労もあります。
 
 S氏がこの商品(サービス)を開発して3年が経っています。
あれからこの市場の様相も大きく変わりました。
顧客のニーズは更に強まっています。その一方で、そこには多くの会社が現れています。その中には名だたる大手企業もあります。
 
 後数年も経てば、この市場での勝者が決まってきます。
数社が、その業界での知名度を固めていきます。その数社は、そこからの儲けを再投資することで、更に強くなっていきます。
そして、この分野も『成熟市場』に移行することになります。
 
 今しかないのです。
今の一年一年は非常に重要なのです。
 
 父であるS社長は、成長市場にある時に会社を興し、ここまでの会社にしました。
そして、成熟市場に移り、散々たる状況に陥りました。
息子であるS氏は、その成熟市場から脱するために、必死な思いで成長市場を見つけ打って出たのです。
その新規事業も『時間』に飲まれようとしています。
 
 御社は、今成長市場にありますか。
それとも、成熟市場にありますか。
 
 いずれにせよ、時間はないのです。
企業とは、『時間』の先を行けば栄えるし、『時間』の後を行けば落ちぶれるのです。
 
 だから、「社長が現場に出ていてはいけない」のです。
だから、「社員の能力を十二分に発揮させる仕組みと組織が必要」となるのです。

 

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