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第24号:高賃金企業に向けて、評価制度を機能させる「前提条件」とは?

SPECIAL

高収益・高賃金企業づくりコンサルタント

株式会社ポリフォニアコンサルティング

代表取締役 

中小企業ではハードルが高いとされる社員1人粗利3千万円、平均年収1千万円越えの本気で儲かる組織になるための土台作りを指導。会社の「価値」に注目し、価格ではなく、組織全体で価値を高め・守り・売っていく仕組み作りで注目を集めている。これまで150社以上の様々な業種の中小企業を支援する中で、中小企業の業績・資金繰り・人材確保などの経営問題の背景には、「一見相反する会社と社員の利益双方を引き上げていく経営の仕組み」が欠けていることを発見し、その仕組み作りのノウハウを体系化。

「シライ先生、弊社にも評価制度は必要でしょうか」社員数50名程度の測定機器メーカーA社長のご発言です。「正直、弊社ぐらいの規模であれば社員への目が届きますし、そんなにしっかりした制度はなくてもいいと思っています。ただ、社員からの評価に対する不満の声もチラホラ聞くものですから」

高付加価値・高賃金事業を作っていくうえでは組織を機能させ、1人当たりが大きな付加価値を稼ぎ出せるようになる必要があります。いうまでもなく、賃金の原資は会社が稼ぎ出した付加価値だからです。大きな付加価値を生み出し、これを人件費と営業利益で折半し、労使ともに豊かになっていくのが高付加価値・高賃金事業づくりの目的です。

そのため、弊社にご相談に来られる社長の中には、評価制度に対する関心の高い方が一定数おられます。それもそのはずです。社員1人1人に頑張ってもらう必要がありますし、その成果を適切に評価して賃金に反映させなければ、好循環を生み出すことは難しいと考えるのは当然です。

結論を申し上げると、評価制度はそれを正しく機能させることのできる「前提条件」が組織に整っていない間は、作り込む必要はありません。その前提条件とは「PDCAを正しく回す仕組み」です。

理由は極めて明快です。評価制度とはその名が示している通り、ある目的をもったPDCAサイクルのうちの、C(チェック・評価)という1機能の役割を果たしているに過ぎないからです。

そもそも評価の目的とは何か?それは「高い付加価値・高い経済価値を生み出せる人を作ること」になります。

いや、「適正な評価をすることでモチベーションを上げる」とか「賃金に反映させる」のが目的だ、という意見もありますが、この理屈で評価を考えると非常に危険です。なぜなら「モチベーションや賃金」を「仕事の成果より先に求める」という組織を作ってしまうことになりかねないからです。要するに「評価の納得性が低くてモチベーションが上がらないから、賃金が低いから仕事に打ち込めず成果を出せない」という言い訳を与えてしまう組織になるのです。

仕事とはそうではありません。仕事の順番は必ず「成果」が先にあり、これが「賃金」と「仕事のやりがい」に繋がるのです。社長であれば、これを事業運営に置き換えて考えてみればすぐに分かるはずです。まず先に「投資」があってその後に「回収」があり「事業が楽しくなる」のではないですか?

つまり評価によって実現したいことは「人を成長させていくこと」であり、その成長の先に付加価値の向上があり、賃金増加があるのです。当然と言えば当然ですが、制度設計をする際にこういう構造と順番を間違えてしまうと、全てが見当違いの方向に進んでしまう恐れがあります。

ここまでをまとめると、評価制度とは高い経済価値を生み出せる人を作っていくための、PDCAサイクルにおけるC(評価・チェック)機能を司る仕組みである、ということになります。

そうです、評価制度を整えたとしても、そこに連鎖連動しているべきP(計画)D(実施)A(改善)はどうするのか?という話になるのです。これを販売活動や生産活動に置き換えて考えれば、そのおかしさに気が付くはずです。C(評価)機能だけ仕組み化されていて、P・D・Aがない販売活動や生産活動などあり得ないはずです。

高い付加価値を生み出す人を作っていくための「人材育成計画、その計画実施の進捗管理、評価結果に応じた軌道修正」・・・こういった仕組みが連鎖連動せず、評価だけ制度として「点」で存在していても、PDCAが「線」として成り立っていなければ、成長を促して各人の付加価値を上げていく仕組みにはなっていかないのです。

つまり、PDCAサイクルを恒常的に回す仕組みが組織に定着しており、あらゆる事業活動において組織が主体的に進捗管理、報連相サイクル、活動チェック、改善と検証といったサイクルが恒常的に回せる組織になっていないと、評価制度をいれてもまともに機能させることはできません。

その結果、評価制度は、評価の時期だけ社長や管理職が「評価点」という無機質な記号を付与する「事務作業」になってしまうのです。そこには、評価を人材育成全体の機能として捉え、これを育成計画と実施に活かしていくという発想はありません。

機能する評価制度とは、「人材育成計画策定→育成実施と進捗管理→成長度合いと成果への評価→新たな目標設定と育成計画」という一連の流れが全てセットで組まれている制度、ということになります。

ある評価期間のはじめに「この期間中に誰がどんなことをどれだけ出来るようにし、どんな成果を出せるようにするのか」という育成目標設定と実現に向けた育成及び活動を計画する。その進捗を管理するとともに、社員のスキルアップ状況と行動事実を記録する。そして評価期間末に、計画に対して何がどのレベルで出来るようになったか、目標に対してどんな成果を出せたかを評価する。そして次の評価期間における育成目標設定と計画を立てる・・・こういう人材育成サイクルを回せる土壌が組織に必要となります。

立派な評価制度を作るよりも、稚拙でも構わないので「人材育成のPDCA全体」を作り回していく方が、付加価値向上人材を作っていくうえで遥かに重要になるのです。

あなたは、評価制度を単体で捉えていませんか?付加価値創出人材育成という視点から、成長を促すPDCAサイクルを組織に埋め込んでいますか?

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