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借りやすい社長、借りにくい社長の決定的な差

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銀行活用で新規開拓コンサルタント

株式会社結コンサルティング

代表取締役 

銀行活用で新規開拓の仕組みづくりを行うスペシャリスト。31年間の銀行員経験で、法人4,000社以上を担当、審査部担当者としての企業審査は1,000社超の実績を誇る金融のプロフェショナル。
売上が倍増した雑貨メーカー、バックメーカー、新事業を立ち上げた化粧品メーカー、更には海外進出に成功した事例など、累計で100社以上の会社を成功に導いた実績を持つ。

借りやすい社長、借りにくい社長の決定的な差

「いや~、実は先日、金融機関に追加融資の相談をしたんですが、なんとなく反応が悪くて…。今回は見送りましょう、なんて言われてしまいました。数字もそこそこ出てるし、今までは普通に借りられてたのに、どうしてなんでしょうか?」―これは、当社の個別相談にお越しになった建設業の2代目経営者の言葉です。

確かに、「業績がそれなりに出ていれば、融資も通るはず」と思っている経営者は少なくありません。
しかし、実際には「業績よりももっと重要な要素」が、銀行からの評価を大きく左右しているのです。

「なぜ、あの社長はスムーズに借りられて、自分は時間がかかるのか?」
「うちは黒字なのに、なぜ銀行は積極的じゃないのか?」

こうした疑問には、明確な答えがあります。
本コラムでは、銀行側の視点を踏まえて、借りやすい社長と借りにくい社長の“決定的な違い”について紐解きながら、どのように行動を変えればよいのかを具体的に解説します。

はじめに

「同じような業績なのに、なぜあの会社はすんなり融資を受けられて、うちは渋られるのだろう…」
これは、多くの中小企業経営者が一度は感じる疑問です。

確かに、決算書の内容や業界の動向、自己資本比率など、金融機関が評価する指標はあります。ですが、数字だけでは融資の可否は決まりません。実際には、銀行員が面談や資料から感じ取る「社長の経営姿勢」や「計画性」こそが、融資を前向きに進めるか否かに大きく影響します。

銀行が見ているのは“会社の数字”ではなく“社長という人間”そのものなのです。
つまり、「借りやすい社長」と「借りにくい社長」には、目に見えにくい“差”が存在しています。

例えば、数字に弱く、会話の中で曖昧な返答をしてしまう社長と、自社の現状や将来像を数字と言葉で説明できる社長とでは、金融機関の信頼度に雲泥の差が出ます。
また、融資を「お願い」に来るだけの社長と、「こういう成長戦略のために、これだけの資金が必要です」と明確に提案できる社長では、銀行員の対応も変わります。

このコラムでは、元銀行員として4,000社以上の経営者と対話してきた経験をもとに、融資の通りやすさを左右する“社長の姿勢”や“考え方の違い”を5つの視点で解説していきます。

会社の未来を左右するのは、資金繰りではなく、社長自身の成長です。
残念ながら、社長の器以上に会社は大きくなりません。
逆に、自分自身を変えることで、銀行との関係は大きく変わっていきます。
「なぜ融資が通らないのか?」と悩むすべての社長に読んでいただきたい内容です。

1. 銀行との信頼関係を築けているか

「融資が出るかどうかは、業績次第」と思っていませんか?
確かに数字は重要な判断材料です。しかし、銀行が本当に重視しているのは、会社そのものよりも「社長がどういう人物か」なのです。

特に中小企業の場合、社長の考え方・行動・態度が会社の命運を握っていることを、銀行はよく理解しています。
ですから、同じような決算書を提出しても、社長の信頼度によって融資のスピードも、条件も、さらには“提案される融資条件や金融商品”すら変わってくるのです。

では、銀行からの信頼を得る社長とは、どのような姿勢を持っているのでしょうか?
ここではその具体例を3つの視点から見ていきましょう。

1.1. 信頼を得るには“数字”ではなく“姿勢”

決算書の数字は、過去の結果にすぎません。
それをどう受け止め、これからどう行動するか。その未来への姿勢を、銀行は敏感に見ています。

たとえば、面談の場で「決算書は会計事務所が全部やっているので、内容はよくわかりません」と話す社長がたまにいらっしゃいます。
この時点で、銀行の評価は大きく下がります。

なぜなら、会社の数字に無関心な社長には、事業を安定的に運営する意思が感じられないからです。
逆に、「この利益が出た理由はこうです」「課題はここです」と自分の言葉で語れる社長には、たとえ赤字決算であっても前向きな評価をするのです。

つまり、金融機関が見ているのは“結果”よりも“向き合い方”なのです。

数字を把握しているかどうかではなく、数字に向き合おうとする姿勢。
失敗をどう受け止め、どう変えようとしているのか。そこに社長としての「責任感」や「覚悟」がにじみ出ます。

だからこそ、たとえ数字が悪くても、誠実に、そして前向きに話す社長には、銀行も寄り添おうとします。
銀行は「うまくいっている会社」ではなく、「うまくいかせようとしている社長」を信頼するのです。

1.2. “報連相”を怠る社長は信頼されない

銀行との信頼関係は、1回の面談で築けるものではありません。
むしろ、日々の“ちょっとしたやりとり”の積み重ねこそが、信頼構築の土台になります。

例えば、
・業績が悪化したとき、
・トラブルが起きたとき、
・予期せぬ支払いが発生したとき…
そのときに、すぐに銀行へ報告する社長と、ギリギリまで黙っている社長とでは、信頼度に天と地の差が生まれます。

特に悪い情報こそ、先に自分の口から伝えることが大切です。
銀行員が決算書や入出金の動きから異変を察知した後に連絡しても、それは「報告」ではなく「言い訳」に聞こえてしまいます。

実際、ある地域金融機関の融資担当者はこう語ります。
「良い時よりも、悪い時に先に連絡してくれる社長は、信用できる。隠す社長は危ないと思う」

信頼とは、都合の悪いことも共有できる関係性から生まれるのです。
「忙しくて…」「言うほどのことでもないと思って…」という理由で報告が遅れるたびに、銀行側の警戒心は高まり、評価は確実に下がります。

報連相は社員だけに求めるものではありません。社長自身が銀行に対しても実行すべき、基本動作です。

1.3. 「お願い」ではなく「提案」ができるか

多くの中小企業の社長がやってしまうのが、銀行に対して「お願いモード」で融資を依頼することです。

「どうか、今だけ貸してください」
「なんとか、今回だけお願いします」

その気持ちはわかります。しかし、銀行にとっては、“お願い”ではリスクの説明も、将来性の裏付けもない状態です。

一方で、「新しい事業展開のために、この資金が必要です」「○ヶ月後にはこう回収できる計画です」と、資金の使い道・返済の見通しを明確に伝えられる社長は、銀行からの評価が高まります。

つまり、借りやすい社長は「融資を通して何を実現したいか」を語れるのです。
銀行はボランティア団体ではありません。彼らが見ているのは、「この融資が将来どう回収されるか」「この会社はどう成長するか」です。

資金計画や返済計画を“提案”できる社長こそが、銀行から信用される存在です。

この違いは、書類の出来よりも大きな差になります。
実際、同じような内容でも、社長が「戦略」として語るか、「苦し紛れのお願い」として語るかで、金融機関の受け止め方は180度変わるのです。

銀行からの信頼は、会社の「財務状況」だけでは決まりません。
社長が「数字」とどう向き合い、「姿勢」と「提案力」をどう示すか

この3点に真剣に取り組むことが、結果として借入のしやすさを左右するのです。

金融機関との関係は、一度築ければ一生ものの資産になります。
数字を変えるより先に、社長自身の行動を変えること。
それこそが、借りやすい社長への第一歩なのです。

金融機関との関係性に関するお悩みに結コンサルティングの専門家がお応えします!お気軽にご相談ください。

2. 自社の数字を語れるかどうか

「数字に弱くて…」「会計のことは税理士に任せてるので…」
そんな言い訳を口にする社長を、銀行は信頼しません。

なぜなら、会社の経営を担っているのは税理士でも経理担当でもなく、他ならぬ“社長自身”だからです。
事業の方向性や資金の流れ、収益構造を最も把握しておくべき立場にある社長が、「数字がわからない」と言ってしまえば、それだけで「経営を任せるには不安な人物」という評価になってしまいます。

では、どの程度の“数字感覚”が必要なのでしょうか?
ここでは、銀行が重視する視点から見た“数字を語れる社長”の特徴を3つに分けて解説します。

2.1. 損益計算書だけでなく貸借対照表も語れるか

多くの社長が把握しているのは「売上」や「利益」など、損益計算書上の情報です。
もちろんそれも重要ですが、それだけでは足りません。銀行が真っ先にチェックするのは貸借対照表(バランスシート)です。

貸借対照表には、「この会社が何を持っていて(資産)」「どれだけ借りていて(負債)」「残った純粋な力がどれくらいあるか(純資産)」という全体像が詰まっています。

例えば、「黒字だけど借金だらけ」の会社と、「赤字だけど内部留保がしっかりある」会社。
銀行がより安心するのは、明らかに後者です。つまり、損益計算書で見る“短期の成績”よりも、貸借対照表に表れる“会社の体力”を重視しているのです。

その視点を持っている社長は、財務の話をしたときに説得力が違います。
「なぜ今、借入が必要なのか」「今後どうバランスを整えていくか」を語れる社長は、それだけで銀行から一目置かれる存在となります。

2.2. 「なぜこの利益になったのか」を説明できるか

単に「今期は黒字です」「前年比120%です」と数字を読み上げるだけでは、銀行は納得しません。

その数字がどうやって生まれたのか。
「なぜこの数字になったのか」を語れる社長こそが、本当に経営を理解していると評価されるのです。

たとえば、「なぜ売上が伸びたのか?」「原価率が変わった理由は何か?」「販管費の増減は戦略的な投資かどうか?」
こういった背景まで説明できると、銀行の安心感は格段に上がります。

逆に、質問に対して「そこまでは見ていません」「会計士に聞いてみます」という返答をしてしまうと、“数値の意味を理解していない”と判断されてしまうのです。

特に重要なのは、「この数値は来期も再現可能か?」という視点。
一時的な利益なのか、継続的な体質改善によるものなのかを説明できるかどうかが、融資判断に直結します。

2.3. 数字に強い社長は、計画も説得力がある

ここまでの2.1・2.2を踏まえると、最終的に重要になるのが「未来の数字を語る力」です。

銀行は、過去の数字を参考にしつつ、「この会社が、これからどうなるか」を重視して見ているのです。

そして、それを伝えるための最も強力なツールが「事業計画書」や「資金繰り計画」です。

しかし、形式だけの計画では意味がありません。
「売上を上げていきたい」「コストを下げて利益を出す」といった抽象的な内容では、銀行は動きません。

「何を、いつ、どのように実行して、どのくらいの効果が見込めるのか」を数字で語れることが重要です。
そして、その根拠となる「前期実績の理解」「現場との整合性」「市場環境との整合性」が揃っていると、銀行は「この社長は本気だ」と感じます。

特に、銀行は“回収”を前提に融資を行っています。
したがって、「返済可能性」を論理的に説明できるかどうかが最大の関心事です。
この返済計画を語る際に、「どこまで数字で設計しているか」が信頼性の決定的な差になります。

銀行と向き合ううえで、数字を語れるかどうかは“必須スキル”です。
特別に難しい会計知識を持っている必要はありません。

しかし、自社の売上・利益・借入・資産などを、自分の言葉で説明できるか、そしてその結果をどう改善・成長に繋げるかを計画として語れるか
この2点ができる社長は、金融機関から高く評価されます。

数字に向き合う姿勢がある社長は、たとえ業績が厳しくても、銀行は見捨てません。
逆に、数字を語れない社長には、銀行も未来を託せないのです。

3. 資金の使い道が明確かどうか

金融機関が融資審査を行ううえで、最も重視する項目のひとつが「資金の使途」、つまり「何のためにお金を借りるのか」です。
これはただの形式的な質問ではありません。
資金使途が曖昧であればあるほど、銀行はリスクを感じ、審査は慎重になります。

言い換えれば、資金の使い道を具体的かつ論理的に説明できる社長ほど、銀行は安心してお金を貸せるということです。

この章では、借りやすい社長がどのように資金使途を説明しているのか、反対に借りにくい社長がやってしまいがちな失敗とは何か、3つの視点から解説していきます。

3.1. 「とりあえず借りたい」はNG

「今、資金繰りが苦しくて…とにかく運転資金が欲しいんです」
このような依頼は、銀行にとって最も警戒すべきものです。

なぜなら、「とにかく今、必要」という言葉の裏には、具体的な戦略も計画も見えないからです。
資金使途が明確でないということは、「お金を借りたあと、どう使って、どう返していくのか」が見えていないということ。

これでは、銀行としても貸した資金がどこに消えていくか分からず、融資判断にブレーキがかかります。

一方で、借りやすい社長はこう言います。
「今回の借入は、今期から強化するBtoB事業への設備投資のためです。リースでは採算が合わないため、自己調達を選びました」

“必要な理由”が明確に語られると、銀行は安心して前向きに検討できるのです。

3.2. 設備資金と運転資金の区別が曖昧な社長は危険

資金調達の際に多くの社長が混同してしまうのが、「設備資金」と「運転資金」の違いです。

設備資金とは、新しい機械や店舗、車両などの“物”に対する投資資金。
一方、運転資金は、仕入れや人件費、広告費など、日常的に出入りするキャッシュの補填です。

この2つをしっかりと区別せず、「だいたい全部合わせて○○万円借りたい」と話す社長には、資金管理の甘さを感じざるを得ません。

銀行が最も恐れるのは、融資した資金が想定外の使途に流用され、返済計画が破綻すること。
ですから、借入目的をしっかり分解し、「これはこの事業のため」「これは短期的な仕入れのため」と分けて説明できる社長ほど信頼を得られるのです。

さらに言えば、設備投資の場合は投資対効果まで語れると説得力が段違いになります。
「この機械を導入すれば月産が○%増え、粗利率が上がる」「投資回収期間は1年半を想定」といった説明ができれば、銀行も納得せざるを得ません。

資金使途の曖昧さは、返済リスクと直結する
この視点を常に意識して、資金の“性格”を明確に伝えることが重要です。

3.3. 回収計画が描けているか

資金の使い道と並んで重要なのが、「どうやって返すのか」という回収計画です。
これが明確でないと、どれだけ前向きな借入でも、銀行はGOを出しません。

ありがちなのが、「売上を伸ばして返します」という抽象的な回答。
残念ながら、銀行は「伸びる見込み」を数字で示せない限り、それを信用とはみなしません。

一方で、借りやすい社長はこう言います。
「今回の新規事業により、来期は月商300万円の上乗せが見込めます。粗利率を45%と想定し、月々○万円ずつ返済する計画です」

このように「売上→粗利→キャッシュフロー→返済」までを一連の流れとして語れる社長は、信頼度が格段に上がります。

また、突発的な売上ダウンやコスト増が発生した場合の対応策(=“代替案”)まで想定していると、銀行から「この社長は万が一のときも対応できる」と評価されます。

銀行は「貸すこと」より「返ってくること」に責任を負っているため、回収の見込みが立たない融資には絶対に首を縦には振りません。

資金調達は、単なる「お金の確保」ではなく、「お金をどう使い、どう返すか」という戦略の実行です。
借りやすい社長は、この視点を持って銀行と向き合っています。

・「とりあえず借りたい」ではなく、何に使い、どう効果を出すかを語れるか
・設備投資と運転資金を正しく分けて説明できるか
・借りたお金を、いつ、どのように返すかを明確に描けているか

この3つが揃って初めて、銀行は「この社長には貸しても大丈夫だ」と判断します。

資金使途を語れない社長には、お金も信用も集まりません。
逆に、それを論理的に伝えられる社長には、銀行も積極的に協力してくれるのです。

4. 銀行の視点を理解しているか

中小企業の社長が融資を申し込むとき、つい「自分たちの立場」でばかり考えてしまいがちです。
しかし、融資の可否を決めるのは銀行です。つまり、銀行の論理・視点を理解せずに申し込んでも、“一方通行の会話”になってしまいます。

どれだけ情熱を語っても、どれだけ将来性を訴えても、銀行の見ている評価軸から外れていれば、「貸すのが怖い」と判断されてしまうのです。

では、銀行は一体、どこを見て、どう判断しているのか?
この章では、“銀行の目線”を理解している社長がなぜ借りやすいのか、3つの視点で解説します。

4.1. 銀行は“会社”ではなく“社長”を見ている

「会社としての業績が良ければ、社長の印象なんて関係ない」と思っていませんか?
それは大きな誤解です。

特に中小企業において、銀行は「会社」よりも「社長個人」を厳しく見ているのが実情です。
なぜなら、会社の意思決定や方向性が社長ひとりに強く依存しているからです。

担当者は面談を通じて、社長の人柄・考え方・準備状況・誠実さなど、数字に出ない部分までしっかり観察しています。
社長の受け答えが曖昧だったり、責任感を感じさせなかったり、逆に見栄ばかり張るような場合には、数字が整っていても社内稟議が通らないことは多々あります。

銀行は「この社長なら返してくれる」と思えなければ、どんなに立派な事業でも融資を出しません。

つまり、社長自身が「自分は見られている」という意識を持ち、準備・対応・説明すべてにおいて誠実であることが、何より重要なのです。

4.2. 銀行の立場・評価軸を知らないと損をする

銀行は、融資に対して「返済可能性」「資金使途の妥当性」「企業の将来性」「経営者の資質」など、いくつかの明確な評価軸を持っています。
これらの評価は、担当者個人の感情ではなく、支店内・本部の審査部までを含めた組織的判断によって行われます。

そのため、「うちの担当はわかってくれているから大丈夫」というのも、また危険な勘違いです。

実際には、担当者が社内で稟議書を書く際、社長の言動をどのようにロジカルに説明できるかが問われます。
社長が感情的に話しても、それを論理的な文章に落とし込めなければ、審査部は「説明が曖昧」「根拠に欠ける」と判断して融資を止めてしまうのです。

ここで重要なのが、「銀行の評価項目」に合わせて自社を説明する視点です。

例えば、
・数字で裏付けされた成長計画になっているか
・自己資本比率の変化に気を配っているか
・経営者保証をどう位置付けているか など
銀行が重視するポイントに配慮しながら話すことで、社内の稟議も通りやすくなり、融資決定までのスピードも格段に上がります。

「自社の立場」だけでなく「銀行の論理」を理解すること
これこそが、金融機関と円滑に付き合うための前提条件です。

4.3. 「今だけ」ではなく「将来性」で語れるか

融資を申し込む際、今の状況を詳細に説明することはもちろん大切です。
しかし、銀行が本当に知りたいのは「この会社は5年後、10年後にどうなっているのか?」という将来の姿です。

資金繰りが苦しい現状を説明することに終始してしまうと、銀行には「この社長は短期しか見ていない」と思われてしまいます。

一方で、「今こういう状態だけど、3年後には新たな事業柱が育ち、売上構成がこう変わります」と未来を語れる社長には、銀行は積極的に融資しようとします。

これは単なる夢物語ではいけません。
将来のビジョンを、現実的な数字と行動計画で語れるかどうかが、銀行の評価を左右します。

将来性を説明する際のポイントは以下の3点です。
・現状の課題をどう乗り越えるか
・投資とリターンのバランスは取れているか
・市場の変化にどう適応していくか
これらを押さえて話せる社長は、銀行から「この会社に将来性あり」と見なされ、融資枠の拡大や優遇条件の提案を受けることすらあります。

銀行と良好な関係を築くには、まず「相手の視点に立って考える力」が必要です。
借りやすい社長は、いつも「銀行はどう見ているか」を意識しながら説明を組み立て、数字を準備し、事業を語っています。

・社長という“人物”が信頼されるかどうか
・銀行の評価軸に合わせて説明できるか
・短期的な数字だけでなく、長期的な成長を語れるか
これらの視点を意識して行動することで、金融機関との信頼関係は着実に築かれていきます。

銀行の理解なくして、銀行との関係構築はあり得ないのです。

5. 事業計画の質が違う

銀行にとって、融資の可否を判断するうえで最も重視するのが「返済可能性」です。
そして、その根拠となるのが、社長が描く「事業計画の質」です。

実際、同じ業績、同じ資金需要であっても、事業計画の内容によって「可決」か「保留」か、「低金利」か「高金利」かが決まってしまうことは少なくありません。

つまり、どんなに熱意や夢があっても、事業計画が曖昧なら、銀行は動けないのです。

では、「借りやすい社長」が作る事業計画と、「借りにくい社長」が作る計画には、どのような違いがあるのでしょうか?
ここではそのポイントを3つの視点から解説します。

5.1. 数字と実行が乖離している社長は危ない

ありがちなのが、「売上を3年で2倍に」「利益率を30%に」といった理想だけが並んだ絵に描いた餅のような事業計画です。
そのような計画には、たとえ数字がきれいに整っていても、実行力の裏付けがないため、銀行は疑いの目を向けます。

銀行が見ているのは、「この計画は、本当に実現可能なのか?」という一点です。
そのため、計画書に書かれている内容と、社長の発言や現場の動きにズレがあると、一気に信頼を失うことになります。

たとえば、「新規事業で月商500万円」と書きつつ、具体的な集客戦略や人員配置、投資スケジュールなどが空欄になっていると、すぐに見抜かれます。

反対に、借りやすい社長は「なぜその数字になるのか」をきちんと説明できる資料と準備を用意しています。

数字は計算ではなく、実行の証拠でなければならない
この意識の差が、事業計画の「本気度」として銀行に伝わるのです。

5.2. 銀行が納得する“ロジックのある成長戦略”を描けるか

融資を通すための事業計画には、「成長の筋道」が必要です。
ここで問われるのは、社長の想像力ではなく、「経営ロジック」です。

銀行は、感情や希望ではなく、論理に基づいた成長シナリオを求めています。

たとえば、
・市場ニーズに合った新規商品・サービスの投入
・競合との比較優位性(なぜうちが選ばれるのか)
・顧客単価・成約率・リピート率などの改善ストーリー
・現場の人員体制・業務フローの見直し計画
これらを数値に落とし込み、「だからこの売上が実現する」と説明できる社長は、銀行からの信頼を獲得します。

「数字の裏側にある戦略」が語れるかどうかが、融資の分かれ道です。

特に最近の金融機関では、「成長可能性評価」を強化しており、「未来のビジネスが持続可能かどうか」に着目しています。
ロジックのある成長戦略こそ、今の時代の銀行審査において最も強い武器になるのです。

5.3. 計画を“更新”しているかどうか

もう一つ、意外と見落とされがちなのが、事業計画の“鮮度”です。

過去に作った事業計画を、ただ繰り返し提出しているだけの会社は、銀行にとって「成長していない」「現状に鈍感」と見なされてしまいます。

逆に、「前回からこれだけ改善した」「この部分は軌道修正した」など、計画に“PDCA”の痕跡があると、「この会社は自ら考え、改善しようとしている」と判断され、融資条件が好転することも珍しくありません。

事業計画は“作って終わり”ではなく、“見直して育てるもの”です。
借りやすい社長ほど、日常的に事業計画を振り返り、数字と現場の動きに応じて微調整しています。

金融機関から見て、「この社長は計画を“生きたツール”として活用している」と感じさせることができれば、それは融資だけでなく、長期的な関係性の構築にもつながります。

銀行が見ているのは、「事業計画があるかどうか」ではありません。
「計画にどれだけ本気で向き合っているか」です。

・数字と現場の実行が一致しているか
・論理的に説明された成長戦略になっているか
・過去から現在にかけて計画の修正・改善を行っているか
これらを備えた事業計画は、銀行にとって何よりの安心材料になります。

本気の事業計画こそが、社長の本気を伝える最大のメッセージ
事業計画の質が変われば、銀行との関係も劇的に変わるのです。

まとめ

同じ業績でも、同じ規模でも、銀行からの融資が「通る社長」と「通らない社長」がはっきりと分かれるのはなぜか?
その答えは、本コラムで解説してきた通り、社長の姿勢・考え方・行動の違いにあります。

借りやすい社長は、常に銀行の視点を意識し、誠実に準備し、数字と向き合い、論理的に事業を語っています。
その一方で、借りにくい社長は、「とりあえず借りたい」「数字は専門家に任せている」といった受け身の姿勢で臨んでしまい、結果として信頼を得られません。

銀行は、業績の良し悪し以上に、「この社長は返済できる人物か」を見ています。
だからこそ、決算書の数字ではなく、社長の言葉・態度・計画こそが問われるのです。

このコラムで紹介した5つの視点――
1)銀行との信頼関係、2)数字を語る力、3)資金の使い道、4)銀行の評価軸の理解、5)事業計画の質は、すべて明日から変えられることです。

融資が通る・通らないは運ではありません。
社長自身の姿勢を変えれば、銀行の対応も変わります。

「銀行は敵」ではなく、「共に成長を描くパートナー」へ。
その第一歩は、社長自身が“選ばれる経営者”になることなのです。

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