課題解決と言う名のブレークスルー

「西田先生、何だかワクワクしてきました！」

　インターンシップでやってきた学生たちと1週間を過ごした支援先の工場関係者が嬉しそうな顔をして言ってくれたコトバです。

 

　当社がご案内するインターンシップは、一般的に行われている「採用目的型」のインターンシップとは少し趣が異なります。目的はただ一つ、企業が抱える業務課題を解決すること。そのため、短期間の職場体験や会社説明ではなく、技術系の学生3人が1チームとなり、丸1週間かけて現場の課題に真正面から取り組む、いわば“課題解決型”の硬派なインターンシップなのです。

 

　今回の舞台は、ガラス製品のキズ検査工程。高感度カメラを用いた検査を行っているのですが、どうしても死角ができ、目に見えない箇所が残ってしまうという課題がありました。学生たちは初日から現場を観察し、原因と解決の糸口を探ります。何度も試行錯誤を繰り返し、議論は「ああでもない、こうでもない」と夜遅くまで続きました。

 

　そして最終日、学生たちが持ち込んだのは、なんと市販で2000円程度のレーザーポインター。報告会では、工場の従業員たちが息を呑んで見守る中、製品のキズにレーザーを当てると、その透過光が壁に映し出され、その中に黒くくっきりとキズの影が浮かび上がったのです。その瞬間、会場の誰もが「これは使える！」と感じました。実際、この原理をうまく実装できれば、これまで見えなかったキズも検出できる可能性が大きく広がります。

 

　しかし、この話には続きがあります。報告会には大学の先生方も同席しており、「カメラとレーザーを組み合わせた複合的な検査工程の実装」というテーマは、産学連携の共同研究にそのままつながるということがすぐに話題になったのです。つまり、今回のインターンシップは、現場課題の解決だけでなく、同時に大学と企業が連携して新しい技術を開発するスタートラインにもなってくれたわけです。ほんとうの意味での課題解決は、ここから始まると言った方が正しいかもしれません。

 

　学生たちにも、もし興味があればそのまま研究プロジェクトに加わる道が開かれます。当社が支援先企業にお伝えしているのは、「その中からぜひ“これは”という人材を見つけ、研究継続と絡めた採用オファーを出してください」ということ。通常の就職活動のように、オンラインエントリーシートから始まる一斉選考とは異なり、現場での課題解決力や探究心を肌で確認したうえで採用できるのです。

 

　この方法で採用した人材であれば、少なくとも研究成果が出るまではしっかりと会社に根を下ろして働いてくれることが期待できます。さらに、その先も5年勤めて修士号、10年で博士号といったように、研究の延長線上でアカデミックなキャリアの機会を提供できれば、長期的に技術開発に取り組むモチベーションを高く維持することも可能です。

 

　今、多くの中小企業にとって深刻な課題となっているのが、優秀な技術人材の確保です。短期間で辞めてしまう人材ではなく、腰を据えて成果を出せる人材をどう見つけ、どう育てるか。その答えの一つが、この課題解決型インターンシップと産学連携を組み合わせた仕組みにあります。

 

　この取り組みの良さは、単なる採用活動にとどまらず、技術開発そのものを加速させる点にもあります。学生たちの柔軟な発想は、現場の固定観念を打ち破り、思いもよらないアイデアを生み出します。そして、そのアイデアが実際に使えるレベルまで磨かれるプロセスは、大学と企業が一体となって技術を育てる土壌を作ります。これは単に一人の採用ではなく、企業の未来を作る投資そのものと言えるでしょう。

 

　中小企業が今日の厳しい環境で生き残り、さらに成長していくためには、既存の枠組みにとらわれない発想と、人と人とが直接関わる機会の創出が不可欠です。今回の事例は、そのヒントを明確に示しています。採用活動を単なる人集めから未来づくりの戦略へと変えること。そこにこそ、中小企業が持続的に発展するための鍵があるのです。

 

　技術人材を確保し、かつ育て続ける仕組みをどう作るかをお考えの経営者の皆さまに、この取り組みが少しでも参考になれば幸いです。詳しい方法や導入のご相談は、ぜひ当社までお問い合わせください。