社員50人以下の会社で「組織づくり」が大切な理由
「そこが大切なのはわかっている。でも自分は苦手で…」。
組織づくりの話をすると、中小企業の社長からよくこういう言葉が返ってきます。
正直なところ、気持ちはよくわかります。売上を作るのが最優先。会社を回すためにはまず稼がなければならない。稼がないと給与も払えないし、銀行の返済だって待ってくれない。だからどうしてもマーケティングや営業に力を注ぐ。これは当たり前のことですし、間違っていません。
ただ、その一方で「組織づくり」は後回しになりがちです。ここに落とし穴が潜んでいます。もし今、どうしても乗り越えられない壁があるとしたら、原因は案外この「組織の弱さ」にあるのかもしれません。
人が二人以上集まれば組織になる――たしかにそうですが、実際にはそれだけで機能するわけではありません。役割分担が必要だし、効率的に回すには相性やコミュニケーションも考えないといけない。ところが小さな会社ほど「そこまで手が回らない」となり、結果的に放置されてしまうことが多いのです。
「忙しいから人を雇う。雇った人が目の前の仕事をやってくれればOK」。そう考えがちなのも自然です。でも、そこで終わらないのが人間の難しさ。人は感情の生き物です。指示された通りに動いていても、気持ちの部分で納得していなければ、面従腹背は当たり前。誤解を恐れずに言えば、最近は昔ながらの「助け合い精神」で成り立つ会社は減ってきています。
「自分は自分。定時になったら帰る」。こういうスタンスを取る社員を責めることはできません。むしろ全体最適を口にして無理をさせれば「パワハラ」と言われかねない時代です。経営者からすれば「これじゃ組織が回らない」と嘆きたくもなります。
ここでよく引き合いに出されるのが「ライスワーク」と「ライフワーク」という対比です。生活費を稼ぐための仕事なのか、それとも自分の人生のミッションのための仕事なのか。多くの人は両方を併せ持っています。ただ、会社が社員に与える仕事を「ライフワーク寄り」にできるかどうか。ここが会社の腕の見せ所です。
大企業ならキャリア教育の仕組みを整え、社員一人ひとりと会社のミッションを結びつける機会を作れます。でも50人以下の会社ではそうはいきません。現場が最優先。目先の納期や顧客対応に追われ、腰を据えて組織づくりに取り組む時間はなかなか確保できないのが現実です。
だからといって「じゃあ仕方ない」と諦めてしまうと、結局は同じことの繰り返し。人を採用しても辞めてしまう、仕事のやり方が属人的で変わらない、誰も次のステップに進めない…。こうした悪循環に陥ります。
ありがちなパターンが「とりあえず研修に行かせる」こと。でも実務に結びつかない知識を学んだだけでは、現場には何も残りません。受講した本人も「役に立たなかった」と感じてしまう。これでは逆効果です。
一方で、組織づくりの本質をわかっている会社は違います。知識ではなく「肌感覚」として、ここで働く意味や理由を社員自身に感じさせる場を作っています。雑談や振り返りの時間かもしれませんし、小さな成功をみんなで共有する場かもしれません。そういう積み重ねを大事にしている会社は、時間はかかっても必ず強くなります。社員が会社のファンになり、ライスワークとライフワークが重なり始め、生産性や創造性が上がっていくのです。
何度も繰り返しますが、50人以下の会社はどうしても「稼ぐこと」が最優先です。それは間違いではありません。ただ「稼ぐ」ために力を合わせられる仕組みを組織づくりの中に仕掛けておくこと。ここが分かれ道になります。
最後に少し宣伝をさせてください。
先日、「顧客からも社員からも選ばれる理由をどう作るか」をテーマにした小冊子を発行しました。副題は「社員50名以下の会社の勝ち残り戦略」。明日からすぐに実践できるヒントを盛り込みました。組織づくりを後回しにせず、会社を次のステージへ進めたい方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。同じテーマでセミナーも開催します。詳細は下記をご参照ください。
さて、あなたの会社では組織づくり、どの位置づけになっていますか。
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